絶望と希望
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- 千禎鎬 牧師
- 聖書 ヨシュア記 13章1節~7節
日本聖書協会『聖書 新共同訳』
ヨシュア記 13章1節~7節
私たちに行くところがあり、やるべきことがあるということはとても大切です。しかし、私たち人間には、時間という限界、限りがあります。詩編90編10節に[人生の年月は七十年程の者です。健(すこ)やかな人が八十を数えても得るところは労苦と災いにすぎません。瞬(またた)く間(ま)に時は過ぎ、私たちは飛び去ります] 人生というのは、命が限られています。人生を論じる人たちの話を聞くならば、苦労と悲しみだと言う人が多いです。また、時間が瞬く間に過ぎるのが人生だと言います。矢のように飛び去るのが人生だと言います。ここにいる多くの方も同じように感じると思います。
ヨシュア記13章からは、ヨシュア記の第二部が始まると言えます。13章から21章までは、カナンの地の分配についての内容が出ます。そして、22章から24章は、ヨシュアの最後の説教、すなわち、告別の説教が出ます。13章は、カナンの地の征服後、その土地を分配する内容の中で最初の部分です。その中でも1-7節までは、残りの土地について記されています。また、8節からは、ヨルダン川の東側の土地を分配したことについて記されています。
1節を見てください。[ヨシュアが多くの日を重(かさ)ねて老人となった時、主は彼にこう言われた。“あなたは年を重ねて、老人となったが、占領すべき土地はまだたくさん残っている”]と書いてあります。とても残念で寂しい話です。すなわち、神様がカナンの地、全部をイスラエルの民に与えようと約束されましたが、寿命(じゅみょう)という人間の限界にぶつかり、もうカナンの地を征服できないヨシュアの残念の心が見られます。
この時、ヨシュアの年はいくつでしたでしょうか。はっきりは、分かりませんが87歳以上にはなったでしょう。エジプトから出た時、ヨシュアの年は40歳ほど、また荒れ野で40年を過ごし、カナンの地を征服する戦いを7年間行ったとすれば、少なくても87歳は超えたでしょう。
若い時、忠実にモーセに仕えながらモーセを引き継ぎ、イスラエルの民のリーダーとなり、カナンの地を征服する戦いを行った人がヨシュアです。モーセは、牧者を象徴する杖(つえ)を手に取って働きましたが、ヨシュアは武士(ぶし)を象徴する短槍(たんそう)、槍と剣を持ってイスラエルの民とカナンの地を征服する戦いを行いました。モーセとヨシュアが手に取った杖と短槍(たんそう)、槍と剣は、すべて神様がなさる働きを象徴して見せてくれていると言えます。神様はモーセと共にいてくださったように、また同じようにヨシュアと共にいてくださり、すばらしい働きをするようになさいました。31人の王を滅ぼし尽くし、カナンの地を征服するようになさったのです。その内容を私たちは、先週の箇所ですでに学びました。このように神様と共にカナンの地を征服する戦いを行ったヨシュアはもう老人となりました。気力も落ち、動きも以前と違うでしょう。人生というのは、時間に勝つことはできません。武士であったヨシュアもそうでした。ですので、1節に[ヨシュアが多くの日を重ねて老人となった]と記されています。
一方、今日の御言葉を見ますと、希望を与える御言葉が出ます。6節を見てください。[およびレバノン山からミスレフォト·マイムに至る山地の全住民、すべてのシドン人。私は、イスラエルの人々のために、彼らすべてを追い払う。あなたはただ、私の命じた通り、それをイスラエルの嗣業の土地として分けなさい]
この御言葉は、神様の約束であります。ヨシュアの戦いは終わりましたが、まだ征服の戦いは続くということです。ヨシュアは年を取って戦いはできませんが、神様がその戦いをなさると約束してくださいました。その代わりにヨシュアは、神様が命令された嗣業を分ける任務を任されました。神様が約束されたカナンの地は、神ご自身がイスラエルの民に与えるので、その土地を正しく分けなさいという御言葉です。これこそ、神様の強い御心です。
1節と6節は、強調されています。[あなたは年を重ねた]と[私は、イスラエル人々のために、彼らを追い払う] 良く見ますと、1節と6節はとても強調されています。すなわち、“あなたは年を取って老人となったが、神である私がイスラエルの民のために、すべての敵を必ず追い払う”という神様の強い御心、意志が表されています。イスラエルの民が残っている土地を与えられるための方法は、神様だけを信じ、従うしかありません。自分たちが力を出し、また武装(ぶそう)して戦おうとすることではなく、すべてをなさる神様を堅く信じ、従う時、神様は残りのすべての土地をイスラエルの民が得るようにしてくださいます。自分たちの目の前に見える人間の指導者は、力が弱くなり、気力も落ちてしまい、死を迎えようとしていますが、目には見えませんが、全知全能の神様が御自分の民のために戦ってくださり、すべての土地を占領するようにしてくださるのです。これは、神様ご自身がお選びになった民を愛されるからです。
人間が一番美しい時は、自分の最後の時を知り、また自分の限界を悟り、それを認め、すべてを下す時だと言われます。自分が去る時を知り、すべてを下すことこそ、神様の御前で美しい事でしょう。
モーセは40年間、荒れ野の生活の中でリーダーの使命を果たし、ヨシュアは、モーセを引き継ぎ、カナンの地を占領する使命を果たしました。それにもかかわらず、人間の限界のためすべてを完成できませんでした。また、完全に完成できなかったことは誰がなさるのでしょうか。今日の御言葉は、これらのすべてを果たすように導いてくださったお方は、神様だと教えます。モーセと同じようにヨシュアもすべてを神様に任せなければなりません。モーセとヨシュアは、ただ神様に仕える神様の僕にすぎませんでした。始めも神様がなさり、終わりも神様が結ばれるのです。モーセとヨシュアと同じようにこの世で神様と主の教会に仕えている私たちも神様の大いなる計画の中で一部を任され、行うわけです。しかし、たった一部を任されたとしても最善を尽くして果たさなければなりません。その一部だとしても最善を尽くして果たす時、神様の大いなる計画が成し遂げられていくことになるのです。その後、すべては神様がなさるのです。
全知全能の神様は、今も休むことなく、ご自分の御計画を成し遂げられています。神様がお選びになった人々に神様の霊を注いでくださり、続けて神様の働きをするように導いてくださいます。
それでは、今、私たちがしなければならないことは何でしょうか。
置かれている環境の中で、神様から与えられた使命、また神様の事を忠実に果たすことです。重要なのは、忠実です。心を尽くして果たすことです。何より神様に仕えることに優先順位を置かなければならないということです。神様はご自分の大いなるご計画を教会を通して、またご自分がお選びになった人を通して成し遂げられます。ですので、神様にお選びになった私たちは、教会に仕え、教会で行うすべての神様のお働きに関心を持ち、最善を尽くして果たさなければなりません。礼拝を捧げること、福音を伝えること、神様の愛を伝え、実践すること、施すことなど。教会を通して神様の働きを果たすべきです。
時には、學校の先生を通して、家庭を通して、生徒の皆様が働いている職場を通して神様の御計画を成し遂げられます。ですので、それぞれに与えられた環境の中で神様の御心を悟り、神様の働きを忠実に果たさなければなりません。
聖徒の皆様。
ヨシュアは年を重ねて老人となりましたが、まだ征服しなければならない土地が多く残っていました。しかし、彼には戦う力はありませんでした。悲しく残念でした。しかし、神様はご自分が戦い、すべての敵を追い払うと約束してくださいました。ただ、ヨシュアは土地を分配する新しい働きを任され、神様に希望を与えられました。
自分の時を知り、自分の働きを悟ることは神様の恵みです。私たちはこの神様の恵みを悟らなければなりません。私たちが今、直接できる神様の働きがあるならば、忠実に働き、私たちが助けることと手伝うことがあるならば、心を尽くして神様の働きを果たすべきです。限界があり、力がなく、意欲がない時もあると思います。その時、いつも変わらず、ご自分の御計画をなさっておられる神様に出会いましょう。神様の真実な約束が私たちに力を与え、希望を与えてくださいます。お祈りを致します。
全知全能の神様、今日もあなたの御言葉を与え、聞かせてくださり感謝いたします。あなたは、私たちに約束を与え、必ず、約束を守ってくださいます。限りがある私たち人間は、神様が与えてくださった使命と神様の働きを完全に果たすことができない時が多くあります。憐れんでくだり、神様の力を与え、与えられた使命を、働きを忠実に果たすことができるように私たちを用いてください。さらに、すべてをあなたが成し遂げてください。ここに集まっているお一人お一人が、人間の限界があることを認め、絶望をしたり挫折をしたりせず、あなたが与えてくださった約束に希望を置き、あなたが呼ぶ時まで最善を尽くして与えられた使命とあなたの働きを忠実に果たすことができるように導いてください。
善通寺教会の聖徒の皆様を用いてくださり、あなたの御計画を完全に成し遂げてください。
弱さを覚えている方、悩みによって苦しんでいる方のために祈ります。自分の限界を認め、神様の約束だけを仰ぎ見、絶望ではなく、あなたの希望を悟り、あなたの希望によって力強く生きるように導いてください。求道者の方が、すべてを完全に成し遂げられる神様を信じる祝福を与え、あなたの大いなるご計画を果たすことができる幸いを与えてください。教会から離れている方が、自分の限界を悟り、再び全知全能の神様の元に帰り、あなたの御計画に加えられるように導いてください。礼拝参加が難しくなっている兄弟姉妹を憐れんでくださり、どこにいてもすべてをなさるあなたの御名を賛美し、あなたを崇めることができるように導いてください。一日も早く教会で共に礼拝を捧げることができる日を与えてください。新しい今週も限りがある私たちを認め、すべてを成し遂げてくださるあなたに頼り、与えられた使命、働きを忠実に果たすことができるように恵みを与えてください。すべてのことを主にゆだね主イエスキリストの御名によってお祈りを致します。