2024年10月03日「試練17 主に委ねる」

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試練17 主に委ねる

日付
説教
田村英典 牧師
聖書
詩編 55章22節

聖句のアイコン聖書の言葉

55::22 あなたの重荷を主に委ねよ。主があなたを支えて下さる。
    主は決して正しい者が揺るがされるようにはなさらない。 (新改訳聖書2017)詩編 55章22節

原稿のアイコンメッセージ

 今日も試練について学びます。17回目となります。

 聖書には、信仰の故に私たちの父となって下さった生ける真(まこと)の神に自分の全てを委ねよ、という教えが沢山見られます。例えば、詩篇55:22は言います。「あなたの重荷を主に委ねよ。主があなたを支えて下さる。主は決して正しい者が揺るがされるようにはなさらない。」(他にも詩篇37:5、箴言16:3など)

 「正しい者」とは、神との正しい関係に入れられた者を指します。生れながらに罪人なのですが、ただ信仰の故に神に義と認められ、創り主また救い主であられる神との正しい関係に招かれた信仰者を指します。

 人は、信仰を与えられ、神との素晴らしく恵まれた関係に入れられても、残っている腐敗した罪の性質の故に、なおも罪を犯し、悔いてはまた犯すまことに弱い者です。しかし、そういう私たちに、詩篇55:22は「あなたの重荷を主に委ねよ。主があなたを支えて下さる」と励ましています。

 ところで、私たちの重荷を神に委ねるというのは、これ以上は自分には負えないので、神に負って頂くという意味です。頑張って、これ以上自分を駄目にしてしまうとか、必要以上に自分を追い込むことをやめ、いわば諦めて(あきらめて)神に任せることです。

 諦めると言いますと、無責任でいい加減な態度のように思えます。しかし今ここで言う諦めとは、どうしようもない罪人の私たちなのに、尚もこんな私たちを愛し受け入れて下さっている三位一体の神への信仰と信頼を前提にした委ねです。「神にお任せし、委ねよう」という、いわば神に希望を託した諦めです。

 ご存じのように、北海道日高市浦河に「べてるの家」というのがあります。これは、精神障害を持つ当事者たちと地域の有志により、1984年に開設された生活と事業の拠点です。古い教会堂を借り受け、住居として活用し、牧師の妻と5人のメンバーが日高昆布の袋詰の下請けを始められ、今では更に広く事業をして、自立しておられます。

 興味深いことに、そこでは力を抜いた「諦め」を大切にしているそうです。

 よく私たちは、「駄目な自分を受け入れたらよい」というアドバイスを受けます。しかし、自ら統合失調症を抱え、7年間の引きこもり体験を持つ当事者スタッフの一人の女性は、本当に苦しんでいる時は、「駄目な自分のままでいいんだ」ということも受け入れられなかったといいます。無性に自分に腹が立ち、「駄目なままの自分を受け入れられない」ので悪戦苦闘した結果、悩むことを放棄、つまり、諦めたのだそうです。すると、そこから回復のステップが始まったといいます。

 アルコール依存症の自助グループAA(アルコホーリック・アノニマス=匿名断酒会)には回復に向けた12のステップがあり、最初のステップは、アルコールに対して自分は無力であり、自分の力では生きていけなくなったことを認めることから始まります。

 浦河の統合失調症の当事者たちが自助グループで使っている浦川独自の8つのステップでも、「私には、仲間や家族、更には専門家の力が必要なことを認めます。私ひとりでは回復できません」と、まず認める所から回復のステップが始まります。回復とは、自分の力を発揮する所から始まるのではなく、自分を諦めることから出発しているということです。

 これは興味深いと思います。先程のいわば神に希望を託した諦め、すなわち、「もう全てを神にお任せし、神に委ねる」という信仰の姿勢と重なる所があると思います。

 自分の力で頑張れると思ってはいたものの、十字架の前夜、主イエスを裏切り、とことん自分の無力さ、弱さを知り、激しく泣き、けれども約束通り三日目に復活された主イエスに再び立ち上がらせて頂いたペテロも、後にこう教えています。Ⅰペテロ5:7「あなた方の思い煩いを、一切神に委ねなさい。神があなた方のことを心配して下さるからです。」

 これからも私たちは、イヤなことや負い切れそうもない試練の重荷に何度も遭遇すると思います。しかし、「私が負うから、あなたの重荷を委ねなさい」と言って下さる父なる神、御子イエス、聖霊なる神、要するに、限りなく愛と慈しみ、赦しと慰めに満ちた三位一体の全能の神に全面的に自分を委ね、まさに讃美歌⑴の291番に「主に任せよ、汝が身を」とあるように、主にお任せし、委ね、主なる神による救いの時を静かに待ちたいと思います。

 もう一度詩篇55:22を読んで終ります。「あなたの重荷を主に委ねよ。主があなたを支えて下さる。主は決して正しい者が揺るがされるようにはなさらない。」

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