2022年12月04日「イエス誕生の告知」

天使ガブリエルはマリアに「おめでとう」「あなたは神様から恵みをいただいた」と告げます。その恵みの内容を要約すると、ひとつは「あなたは身ごもって男の子を産む」ということと、さらに「生まれたその子こそ、約束された救い主メシアである」というものでした。つまりマリアは、イエスすなわち「主は救い」と呼ばれる神の子の母となる、と告げられたのです。

　この天使の言葉は、実際にこんなことを言われてしまっては卒倒しかねないような告知です。マリアの社会的な立場を考えるならば、天使の言葉が実現しては全然「おめでとう」ではありません。というのは、この少女マリアは、婚約しているとはいえ、まだ夫となるヨセフと一緒に暮らしていない状況だからです。まだ夫婦として一緒に暮らしているわけでもないのに、妊娠がわかる。するとどうなるかというと、小さな村のことです。すぐに「マリアが妊娠している」との噂は広まるでしょう。小さな村の中で、マリアは夫ヨセフを裏切って、別の男性と関係をもったと見做されてしまうのです。

　このようにして一方的にご計画を進める神様と、戸惑いつつも最終的にはこれに身を委ねるマリアの姿から、私たちは、神様の主権とそれに対する人間の態度について、大切なことを教えられます。すなわち、神様は、時として私たちの目に到底恵みに思えないような仕方で恵みをお与えになるお方なのです。そして、それは私たちの神様に対する信仰を、真正面から問いかけるものです。

　私たちは、心のどこかで神様に対して「自分の思う通りのことをしてほしい」と考えてしまうものです。自分の都合に合わせて、自分の願いが実現されるようにと考え、神様にはその通りに動いてほしいと思うものです。しかし、神様についてそのように考えているとき、私たちは、いつの間にか自分が神様の上に立って、神様の存在と働きを小さなものに捉えてしまっています。

　けれども本当は、神様は私たちの思い浮かべるよりも遥かに大きな意味と目的をもって、全てのことを導いておられます。全てのことを通して、恵みを与えようとする御心が、そこにあります。私たちは、それを信じて身を委ねてみて、受け止めてみて、そこに神様の恵みがあることを見出すのです。

　神様がマリアに語り、約束した御言葉とは「彼女が生むその子がイエスと名づけられ、神の子、救い主となり、ダビデの王座を受け継ぎ、救いにあずかる民をとこしえに治める者となる」という、これからの歴史において展開される大いなる祝福でした。神様は、天使ガブリエルを通してマリアに、約束の実現に対する確固たる御心をもって臨まれました。「喜びなさい」と言ったからには、必ず喜びを実現させるという、約束に対する真実、そしてそれを実現させる神の力がここに示されているのです。これこそ、マリアが置かれた社会的立場の危機を乗り越えた、神様の豊かな恵みの約束です。ここに身を委ねて受け止めるかどうかが問われているのです。