2024年05月02日「十戒の学び60 第十戒5」

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十戒の学び60 第十戒5

日付
説教
田村英典 牧師
聖書
出エジプト記 20章17節

聖句のアイコン聖書の言葉

20:17 あなたの隣人の家を欲してはならない。あなたの隣人の妻、男奴隷、女奴隷、牛、ろば、全てあなたの隣人のものを欲してはならない。出エジプト記 20章17節

原稿のアイコンメッセージ

 神の下さった大切な十戒を今日も続けて学びます。第十戒としては5回目、全体では60回目の学びとなります。

 十戒を学ぶ上で、私たちは信仰の先輩たちが作成したウェストミンスター大教理問答を度々参考にし、ここ2回は、第十戒の消極的な面を解説する問148を見てきました。もう一度、それを宮崎彌男訳で読みます。「第十の戒めで禁じられている罪は、次の通りです。すなわち、自分自身の経済状態に満足せず、隣人の持っている良いものを妬ましく、また、心憎く思うこと、さらに、何であれ隣人の所有しているものに、おおよそ法外な思いや愛着を寄せることです。」

 本来なら、今日は最後の部分の「何であれ隣人の所有しているものに、おおよそ法外な思いや愛着を寄せる」という貪欲の罪を扱うべきだと思いますが、この点は既に時々触れています。ですから、問148はこれで終り、今日から第十戒の積極的な義務を解説する問147を見たいと思います。それをまず宮崎彌男訳で読んでみます。

 「第十の戒めで求められている義務は、自分自身の置かれている状態に十分に満足し、自分の隣人に対して思いやりに満ちた心のあり方を示し、そのようにして、隣人についての内なる思いと感情とを挙げて、隣人の所有しているあらゆる良いものに心を配り、それを増進させることです。」

 今日心に留めたいことは第一の点です。すなわち、第十戒は、私たちに自分自身の状況に十分に満足することを求めている、という点です。

 これまでも何度か申しましたが、第十戒は隣人という点に3回も言及します。これは重要な点です。つまり、この戒めは、何かにつけてすぐ隣人と自分とを比較し、隣人を基準にして自分を見るという私たちの傾向とその愚かさ、不信仰、危険性に気付かせます。

 私たち罪人の特性の一つは、何かとすぐ隣人と自分とを比較することです。そしてその結果、「自分は負けている。悔しい。惨めだ」とか、その逆に、「自分の方が上だ。勝っている。いい気分だ」などと、幸・不幸とか劣等感・優越感という感情まで掻き起され、揺さ振られることが少なくありません。これは何と自分自身がない不信仰で情けない状態でしょうか。

 むしろ私たちは、私たちの造り主にして救い主であられる永遠者・絶対者なる生ける真(まこと)の神、また御子、主イエス・キリストとの関係で、自分と自分の状態をより客観的によく見つめるべきなのです。聖書全体が、信仰者として何より大事なその視点を教えます。

 そこで、神が私たち信仰者にどう語っておられるかを見たいと思います。ウェストミンスター大教理問答が証拠聖句として挙げていますヘブル13:5は言います。「金銭を愛する生活をせずに、今持っているもので満足しなさい。主ご自身が『私は決してあなたを見放さず、あなたを見捨てない』(申命記31:6、ヨシュア記1:5)と言われたからです。」

 またⅠテモテ6:6は言います。「満ち足りる心を伴う敬虔こそが、大きな利益を得る道です。」

 これを書いた使徒パウロは、肉体に辛く厳しい棘を与えられていて、取り去って頂きたいと三度も主にお願いしたことがありました。しかし、主イエスはどうお答えになったでしょうか。Ⅱコリント12:9が伝えますように、「私の恵みはあなたに十分である。私の力は弱さの内に完全に現れるからである」でした。

 もう良いでしょう。未だ肉の人のように、絶えず隣人と自分を比較し、幸せにも不幸にもなるといった愚かなあり方をキッパリやめ、何より私たちのためにご自分を貧しく低くされた主イエス・キリストの前で、自分をよく見つめ、恵みをこそ数えて主に感謝する者でありたいと思います。Ⅱコリント8:9は言います。「あなた方は、私たちの主イエス・キリストの恵みを知っています。すなわち、主は富んでおられたのに、あなた方のために貧しくなられました。あなた方が、キリストの貧しさによって富む者となるためです。」

 もう一度言います。貪りの罪を禁じ、私たちを罪と堕落から守ろうとする第十戒が私たちに積極的に求める第一のことは、神また主イエスの前に、自分自身の状況に十分に満足することです。不満を覚えるというのであるなら、神と人に、未だに十分に仕えることの出来ていないそういう自分についてでありたいと思います。

 また何度も確認しますが、主イエスが語られた約束の御言葉、マタイ6:33の「まず神の国と神の義を求めなさい。そうすれば、これらのものは全て、それに加えて与えられます」を何より心に留め、この約束を心から信じ、また実際に神と人に仕え、そうして「私の恵みはあなたに十分である」という主の御声を、心の中に、静かに、何度も聞く幸いをこそ許されたいと思います。

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