栄光はイスラエルを去った 2020年11月25日(水曜 聖書と祈りの会)
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栄光はイスラエルを去った
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- 村田寿和 牧師
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サムエル記上 4章12節~22節
聖書の言葉
4:12 ベニヤミン族の男が一人、戦場を出て走り、その日のうちにシロに着いた。彼の衣は裂け、頭には塵をかぶっていた。
4:13 到着したとき、エリは道の傍らに設けた席に座り、神の箱を気遣って目を凝らしていた。その男が町に知らせをもたらすと、町全体から叫び声があがった。
4:14 エリは叫び声を耳にして、尋ねた。「この騒々しい声は何だ。」男は急いでエリに近寄り報告した。
4:15 エリは九十八歳で目は動かず、何も見ることができなかった。
4:16 男はエリに言った。「わたしは戦場から戻って来た者です。今日戦場から落ちのびて来ました。」エリは尋ねた。「わが子よ、状況はどうなのか。」
4:17 知らせをもたらした者は答えた。「イスラエル軍はペリシテ軍の前から逃げ去り、兵士の多くが戦死しました。あなたの二人の息子ホフニとピネハスも死に、神の箱は奪われました。」
4:18 その男の報告が神の箱のことに及ぶと、エリは城門のそばの彼の席からあおむけに落ち、首を折って死んだ。年老い、太っていたからである。彼は四十年間、イスラエルのために裁きを行った。
4:19 エリの嫁に当たる、ピネハスの妻は出産間近の身であったが、神の箱が奪われ、しゅうとも夫も死んだとの知らせを聞くと、陣痛に襲われてかがみ込み、子を産んだ。
4:20 死の迫っている彼女に、付き添っていた女たちが語りかけた。「恐れることはありません。男の子が生まれました。」しかし彼女は答えず、心を留めなかった。
4:21 神の箱が奪われ、しゅうとも夫も死に、栄光はイスラエルを去ったと考えて、彼女は子供をイカボド(栄光は失われた)と名付けた。
4:22 彼女は言った。「栄光はイスラエルを去った。神の箱が奪われた。」
サムエル記上 4章12節~22節
メッセージ
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今朝は、『サムエル記上』の第4章12節から22節より、「栄光はイスラエルを去った」という題でお話しします。
ベニヤミン族の男が一人、戦場を出て走り、その日のうちにシロに着きました。彼の衣は裂け、頭には塵をかぶっていました。彼は、イスラエル軍とペリシテ軍との戦いの結果を伝えに来たのでありますが、その身なりからして不吉でありました。なぜなら、衣を裂くことも、頭に塵をかぶることも、悲しみと嘆きの表現であったからです。到着したとき、エリは道の傍らにもうけた席に座り、神の箱を気遣って目を凝らしていました。エリは、神の箱がどうなったかが気になって、見えない目を凝らしていたのです。その男が町に知らせをもたらすと、町全体から叫び声があがりました。エリは叫び声を耳にして、こう尋ねます。「この騒々しい声は何だ」。エリは98歳で、目は動かず、何も見ることはできなかったのです。男はエリにこう言いました。「わたしは戦場から戻って来た者です。今日戦場から落ちのびて来ました」。エリが、「わが子よ、状況はどうなのか」と尋ねると、知らせをもたらした者はこう答えました。「イスラエル軍はペリシテ軍の前から逃げ去り、兵士の多くが戦死しました。あなたの二人の息子ホフニとピネハスも死に、神の箱は奪われました」。その男の報告が神の箱のことに及ぶと、エリは城門(門)のそばの彼の席からあおむけに落ち、首を折って死にました。このことは、エリが二人の息子の死よりも、神の箱が奪われたことに衝撃を受けたことを示しています。エリは、二人の息子の死を聞いたときではなく、神の箱が奪われたことを聞いて、仰向きに倒れ、首を折って死んだのです。このようにして、神の人の言葉、「あなたの家に長命の者がいなくなるように、わたしがあなたの腕とあなたの先祖の家の腕を切り落とす日が来る」という言葉が実現したのです(サムエル上2:31)。エリは、彼の家の最後の長命の者として死んだのです。
エリの義理の娘、ピネハスの妻は出産間近の身でありましたが、神の箱が奪われ、しゅうとも夫も死んだとの知らせを聞くと、陣痛に襲われてかがみ込み、子を産みました。死が迫っている彼女に、付き添っていた女たちは、こう語りかけました。「恐れることはありません。男の子が生まれました」。これは、当時の女性が聞くことができた最も良い知らせであります。しかし、彼女は答えず、心に留めませんでした。神の箱が奪われ、しゅうとも夫も死に、栄光はイスラエルを去ったと考えたからです。それで、彼女は、子どもをイカボト(栄光は失われた)と名付けたのです。神の箱が奪われたこと、それは栄光がイスラエルを去ったことを意味しておりました。ある研究者は、このことは、バビロン軍によって、エルサレムが包囲され、神殿が滅ぼされたことに匹敵する出来事であると述べています。そして、これこそ、少年サムエルに告げられた、聞く者の両耳が鳴る出来事であったのです(サムエル上3:11参照)。
ここには記されておりませんが、この後、シロの町と神殿は、ペリシテ軍によって滅ぼされたようです。『エレミヤ書』の第7章に、エレミヤが語った、神殿での預言が記されています。その12節から15節にこう記されています。旧約の1189ページです。
シロのわたしの聖所に行ってみよ。かつてわたしはそこにわたしの名を置いたが、わが民イスラエルの悪のゆえに、わたしがそれをどのようにしたかを見るがよい。今や、お前たちがこれらのことをしたから ーと主は言われるー そしてわたしが先に繰り返し語ったのに、その言葉に従わず、呼びかけたのに答えなかったから、わたしの名によって呼ばれ、お前たちが依り頼んでいるこの神殿に、そしてお前たちと先祖に与えたこの所に対して、わたしはシロにしたようにする。わたしはお前たちの兄弟である、エフライムの子孫をすべて投げ捨てたように、お前たちをわたしの前から投げ捨てる。
私たちは、このエレミヤの言葉から、シロの聖所は滅んでいたこと、そして、それは主の裁きによるものであったことが分かるのです。
また、『詩編』の第78編の56節から64節には、こう記されています。旧約の916ページです。
彼らはいと高き神を試み/反抗し、その定めを守らず/先祖と同じように背き、裏切り/欺く弓で射た矢のようにそれて行き/異教の祭壇に仕えて神を怒らせ/偶像を拝んで神の激情を引き起こした。神は聞いて憤り/イスラエルを全く拒み/シロの聖所、人によって張られた幕屋を捨て/御力の箱がとりこになるにまかせ/栄光の輝きを敵の手に渡された。神は御自分の嗣業に怒りを注がれた。火は若者をなめ尽くし/おとめは喜びを奪われ/祭司は剣に倒れ/やもめは嘆くことすらしなった。
この詩編の記述によると、ペリシテ人の手によって契約の箱が奪われ、シロの町と聖所が滅ぼされたのは、エリの家の罪のためばかりでなく、イスラエルの民の罪のためでもありました。神の箱が奪われたことは、神の箱を奪ったペリシテ人によって、シロの町と聖所が滅ぼされることを意味していたのです。ですから、ピネハスの妻は、男の子が生まれても心に留めなかったのです。ペリシテ人によって殺されるのですから、男の子が生まれたところで、何になるかと思ったのです。けれども、主は、イカボドの兄弟アヒトブを生かしてくださいました。神の人がエリに告げたとおり、主はエリの家の一人だけは、祭壇から断ち切らないでおかれたのです。『サムエル記上』の第14章3節にこう記されています。旧約の447ページです。
そこには、エフォドを持つアヒヤもいた。アヒヤは、イカボドの兄弟アヒトブの子であり、イカボドはシロで主の祭司を務めたエリの息子のピネハスの子である。
このように、主は、イカボドの兄弟アヒトブを生かし、祭壇から断ち切らないという約束を守られるのです。主は、エリの二人の息子が同じ日に死ぬ、エリの家に長命の者がいなくなるという預言だけではなく、エリの家の一人を祭壇から断ち切らないようにするという預言をも成就してくださったのです。