2024年07月11日「試練 6 苦しむ人と共にいる」

問い合わせ

日本キリスト改革派 岡山西教会のホームページへ戻る

聖句のアイコン聖書の言葉

12:15 喜んでいる者たちと共に喜び、泣いている者たちと共に泣きなさい。ローマの信徒への手紙 12章15節

原稿のアイコンメッセージ

 今日も試練について御言葉に聞きたいと思います。

 試練の時、苦しんでいる人自身が心に留めるべき大切な御言葉がありますが、周りの者がその人を支える上で覚えたい大切な教えもあります。前回は、苦しんでいる人を周りの者が支える上で、ヘブル13:3から特に「苦しむ人を思いやる」という、いわゆる共感の大切さを学びました。今日は、「苦しむ人と共にいる」という点を学びます。

 私がチャプレンとしてかつて勤めました淀キリ(淀川キリスト教病院)は、今では、職員の多くはクリスチャンではありません。それでも「病める人の体と心と魂(全人)にキリストの愛をもって仕える」という全人医療を理念に掲げ、特にローマ12:15「喜んでいる者たちと共に喜び、泣いている者たちと共に泣きなさい」は、全職員の心得として大切な御言葉になっていました。

 この御言葉の意味するところは何でしょうか。「共に喜び、…共に泣きなさい」とあります。泣いている人、苦しんでいる人を思い、特に「共にいる」ということでしょう。事情が許さず、物理的には無理でも、私たちが気持ちを寄せ、祈って心で共にいることを、主イエスはご存じです。苦痛と不安の中にいる人に、必ず働きかけて下さいます。その事を忘れないでいたいと思います。

 苦しんでいる人にとって最も辛いことの一つは、苦しい時、自分は一人ぽっちなのだという孤独感です。神戸アドベンチスト病院の山形謙二元院長は、ホスピス医として終末期の癌患者に関ってきた経験を踏まえ、前にも紹介しましたが、こう書いておられます。「癌の宣告と共に、殆どの者はどうしようもない孤独感に襲われる。皆が元気に生きて行くのに自分だけが取り残され、やがて自分だけが無理矢理死の世界に呑み込まれて行ってしまう。癌患者のケアは、その孤独感を和らげるものでなければならない。」この通りだと思います。

 孤独感は、病人に限らず、大きな困難に襲われた人皆が味わう辛さです。私たち人間は、神により社会的存在として造られています。ですから、他の人や社会との繋がり、関係、支え合いの中で生きる者とされています。

 ところが普段、私たちはさほどこれを意識しないで生きています。しかし突如、自分が大変な困難に遭う時、大きな孤独感が私たちを襲い、私たちは右往左往し、パニックに陥り、絶望的になり、生きる希望を失いかねません。

 逆に、そういう時に誰かが自分と共にいてくれて、自分を気遣ってくれたりしますと、たとえ苦痛は続いていても、私たちは支えられ、勇気や希望も湧いてきます。

 淀キリで働いていた時のことですが、関わっていたある患者さん(Yさん)の奥様から、「主人が救急車で運ばれた」と、電話がありました。彼女はクリスチャンではありませんが、私を信頼して下さっていたのでしょう。とにかく、私が祈っていること、また淀キリのある職員にも私から連絡することなどを伝え、その後も電話やメールで応援し続けました。

 危険状態を何とか脱することが出来た約2週間後、彼女はこんなメールを下さいました。「この度、主人がこのようなことになって、人は一人では生きていないのだということを痛切に感じています。」

 そして別の病院に転院され、暫く経ってから頂いたメールには、ご自分とご長男のことに触れてこう書いてありました。「救急救命センターに主人が運ばれた時、主人が生きるか死ぬかの瀬戸際の時、私は食欲もなく…。そんな時、(長男が)お母さん、ご飯を食べたか、と何度も声をかけてくれて…。今私が倒れたらいけないと我に返り、体力をつけないと、と思わせてくれました。ありがたいことです。」誰かが共にいる!声をかけてくれる!手を握ってくれる!肩を抱いて祈ってくれる!これがどれ程人を支え、意欲も安心も与えるかが、よく分ると思います。

 私より8歳年上のクリスチャンの女性Tさんは、入退院を繰り返した後、天に召されました。笑顔の絶えない本当に明るい方でした。しかし亡くなる数日前、ご主人のおられない時に、こう私におっしゃいました。「先生、私の最期の時、ここに一緒にいて下さいね。」いつも笑顔ではありましたが、私は彼女の不安で孤独な心の内を知らされました。

 私たちも、自分が最期を迎える時、私たちのために祈り、聖書を読んでくれる誰かが、そばにいてくれるなら、どんなに力強く、嬉しく、安心なことでしょうか。イエス・キリストは、それをどれほど喜ばれることでしょうか。

 特別に何かができなくても、「苦しむ人と共にいる」というこの尊い奉仕を、私たちも是非、主イエスに励まされ、させて頂ければと思います。「喜んでいる者たちと共に喜び、泣いている者たちと共に泣きなさい。」

関連する説教を探す関連する説教を探す