2023年07月30日「群衆の驚き」

マタイによる福音書9章1-8節が伝えるのはイエス・キリストによる奇跡と罪の赦しと権威について。この聖句では中風の人に対してイエスが癒しを与えた結果、その人は床を背負い、自分の家に帰ることができたと記されている。この人は癒しのみならず、罪の赦しも受け取った。そしてこの奇跡は、その人が身体的な病を克服した以上のものである。中風の人が床を担いで自宅に帰る姿は、彼の信仰が回復し、健全になったことを強く示している。神に対する信頼の回復。この人は病の治癒を通じて神の救済を体験し、神を信じて生きるものとなった。

キリストは「子よ、元気を出しなさい。あなたの罪は赦される」と言われた。この人にとってまず癒されたいと願っていた。しかし、キリストはまず罪の赦しをお与えになられたのだ。罪が赦され、神を礼拝する。そこから、癒しは始まるといってもよい。この時代は病が罪とセットで考えられていた。特定の病が罪の原因だと考えられていた。だからこそ、キリストは罪の赦しを宣言されたのだ。そして病は時に、疑いを生む。神を信じられなくなる。この中風の人はユダヤ人。もちろん、神を知っている。それでも神に対する信頼が揺らいでいたのかもしれない。時に、病はこのように疑いを私たちに引き起こす。ある人が、この人の病は、この人の体の状態のみならず、心をも麻痺させていたのではないか、とすら言っている。キリストは信仰の回復をもたらした。

そしてその場に居合わせた群衆は、目の前で起きた奇跡に恐怖と驚嘆を覚え、同時に神への尊敬と賛美の念を抱くようになる。この奇跡によって、彼らは神の力と権威が人間、すなわち彼ら自身にも及ぶことを理解したのだ。

「人間」は複数形なので「人々」のこと。「人々」へのこの権威の授与は、いくつかの解釈を可能にする。一つの解釈としては、「人々」はイエス・キリスト自身を指しているというものである。罪を赦す権威はキリストだけが持っており、それはキリストが地上にいるときも、天上にいるときも同様である。天上と地上においてキリストは権威者なので、人々と複数形で記されている。しかしながら、もう一つの解釈として、「人々」がキリストの弟子たち、すなわち信仰を通じて集まった人々を指しているとも読むことができる。これは、教会のこと。教会はこの権威を与えられている。これは驚くべきことである。罪の赦しが教会に、私たちに与えられている。このイエスの御業をほめたたえたい。