2024年02月18日「十二使徒の使命と心得 ⑵」

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十二使徒の使命と心得 ⑵

日付
説教
田村英典 牧師
聖書
マタイによる福音書 10章5節~15節

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聖句のアイコン聖書の言葉

10: 5 イエスはこの十二人を遣わす際、彼らにこう命じられた。「異邦人の道に行ってはなりません。また、サマリア人の町に入ってはいけません。
10: 6 むしろ、イスラエルの家の失われた羊たちのところに行きなさい。
10: 7 行って、『天の御国が近づいた』と宣べ伝えなさい。
10: 8 病人を癒やし、死人を生き返らせ、ツァラアトに冒された者をきよめ、悪霊どもを追い出しなさい。あなたがたはただで受けたのですから、ただで与えなさい。
10: 9 胴巻きに金貨も銀貨も銅貨も入れて行ってはいけません。
10:10 袋も二枚目の下着も履き物も杖も持たずに、旅に出なさい。働く者が食べ物を得るのは当然だからです。
10:11 どの町や村に入っても、そこでだれがふさわしい人かをよく調べ、そこを立ち去るまで、その人のところにとどまりなさい。
10:12 その家に入るときには、平安を祈る挨拶をしなさい。
10:13 その家がそれにふさわしければ、あなたがたの祈る平安がその家に来るようにし、ふさわしくなければ、その平安があなたがたのところに返って来るようにしなさい。
10:14 だれかがあなたがたを受け入れず、あなたがたのことばに耳を傾けないなら、その家や町を出て行くときに足のちりを払い落しなさい。
10:15 まことに、あなたがたに言います。さばきの日には、ソドムとゴモラの地のほうが、その町よりもさばきに耐えやすいのです。マタイによる福音書 10章5節~15節

原稿のアイコンメッセージ

 前回は、十二使徒に語られましたここのイエスの教えから、教会とクリスチャンにとって大変重要な伝道の使命と心得を学びました。

 その際、説教原稿にはなかったのですが、伝道はキリスト教の勢力拡大などといったことが目的ではないことを話しました。そして私たちもそうですが、生まれ持った罪のため、そのままではやがて必ず永遠の滅びに至り、少し付け加えますが、生きている時も自分の罪のために人を傷つけ、自らも翻弄されている多くの隣人に、主イエス・キリストによる真(まこと)の幸せに与って頂くことが目的であることを申しました。

 さて、伝道の原則とも言える伝道の使命と心得について、ここのイエスの御言葉から五つの点を教えられます。前回はその内の三つを学びました。第一に伝道の優先順位について、第二に伝道のあり方、方法について、第三に伝道者は生活に心を乱されずに福音宣教に専念すべきだ、ということです。今朝はその続きです。

 では、第四は何でしょうか。伝道の拠点を持つことの大切さです。

 イエスは言われます。11節「どの町や村に入っても、そこで誰が相応しい人かをよく調べ、そこを立ち去るまで、その人の所に留まりなさい。」古代社会では、一般的に宿は危険で不潔でもありました。ですから、昔のユダヤでは、旅人を自宅に泊めるもてなしがよく行われました。ここもそういうことが背景にあります。

 イエスは、町や村で伝道者が福音を語り、それを歓迎する人がいるなら、その人の家を拠点とし、暫くそこで伝道しなさい、と言われるのです。つまり、一つのことは、あちこちにあまり移動せず、腰を下ろして伝道せよ、ということです。新約聖書の「使徒の働き」を読みますと、のちに使徒たちもそうしたことが分ります。

 もう一つあります。大切なことは、伝道は、実は決して牧師や伝道者だけで出来るのではない、ということです。ある町や地域で昔からキチンと生活し、特に隣近所の厚い信頼を得ている、その意味でも11節「相応しい人」、つまり、相応しいクリスチャンとの協力があってこそ、実を結ぶのです。

 私は牧師としての生活が49年近くになりますが、その間に何度か思ったことがあります。それは、比較的伝道が進み、教勢がよく伸びている教会を見ますと、隣近所と仲良くし、親しくしていて、隣近所から信頼されている教会員が自分の家に人を招き、そこで牧師が話をし交わりを持ったりする家庭集会の盛んな所が多いということです。要するに、地域社会にしっかり根差し、そこで生活する信徒の家こそ、伝道の拠点だということです。イエスはこのことも教えておられるのです。改めて、とても大切なことを教えられると思います。

 五つ目に進みます。何でしょうか。伝道者の根本的な心得、意識のあり方です。

  これに二つあります。一つは、とにかく人にしっかり挨拶をし、平和を願うことです。イエスは言われます。12節「その家に入る時には、平安を祈る挨拶をしなさい。」

「平安を祈る挨拶をしなさい」とありますが、直訳では「挨拶をしなさい」だけです。しかし、今日でもそうかも知れませんが、ユダヤでは、平安や平和を指すヘブル語「シャーローム」を使って、「シャーロームがありますように」と挨拶するのが普通でした。従って、新改訳聖書のように「平安を祈る挨拶をする」と訳しても良いでしょう。

 大切なことは、福音の証し人、伝道をする人には、神の下さる平和・平安を、従って、神の祝福をこそ人のために願うという姿勢と祈りのあることです。これが実は、伝道の根本的な心だということです。そしてこの思いを常に持っている時、私たちは自然と隣人に対して「笑顔の挨拶」が出るのだと思います。

 このことで、アメリカの教会でよく見られ、韓国の教会でもそうではなかったかと記憶することが一つあります。それは、礼拝プログラムの中で、皆が少し立ち上り、あるいは座ってする人もいましたが、自分の前後左右の人と笑顔で、「主の平和・平安がありますように」と言葉に出し、挨拶し合う時間を設けている教会のあったことです。

 西部中会の中にもこういう教会があり、私も北神戸キリスト教会で牧師をしていた時、この挨拶を礼拝の中に取り入れたものです。初めは、皆、慣れませんので、恥かしがり、戸惑ったりして、ややぎこちなかったですが、段々慣れて来て、その内、笑顔でしっかりお互いに挨拶が出来るようになりました。

 無論、何でもそうですが、形式的になり、形骸化する可能性もなくはありませんので、注意する必要はあります。しかし、その点に注意すれば、これは私たちの誰もが伝道者として、自分の住んでいる地域社会で、進んで、人に言葉と笑顔で挨拶をする良い訓練になるかも知れないと思いますね。

 さて、マタイの10章に戻ります。イエスは言われます。13節「その家がそれにふさわしければ、あなた方の祈る平安がその家に来るようにし、ふさわしくなければ、その平安があなた方の所に返ってくるようにしなさい。」

 最後の「返ってくるようにしなさい」というのは、「それ位の意識で、挨拶をするのですよ」ということでしょうね。

 ここはもう殆ど説明の必要はないと思います。私たちの心からの平和と平安の挨拶は、決して無駄にならないということです!神は生きて働いておられるのです。

 もう一つ大事な心得、意識があります。それは福音の確信、もしくは誇りについてです。イエスは言われます。14、15節「誰かがあなた方を迎え入れず、あなた方の言葉に耳を傾けないなら、その家や町を出て行く時に、足のちりを払い落としなさい。まことに、あなた方に言いますく。裁きの日には、ソドムとゴモラの地の方が、その町よりも裁きに耐えやすいのです。」

 ソドムとゴモラは、創世記19章が伝えますように、罪のため、かつて神が天からの硫黄と火によって滅ぼされた町のことです。

 私たちクリスチャンは、常に愛と善意と柔和な心で平和の挨拶をし隣人と交わることを、第一に心がけます。しかし、頭から福音を全く否定し、攻撃的に出て来る人にまで、いつもヘラヘラする必要はないということです。

 イエスがここで言われ、使徒の働き13:51が伝えますように、足のちりを払い落すという使徒たちの仕草までは実際にはしないとしても、福音の確信と誇りに立ち、毅然としてイエス・キリストの香りを放つ者でありたいと思います。パウロは言いました。Ⅱコリント2:15、16「私たちは、救われる人々の中でも、滅びる人々の中でも、神に献げられた芳しいキリストの香りなのです。滅びる人々にとっては、死から出て死に至らせる香りであり、救われる人々にとっては、命から出て命に至らせる香りです。」

 神ご自身が下さり、私たちが今与っているイエスの福音についての確信、誇り、また毅然とした姿勢を決して忘れてはならないことを、改めて心に留めたいと思います。

 先週に続き今朝も、全ての伝道者にとって大切な「十二使徒の使命と心得」を学びました。これらは、時代と状況は違いますものの、いつ、どこにあっても、私たちクリスチャンがイエス・キリストにより派遣されているその生活の現場で、人がもっと救われ、神の国が拡がるための、とても大切な伝道の心得であり原則と言えます。

 私たちの教会は今年、「福音の力を信じ、喜びと希望をもって歩もう」という積極的な標語を掲げました。人が自分の全ての罪を赦され、神の子供とされ、死んでも滅びではなく、永遠の御国の祝福に入れられるというこの最高の幸せに、もっと多くの方に与って頂くために、証しと伝道に励もうという思いが、ここには込められています。

 どうか、聖霊が私たちに働かれ、イエス・キリストの芳しい香りを私たちが放ち、福音を生活で飾ることにより、救いに与って神を心から賛美し、真の幸せに与る人が更に増え、益々大きな喜び(ルカ15:7)が天にありますように!アーメン!

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