ボアズの厚意 2020年7月29日(水曜 聖書と祈りの会)

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ボアズの厚意

日付
説教
村田寿和 牧師
聖書
ルツ記 2章1節~17節

聖句のアイコン聖書の言葉

2:1 ナオミの夫エリメレクの一族には一人の有力な親戚がいて、その名をボアズといった。
2:2 モアブの女ルツがナオミに、「畑に行ってみます。だれか厚意を示してくださる方の後ろで、落ち穂を拾わせてもらいます」と言うと、ナオミは、「わたしの娘よ、行っておいで」と言った。
2:3 ルツは出かけて行き、刈り入れをする農夫たちの後について畑で落ち穂を拾ったが、そこはたまたまエリメレクの一族のボアズが所有する畑地であった。
2:4 ボアズがベツレヘムからやって来て、農夫たちに、「主があなたたちと共におられますように」と言うと、彼らも、「主があなたを祝福してくださいますように」と言った。
2:5 ボアズが農夫を監督している召し使いの一人に、そこの若い女は誰の娘かと聞いた。
2:6 召し使いは答えた。「あの人は、モアブの野からナオミと一緒に戻ったモアブの娘です。
2:7 『刈り入れをする人たちの後について麦束の間で落ち穂を拾い集めさせてください』と願い出て、朝から今までずっと立ち通しで働いておりましたが、今、小屋で一息入れているところです。」
2:8 ボアズはルツに言った。「わたしの娘よ、よく聞きなさい。よその畑に落ち穂を拾いに行くことはない。ここから離れることなく、わたしのところの女たちと一緒にここにいなさい。
2:9 刈り入れをする畑を確かめておいて、女たちについて行きなさい。若い者には邪魔をしないように命じておこう。喉が渇いたら、水がめの所へ行って、若い者がくんでおいた水を飲みなさい。」
2:10 ルツは、顔を地につけ、ひれ伏して言った。「よそ者のわたしにこれほど目をかけてくださるとは。厚意を示してくださるのは、なぜですか。」
2:11 ボアズは答えた。「主人が亡くなった後も、しゅうとめに尽くしたこと、両親と生まれ故郷を捨てて、全く見も知らぬ国に来たことなど、何もかも伝え聞いていました。
2:12 どうか、主があなたの行いに豊かに報いてくださるように。イスラエルの神、主がその御翼のもとに逃れて来たあなたに十分に報いてくださるように。」
2:13 ルツは言った。「わたしの主よ。どうぞこれからも厚意を示してくださいますように。あなたのはしための一人にも及ばぬこのわたしですのに、心に触れる言葉をかけていただいて、本当に慰められました。」
2:14 食事のとき、ボアズはルツに声をかけた。「こちらに来て、パンを少し食べなさい、一切れずつ酢に浸して。」ルツが刈り入れをする農夫たちのそばに腰を下ろすと、ボアズは炒り麦をつかんで与えた。ルツは食べ、飽き足りて残すほどであった。
2:15 ルツが腰を上げ、再び落ち穂を拾い始めようとすると、ボアズは若者に命じた。「麦束の間でもあの娘には拾わせるがよい。止めてはならぬ。
2:16 それだけでなく、刈り取った束から穂を抜いて落としておくのだ。あの娘がそれを拾うのをとがめてはならぬ。」
2:17 ルツはこうして日が暮れるまで畑で落ち穂を拾い集めた。集めた穂を打って取れた大麦は一エファほどにもなった。ルツ記 2章1節~17節

原稿のアイコンメッセージ

 今日は、『ルツ記』の第2章1節から17節より、「ボアズの厚意」という題でお話しします。

 今日の御言葉には、ルツが畑に行って、落ち穂拾いをしたことが記されています。落ち穂拾いについては、『レビ記』の第19章9節と10節に、次のように記されています。旧約の192ページです。

 穀物を収穫するときは、畑の隅まで刈り尽くしてはならない。収穫後の落ち穂を拾い集めてはならない。ぶどうも、摘み尽くしてはならない。ぶどう畑の落ちた実を拾い集めてはならない。これらは貧しい者や寄留者のために残しておかねばならない。わたしはあなたたちの神、主である。

 このように落ち穂拾いは、主なる神さまによって定められた、貧しい人たちへの救済措置でありました。貧しい人たちも、落ち穂を拾うことによって、収穫の恵みにあずかることができたのです。

 今日の御言葉に戻ります。旧約の422ページです。

 ルツは、「畑に行ってみます。だれか厚意を示してくださる方のうしろで、落ち穂を拾わせてもらいます」と言って出かけます。そこはたまたまボアズが所有する畑でした。『新共同訳』は「たまたま」と翻訳していますが、『新改訳』は、「はからずも」と翻訳しています。ボアズについては、1節にこう記されていました。「ナオミの夫エリメレクの一族には一人の有力な親戚がいて、その名をボアズといった」。ルツは、たまたま、はからずも、エリメレク一族のボアズの畑で落ち穂拾いを始めたのです。私たちは、ここに、神の摂理の御手を見ることができます。神さまは、偶然をも用いて、ルツをエリメレク一族のボアズの畑へと導かれたのです。

 また、私たちは、ボアズがベツレヘムからやって来て、ルツに目を留めたことにも、神さまの摂理の御手を見ることができます。ボアズは、自分の畑で落ち穂拾いをしている見知らぬ若い女が誰の娘かと尋ねます。すると、農夫を監督している召し使いはこう答えました。「あの人は、モアブの野からナオミと一緒に戻ったモアブの娘です。『刈り入れをする人たちの後について麦束の間で落ち穂を拾い集めさせてください』と願い出て、朝から今までずっと立ち通しで働いておりましたが、今、小屋で一息入れているところです」。7節後半を、『新改訳』は、次のように翻訳しています。「ここに来て、朝から今まで家で休みもせず、ずっと立ち働いています」。『新共同訳』の翻訳ですと、ボアズが見たとき、ルツは、小屋で一息入れていたと読むことができます。けれども、『新改訳』の翻訳ですと、ボアズが見たとき、ルツは落ち穂を拾い集めていました。私は『新改訳』の翻訳の方がよいのではないかと思います。神さまのご配慮はそこまで行き届いていると思うからです。

 ボアズはルツにこう言いました。「わたしの娘よ、よく聞きなさい。よその畑に落ち穂拾いに行くことはない。ここから離れることなく、わたしのところの女たちと一緒にここにいなさい。刈り入れをする畑を確かめておいて、女たちについて行きなさい。若い者には邪魔をしないように命じておこう。喉が渇いたら、水がめの所へ行って、若い者がくんでおいた水を飲みなさい」。ルツはナオミに、「だれか厚意を示してくださる方の後ろで、落ち穂を拾わせてもらいます」と言いましたが、ボアズはルツに厚意(思いやりのある心)を示しました。ルツは、顔を地につけ、ひれ伏してこう言いました。「よそ者のわたしにこれほど目をかけてくださるとは。厚意を示してくださるのは、なぜですか」。2節に、「モアブの女ルツ」と記されていたように、ルツはよそ者でありました。そのよそ者である自分に、どうして厚意を示してくださるのかとルツは問うのです。ボアズはこう答えます。「主人が亡くなった後も、しゅうとめに尽くしたこと、両親と生まれ故郷を捨てて、全く見も知らぬ国に来たことなど、何もかも伝え聞いていました。どうか、主があなたの行いに豊かに報いてくださるように。イスラエルの神、主がその御翼のもとに逃れて来たあなたに十分に報いてくださるように」。ボアズは、ルツを見たのは初めてでしたが、ルツについては、なにもかも伝え聞いていました。ボアズはルツの行いを立派な行いとして高く評価しています。ルツは、主を畏れ敬う者として、夫が亡くなった後も、しゅうとめのナオミに尽くしました。また、ルツは、かつてのアブラハムのように、両親と生まれ故郷を捨てて、全く見知らぬ国に来たのです(創世12章参照)。そのようなルツに対して、ボアズは、「主があなたの行いに豊かに報いてくださるように。イスラエルの神、主がその御翼のもとに逃れて来たあなたに十分に報いてくださるように」と祈ります。そして、その祈りを神さまは、他ならぬボアズを通して実現してくださるのです。主は、ボアズの厚意を通して、御翼のもとに逃れて来たルツを保護してくださるのです。

 ルツはボアズにこう言いました。「わたしの主よ。どうぞこれからも厚意を示してくださいますように。あなたのはしための一人にも及ばぬこのわたしですのに、心に触れる言葉をかけていたただいて、本当に慰められました」。ルツは、ボアズに、「わたしの主よ」と呼びかけています。ここでの「主」は「アドナイ」というヘブライ語で、「主人」という意味です。ルツは、ボアズを「わたしの主人」と呼びながら、自分のことを「あなたのはしための一人にも及ばぬこのわたし」と言っています。ルツは、本当に謙遜な人であるのです。ここでルツが何よりも喜んだのは、ボアズのやさしさに出会ったことでした。ルツは、見知らぬ土地で、緊張して落ち穂拾いをしていたと思います。けれども、ボアズから心に触れる言葉をかけられて、ルツは慰められ、励まされ、力づけられたのです。

 食事のとき、ボアズはルツに声をかけました。ボアズは、ルツが御弁当を持って来ていないことを見越して、また、交わりの輪に入れるようにと、声をかけ、パンと炒り麦を与えたのです。

 ルツが再び落ち穂拾いを始めようとすると、ボアズは若者にこう命じました。「麦束の間でもあの娘には拾わせるがよい。止めてはならぬ。それだけでなく、刈り取った束から穂を抜いて落としておくのだ。あの娘がそれを拾うのをとがめてはならぬ」。ボアズは、ルツが沢山の落ち穂を拾えるように、わざと落としておくように命じるのです。ルツはそのことを知らずに、日暮れまで落ち穂を拾い続けました。集めた穂を打って取れた大麦は一エファ(23リットル)ほどにもなりました。ルツはそれを背負って、ナオミの待つ家へと帰りました。ルツは、神の恵みを、ずっしりと背中に感じながら、ナオミの待つ家へと帰って行ったのです。

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