感謝するということ
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- 説教
- 田村英典 牧師
- 聖書 コロサイの信徒への手紙 3章15節~17節
3:15 キリストの平和が、あなた方の心を支配するようにしなさい。そのために、あなた方も召されて一つの体となったのです。また、<感謝>の心を持つ人になりなさい。
3:16 キリストの言葉が、あなた方の内に豊かに住むようにしなさい。知恵を尽くして互いに教え、忠告し合い、詩と賛美と霊の歌により、<感謝>をもって心から神に向かって歌いなさい。
3:17 言葉であれ行いであれ、何かをする時には、主イエスによって父なる神に<感謝>し、全てを主イエスの名において行いなさい。コロサイの信徒への手紙 3章15節~17節
聖書で最も大切な教えは、万物の造り主また摂理の主なる生ける真(まこと)の神を仰ぎ、救い主・御子イエスを心から信じ、受け入れ、依り頼むことです。すると、私たちはあらゆる罪を赦され、きよめられ、永遠の命に与ります。
聖書はまた私たちがへりくだり、愛をもって互いに仕え合うことも教えます。他にも沢山ありますが、今日は感謝することの大切さをお話したいと思います。
この手紙を書いた時、パウロは、イエス・キリストを宣べ伝えたため、牢獄に捕われ、裁判の結果次第では死刑にもなる状況でした。しかし、彼はコロサイ教会の信徒たちに、神に感謝することを何より勧めます。
では、コロサイ教会のクリスチャンたちは、感謝できる十分な状況にいたのでしょうか。違います。イエス・キリストの教えから逸脱し、誤ったことを言って教会を混乱させる人たちがいましたし、そうでなくても、唯一の生ける真(まこと)の神を信じるために、嫌がらせや迫害がありました。仕事や健康面でも、誰にも襲う様々な試練があったでしょう。
パウロは、無論、それらをよく知っていました。彼も皆も困難の中にいたのでした。しかし彼は、感謝するようにと、ここだけでも3回教えています。自分でも神に絶えず感謝してきたと思いますが、何故感謝することをそれほど教えるのでしょうか。
理由は特には語っていませんが、色々考えられます。そこで今日は、聖書の教え全体から見て、一つだけ心に留めたいと思います。
第二次世界大戦の折、ヒトラーに抵抗して捕えられ、1945年4月9日早朝、フロッセンビュルク強制収容所で39歳で処刑された牧師ボンヘッファーは、鋭く自分や社会を見つめ、キリストへの深い信仰をもって神に従った人ですが、ある本の中で自らの現在と過去を見つめ、こう述べています。「感謝することによって、私は自分の過去との正しい関係を獲得し、感謝することの中で、過ぎ去った過去は、現在にとって実りあるものとなる。」深い言葉だと思います。
過ぎ去った過去には、誰にも情けない罪や失敗があり、悲しいことや忘れたい辛いこともいっぱいあるでしょう。けれども今、私たちは神に生きることを許され、悔い改めてイエス・キリストによる罪の赦しと救いに与れる恵みも、また過去を静かに振り返る時間も与えられています。これが感謝でなくて何でしょうか。
実は感謝することにより、過ぎ去った過去との正しい関係を私たちは獲得することができ、特に神の恵みとして過去を意味のあるものにすることができるのです。感謝することには、確かにそういう点があります。
自分の過去を感謝できないとか、感謝したくないということも、私たちには時としてあるかも知れません。しかし、そういう自分をそのままにしている時、私たちは決して幸せではありません。過去が全て無意味になります。誰にも、本当は感謝できる嬉しいこともあったはずですのに、今の自分の気持ちに負けてしまい、感謝しようとしないなら、それらの過去は意味を失ってしまいます。生きてきたことが無意味だったことになりかねません。何と不幸なことでしょう。ですから、聖書が教える、この如何なる状況でも意識的に感謝することは、とても大事なのです。
誰にも色々なことが過去にはある。だが今、私たちはここに生きている!いいえ、私たちを愛をもって造られた神に生かされている!耳が聞こえる!目が見える!息ができる!ものごとを考え、お喋りし、寒さ、暑さを感じられ、人の優しさを嬉しく思える!
何より神の御子イエスを救い主と信じ、受け入れ、依り頼むだけで、本当に永遠の天の神の御許(みもと)に迎え入れられるのです。神が私たちの過去を赦し、罪も失敗もいっぱいある私たちの過去の全てを意味あるものとして下さいます。色々あった過去の全てを、正(まさ)に神の恵みとして、私たちは全面的に受け入れて良いことを教えられているのです。
49歳のGさんは悪性リンパ腫のために、2005年10月、天に召されました。当時、私がチャプレンとして勤めていた病院のホスピスの病室へ伺いますと、彼女は毎日、「先生、今日、こんな嬉しいことがありました!今日は二つありました!」などと、笑顔で報告して下さいました。お父様の後を継がれ、教会を守り、独身のまま歯医者さんとして活躍され、一生懸命働いておられた時に発症され、どんなにお辛かったかと思います。
しかし彼女は、世を去る前の大切な日々を毎日、病室のベッドの上で、一つ一つのことに感謝しながら過されました。亡くなる日の朝も、病室内で涙を流しておられたお母様に気づかれ、「何で泣いているの?」と優しくおっしゃいました。こうして、彼女は49年の人生を全て意味あるものとして固く握り締め、天の御国、神の御許へ行かれました。
感謝する!この大切なことを改めてよく覚え、どんな小さな恵みも見落とさず、感謝するということに自分の意識を向け、そうして神を喜びつつ、天の御国を目指して最後まで歩みたいと思います。
最後にもう一度、コロサイ人への手紙 3:15~17をお読み致します。「キリストの平和が、あなた方の心を支配するようにしなさい。そのために、あなた方も召されて一つの体となったのです。また、<感謝>の心を持つ人になりなさい。キリストの言葉が、あなた方の内に豊かに住むようにしなさい。知恵を尽くして互いに教え、忠告し合い、詩と賛美と霊の歌により、<感謝>をもって心から神に向かって歌いなさい。言葉であれ行いであれ、何かをする時には、主イエスによって父なる神に<感謝>し、全てを主イエスの名において行いなさい。」