ルツの真心 2020年8月19日(水曜 聖書と祈りの会)
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ルツの真心
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- 村田寿和 牧師
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ルツ記 3章1節~10節
聖書の言葉
3:1 しゅうとめのナオミが言った。「わたしの娘よ、わたしはあなたが幸せになる落ち着き先を探してきました。
3:2 あなたが一緒に働いてきた女たちの雇い主ボアズはわたしたちの親戚です。あの人は今晩、麦打ち場で大麦をふるい分けるそうです。
3:3 体を洗って香油を塗り、肩掛けを羽織って麦打ち場に下って行きなさい。ただあの人が食事を済ませ、飲み終わるまでは気づかれないようにしなさい。
3:4 あの人が休むとき、その場所を見届けておいて、後でそばへ行き、あの人の衣の裾で身を覆って横になりなさい。その後すべきことは、あの人が教えてくれるでしょう。」
3:5 ルツは、「言われるとおりにいたします」と言い、
3:6 麦打ち場に下って行き、しゅうとめに命じられたとおりにした。
3:7 ボアズは食事をし、飲み終わると心地よくなって、山と積まれた麦束の端に身を横たえた。ルツは忍び寄り、彼の衣の裾で身を覆って横になった。
3:8 夜半になってボアズは寒気がし、手探りで覆いを捜した。見ると、一人の女が足もとに寝ていた。
3:9 「お前は誰だ」とボアズが言うと、ルツは答えた。「わたしは、あなたのはしためルツです。どうぞあなたの衣の裾を広げて、このはしためを覆ってください。あなたは家を絶やさぬ責任のある方です。」
3:10 ボアズは言った。「わたしの娘よ。どうかあなたに主の祝福があるように。あなたは、若者なら、富のあるなしにかかわらず追いかけるというようなことをしなかった。今あなたが示した真心は、今までの真心よりまさっています。ルツ記 3章1節~10節
メッセージ
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今日は、『ルツ記』の第3章1節から10節より、「ルツの真心」という題でお話しします。
しゅうとめのナオミは、ルツにこう言いました。「わたしの娘よ、わたしはあなたが幸せになる落ち着き先を探してきました」。ナオミは、第1章9節で、「どうか主がそれぞれに新しい嫁ぎ先を与え、あなたたちが安らぎを得られますように」と言いました。その安らぎを得られる新しい嫁ぎ先を、ナオミは探して来たと言うのです。それは、ルツが一緒に働いてきた女たちの雇い主であるボアズでした。ナオミは「ボアズはわたしたちの親戚です」と言っていますが、ボアズについては、第2章1節にこう記されていました。「ナオミの夫エリメレクの一族には一人の有力な親戚がいて、その名をボアズといった」。また、第2章20節で、ナオミはボアズについてこう言っていました。「その人はわたしたちと縁続きの人です。わたしたちの家を絶やさないようにする責任のある人の一人です」。ナオミは、「わたしはあなたが幸せになる落ち着き先を探してきました」と言っていますが、ルツは前からボアズを知っていました。では、これはどういう意味でしょうか?おそらく、ナオミはボアズにルツを嫁として迎えることを打診してきたという意味であると思います。そして、ナオミはボアズから良い返事をもらって来たのでしょう。そのことを踏まえて、ナオミはルツにある計画をもちかけるのです。「あの人は今晩、麦打ち場で大麦をふるい分けるそうです。体を洗って香油を塗り、肩掛けを羽織って麦打ち場に降って行きなさい。ただあの人が休むとき、その場所を見届けておいて、後でそばへ行き、あの人の衣の裾で覆って横になりなさい。その後すべきことは、あの人が教えてくれるでしょう」。当時は、夕べの風を用いて、大麦をふるい分け、その作業が終わると、その場で眠ってしまいました。ですから、この日は、ルツがボアズに結婚を申し込むのに、最適な日であったのです。ナオミは、ルツに、「体を洗って香油を塗り、肩掛けを羽織って麦打ち場へ行きなさい。・・・あの人の衣の裾で身を覆って横になりなさい」と言いました。ナオミは、ルツに、ボアズに結婚を申し込むようにと言うのです。エゼキエル書の第16章に、主がエルサレムを妻にしたことが記されています。その8節にこう記されています。「その後、わたしがお前の傍らを通ってお前を見たときには、お前は愛される年ごろになっていた。そこでわたしは、衣の裾を広げてお前に掛け、裸を覆った。わたしはお前に誓いを立てて、契約を結び、お前はわたしのものになった、と主なる神は言われる」。衣の裾を広げて、女を覆うこと。それはその女を妻とするということを意味したのです。ナオミは、ルツに、「その後すべきことは、あの人が教えてくれるでしょう」と言っていますが、これは、すでにナオミがボアズに、ルツとの結婚について話していたことを暗示しています。ボアズにとって、ルツを妻にすることは、願ってもないことであったと思います。むしろ、問題は、ルツがそのことを願うかということです。なぜなら、ボアズはルツよりもかなり年上であったと思われるからです。しかし、ルツは、「言われたとおりにいたします」と言い、麦打ち場へくだって行き、しゅうとめに命じられたとおりにしました。ボアズは食事をし、飲み終わると心地よくなって、麦束の山の端に身を横たえました。ルツは忍び寄り、彼の衣の裾で身を覆って横になったのです。当時は、浴衣のような服装ですから、その裾をめくると足が丸出しになります。そのこともあってでしょう。夜半になってボアズは寒気がして目を覚ましました。見ると、一人の女が足もとに寝ていたのです。「お前はだれだ」とボアズが言うと、ルツはこう答えました。「わたしは、あなたのはしためルツです。どうぞあなたの衣の裾を広げて、このはしためを覆ってください。あなたは家を絶やさぬ責任のある方です」。ルツは、ボアズの衣の裾で身を覆って横になり、結婚を申し込みました。しかし、その結婚の申し込みを受けるかどうかはボアズが決めることであるのです。ルツは、「どうぞあなたの衣の裾を広げて、このはしためを覆ってください」と言っていますが、ここで「裾」と訳されている言葉は、「翼」とも訳せる言葉(カナフ)であります。第2章12節で、ボアズはルツにこう言っていました。「イスラエルの神、主がその御翼のもとに逃れて来たあなたに十分に報いてくださるように」。この祈りを、衣の裾を広げて覆うことによって実現して欲しいとルツは願うのです。なぜなら、ボアズは、ナオミとルツの家を絶やぬ責任のある人、贖い主(ゴーエール)であるからです。
ボアズはルツにこう言いました。「わたしの娘よ、どうかあなたに主の祝福があるように。あなたは、若者なら、富のあるなしにかかわらず追いかけるというようなことをしなかった。今あなたが示した真心は、今までの真心よりまさっています」。ボアズはルツの言葉に深い感銘を受けたようです。ルツは、再婚の相手として、若者を選びませんでした。そうではなく、ルツは、神さまの掟である律法に従って、ナオミとルツの家を絶やさない責任のあるボアズに身をささげたのです。「今あなたが示した真心は、今までの真心よりまさっています」。ここで「真心」と訳されている言葉は、「ヘセド」という言葉で、「忠実な愛」を表します。ボアズが「今あなたが示した真心は、今までの真心よりまさっています」というとき、その真心(ヘセド)は、しゅうとめのナオミに対するものです。「今までの真心」とは、主人が亡くなった後も、姑に尽くしたこと。故郷を捨てて、見知らぬ土地に来て、落ち穂拾いをして、生活を支えたことでしょう。また、「今あなたが示した真心」とは、ナオミとルツの家を絶やさないために、その身をボアズに差し出したことでしょう。ボアズは、ナオミとルツの家を絶やさないために、年老いた自分に結婚を申し込んだルツの大胆な態度を、今までよりもまさった真心(ヘセド)と呼んでいるのです。そして、それはほめたたえるべき立派な行いであるのです。現代では、結婚は個人の事柄として捉えられますが、昔はそうではありませんでした(『日本国憲法』第24条「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」参照)。結婚は共同体の事柄として捉えられていたのです。そのような時代にあって、ルツの大胆な振る舞いは、家という共同体への忠実な愛(ヘセド)であったのです。