ヤコブの子供たち② 2013年6月09日(日曜 夕方の礼拝)

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ヤコブの子供たち②

日付
説教
村田寿和 牧師
聖書
創世記 30章14節~24節

聖句のアイコン聖書の言葉

30:14 小麦の刈り入れのころ、ルベンは野原で恋なすびを見つけ、母レアのところへ持って来た。ラケルがレアに、「あなたの子供が取って来た恋なすびをわたしに分けてください」と言うと、
30:15 レアは言った。「あなたは、わたしの夫を取っただけでは気が済まず、わたしの息子の恋なすびまで取ろうとするのですか。」「それでは、あなたの子供の恋なすびの代わりに、今夜あの人があなたと床を共にするようにしましょう」とラケルは答えた。
30:16 夕方になり、ヤコブが野原から帰って来ると、レアは出迎えて言った。「あなたはわたしのところに来なければなりません。わたしは、息子の恋なすびであなたを雇ったのですから。」その夜、ヤコブはレアと寝た。
30:17 神がレアの願いを聞き入れられたので、レアは身ごもってヤコブとの間に五人目の男の子を産んだ。
30:18 そのときレアは、「わたしが召し使いを夫に与えたので、神はその報酬(サカル)をくださった」と言って、その子をイサカルと名付けた。
30:19 レアはまた身ごもって、ヤコブとの間に六人目の男の子を産んだ。
30:20 そのときレアは、「神がすばらしい贈り物をわたしにくださった。今度こそ、夫はわたしを尊敬してくれる(ザバル)でしょう。夫のために六人も男の子を産んだのだから」と言って、その子をゼブルンと名付けた。
30:21 その後、レアは女の子を産み、その子をディナと名付けた。
30:22 しかし、神はラケルも御心に留め、彼女の願いを聞き入れその胎を開かれたので、
30:23 ラケルは身ごもって男の子を産んだ。そのときラケルは、「神がわたしの恥をすすいでくださった」と言った。
30:24 彼女は、「主がわたしにもう一人男の子を加えてくださいますように(ヨセフ)」と願っていたので、その子をヨセフと名付けた。創世記 30章14節~24節

原稿のアイコンメッセージ

 私たちが用いております新共同訳聖書は、29章31節から30章24節までを一つの段落として、「ヤコブの子供」と小見出しをつけております。前回は、30章13節まで学びましたので、今夕は14節以下を御一緒に見て行きたいと思います。

 14節から16節までをお読みします。

 小麦の刈り入れのころ、ルベンは野原で恋なすびを見つけ、母レアのところへ持って来た。ラケルがレアに、「あなたの子供が取って来た恋なすびをわたしに分けてください」と言うと、レアは言った。「あなたは、わたしの夫を取っただけでは気が済まず、わたしの息子の恋なすびまで取ろうとするのですか。」「それでは、あなたの子供の恋なすびの代わりに、今夜あの人があなたと床を共にするようにしましょう」とラケルは答えた。夕方になり、ヤコブが野原から帰って来ると、レアは出迎えて言った。「あなたはわたしのところに来なくてはなりません。わたしは、息子の恋なすびであなたを雇ったのですから。」その夜、ヤコブはレアと寝た。

 小麦の刈り入れのころ、教会でペンテコステが祝われるころに、6歳になっていたであろうルベンが野原で恋なすびを見つけ、母レアのところへ持って来ました。「恋なすび」には媚薬効果、性欲を催させる効果があると信じられておりました。それで、ラケルはレアに、「あなたの子供が取って来た恋なすびをわたしに分けてください」と願い出るのです。新共同訳聖書は、「分けてください」と訳しておりますが、元の言葉は「ください」と記されています(口語訳、新改訳参照)。このとき、まだラケルの胎は閉じたままでありました。ラケルは自分の女奴隷のビルハをヤコブに側女として与え、彼女によって、二人の子供を持っておりましたが、ラケル自身は子供を産んだことはなかったのです。ですから、ラケルは姉のレアに、「あなたが取って来た恋なすびをわたしにください」と願い出たわけです。しかし、レアはこう言うのです。「あなたは、わたしの夫を取っただけでは気が済まず、わたしの息子の恋なすびまで取ろうとするのですか」。レアは、ラケルが子を宿すことができずに苦しんでいることを知っていはずですから、恋なすびを与えてもよさそうなものでありますが、二人の関係はそのようなものではありませんでした。8節に、「そのときラケルは、『姉と死に物狂いの争いをして(ニフタル)、ついに勝った』と言って、その名をナフタリと名付けた」と記されていたように、ヤコブの妻である姉レアと妹ラケルはヤコブのために子供を産むことによって夫の寵愛を得る死に物狂いの争いをしていたのです。レアの「あなたは、わたしの夫を取っただけでは気が済まず、わたしの息子の恋なすびまで取ろうとするのですか」という言葉、またそれに対するラケルの「それでは、あなたの子供の恋なすびの代わりに、今夜あの人があなたと床を共にするようにしましょう」という答えから、どうも、このとき、ヤコブはラケルのことを気遣ってか、レアのところに入ることを控えていたようであります。それで、レアは「あなたは、わたしの夫を取っただけでは気が済まず」と言い、ラケルは、「今夜あの人があなたと床を共にするようにしましょう」と言うのです。新約聖書のコリントの信徒への手紙一7章3、4節で、「夫は妻に、その務めを果たし、同様に妻も夫にその務めを果たしなさい。妻は自分の体を意のままにする権利を持たず、夫がそれを持っています。同じように、夫も自分の体を意のままにする権利を持たず、妻がそれを持っているのです」と記されていますが、今夕の御言葉はその実例であると言えるのです。夕方になり、ヤコブが野原から帰って来ると、レアは出迎えてこう言いました。「あなたはわたしのところに来なければなりません。わたしは、息子の恋なすびであなたを雇ったのですから」。このレアの言葉はどこか違和感を覚えますが、その夜、ヤコブはレアと寝たのでありました。

 17節から21節までをお読みします。

 神がレアの願いを聞き入れられたので、レアは身ごもってヤコブとの間に五人目の男の子を産んだ。そのときレアは、「わたしが召し使いを夫に与えたので、神はその報酬(サカル)をくださった」と言って、その子をイサカルと名付けた。レアはまた身ごもって、ヤコブとの間に六人目の男の子を産んだ。そのときレアは、「神がすばらしい贈り物をわたしにくださった。今度こそ、夫はわたしを尊敬してくれる(ザバル)でしょう。夫のために六人も男の子を産んだのだから」と言って、その子をゼブルンと名付けた。その後、レアは女の子を産み、その子をディナと名付けた。

 神様がレアの願いを聞き入れられ、レアは身ごもってヤコブとの間に五人目の男の子を産みました。レアはその子を、「召し使いを夫に側女として与えたことへの神様からの報酬(サカル)」と理解し、イサカルと名付けました。またレアは身ごもってヤコブとの間に六人目の男の子を産みます。レアは、「神がすばらしい贈り物をわたしにくださった。今度こそ、夫はわたしを尊敬してくれる(ザバル)でしょう。夫のために六人の男の子を産んだのだから」と言って、その子をゼブルンと名付けるのですが、このレアの言葉には、夫ヤコブから妻としてラケルよりも重んじられたいという強い思いが込められています。その後、レアは、女の子を産み、ディナと名付けますが、その意味するところは、ダンと同じで「正しい裁き」を意味します。このディナについては34章に記されておりますので、前もってこのところに記されているのだと思います。レアは、夫ヤコブのために、ルベン、シメオン、レビ、ユダ、イサカル、ゼブルンの六人の男の子とディナという一人の女の子の合計七人の子供を産みました。レアは、ヤコブがラケルのためにラバンのもとで働いた7年の間、一年に一人のペースで子供を産み続けたことにあります。子供を産むことは女性にとって命がけのことですから、これは本当に大変なことで、尊敬に値することだと思います。

 22節から24節までをお読みします。

 しかし、神はラケルも御心に留め、彼女の願いを聞き入れその胎を開かれたので、ラケルは身ごもって男の子を産んだ。そのときラケルは、「神がわたしの恥をすすいでくださった」と言った。彼女は、「主がわたしにもう一人男の子を加えてくださいますように(ヨセフ)」と願っていたので、その子をヨセフと名付けた。

 ラケルは恋なすびによって、子供を得ようとしましたけれども、彼女が身ごもったのは、神様が御心に留めてくださり、その願いを聞き入れてくださったからでありました。ラケルは、30章1節で、ヤコブに向って、「わたしにもぜひ子供を与えてください。与えてくださらなければ、わたしは死にます」と言いましたけれども、彼女も神様に子供が与えられるよう祈り続けていたのでありました。そして、とうとう神様はそのラケルの願いを聞き入れて胎を開いてくださったのです。ラケルの「神がわたしの恥をすすいでくださった」という言葉から、私たちはどれほどラケルが子供を与えられないことで苦しんでいたかを察することができます。彼女は、「主がわたしにもう一人男の子を加えてくださるように」との願いを込めて、その子を「ヨセフ」と名付けたのでありました。

 このように、ヤコブはレアによってルベン、シメオン、レビ、ユダ、イサカル、ゼブルンを、ラケルの女奴隷であるビルハによってダンとナフタリを、レアの女奴隷であるジルパによってガドとアシェルを、ラケルによってヨセフをもうけたのでありました。かつて神様はヤコブの夢に現れてくださり、「あなたの子孫は大地の砂粒のように多くなる」と言われましたが、主はヤコブに11人の息子と1人の娘を与えてくださったのです。そして、このヤコブの子供たちは、後にイスラエルの十二部族の族長たちとなり、一つの民族となっていくのであります。

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