2024年01月04日「神をしっかり見つめて」

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神をしっかり見つめて

日付
説教
田村英典 牧師
聖書
マタイによる福音書 14章22節~32節

聖句のアイコン聖書の言葉

14:22 それからすぐに、イエスは弟子たちを舟に乗りこませて、自分より先に向こう岸に向わせ、その間に群衆を解散させられた。
14:23 群衆を解散させてから、イエスは祈るために一人で山に登られた。夕方になっても一人でそこにおられた。
14:24 舟は既に陸から何スタディオンか離れていて、向かい風だったので、波に悩まされていた。
14:25 夜明けが近づいたころ、イエスは湖の上を歩いて弟子たちのところに来られた。
14:26 イエスが湖の上を歩いておられるのを見た弟子たちは「あれは幽霊だ」と言っておびえ、恐ろしさのあまり叫んだ。
14:27 イエスはすぐに彼らに話しかけ、「しっかりしなさい。私だ。恐れることはない」と言われた。
14:28 するとペテロが答えて、「主よ。あなたでしたら、私に命じて、水の上を歩いてあなたのところに行かせて下さい」と言った。
14:29 イエスは「来なさい」と言われた。そこでペテロは舟から出て、水の上を歩いてイエスの方に行った。
14:30 ところが逆風を見て怖くなり、沈みかけたので、「主よ、助けて下さい」と叫んだ。
14:31 イエスはすぐに手を伸ばし、彼をつかんで言われた。「信仰の薄い者よ、なぜ疑ったのか。」
14:32 そして、二人が舟に乗り込むと、風はやんだ。マタイによる福音書 14章22節~32節

原稿のアイコンメッセージ

 2024年を始めるに当り、皆で祈る前に、どういうことを御言葉からご一緒に確認しようかと色々考えました。そこで今朝は、神をしっかり見つめることの大切さを、改めて学びたいと思います。

 先程、お読みした所は、約二千年前のある日の夕方、23節が伝えますように、イエスは祈るために一人で山に登られ、弟子たちはイエスに言われた通り、先に向こう岸に着こうとして、ガリラヤ湖の北部を舟で渡ろうとした時のことです。

 具合の悪いことに、向かい風が一晩中吹きやまず、彼らは波にひどく悩まされました。しかし、25節、夜明けが近づいた頃、何とイエスは湖の上を歩いて彼らの所に来られました。26節、弟子たちはそれを見て恐れ、「あれは幽霊だ」と叫びました。しかし、イエスが話しかけられましたので、弟子たちはそれがイエスだと分かりました。

 すると、熱血漢であわて者でもあった弟子のペテロは、28節「主よ。あなたでしたら、私に命じて、水の上を歩いてあなたの所に行かせて下さい」と言いました。イエスが「来なさい」と言われますと、ペテロは本当に舟から出て、水の上を歩いてイエスの方へ進んだのでした。何と大胆でしょう。

 ところが、強風を見て急に怖くなり、溺れそうになったペテロは「主よ、助けて下さい」と叫びました。イエスはすぐに手を伸ばし、彼を掴んで言われた。31節「信仰の薄い者よ、なぜ疑ったのか。」二人が舟に乗り込みますと、風は静まりました。

 この出来事が伝えんとすることは、イエスが全知全能の神の独り子で、私たちの確かな救い主だということと共に、御子イエスへの、また御子を世に遣わされた天の父なる神への私たちの信仰のあり方という点もあると思います。

 山や崖に囲まれたガリラヤ湖の北東部では、時折、恐ろしい風が上から吹き付け、プロの漁師でも危険だそうです。この時はそこまでの風ではないようですが、強い逆風が、結構、長く続きました。

 そんな中でも、ペテロが水の上を主イエスの方に歩こうとすると、歩けました。しかし、強風に気を取られ、主から目を離すと、急に怖くなり、溺れそうになりました。恐らくイエスから目を離さず、しっかり見つめていたなら、風や波は強くても、イエスの所にまで行けたでしょう。

 もう大分前のことですが、次のような話を何かで読んだことがあります。ある人がヘリコプターの操縦技術を身につけることになり、一生懸命勉強し、実地訓練をすることになりました。横に乗った教官は「下じゃなく、前を見るんだ。前を」と教えました。いよいよ離陸し、習った通り前に行こうとしました。所が、機体が不安定になって揺れ、どうにもなりません。やり直しになりました。離陸し、前に進みました。でも、すぐ機体が不安定になる。またやり直しです。そういうことが続き、この人はますます焦ってきました。

 横にいた教官は、何度目かの離陸の後、急に前に体を傾け、遠くの方を見て「あ、夕焼け、綺麗だなぁ」と言いました。必死の思いで操縦桿を握っていたこの人は「何が夕焼けだ。こんな時に」と腹立たしく思いましたが、つられて前を見ました。夕焼けなんかありませんでした。その時、横にいた教官がニヤッと笑って言いました。「ほら、真直ぐ飛んでいるだろう。」

 慣れないと、機体を安定させようとして、つい下を見てしまう。そうすると、機体は却って不安定になります。しかし、遠くを見つめると視点が定まり、機体は安定するといいます。興味深いですね。

 困難な問題に遭遇しますと、当然、私たちはそれに対して本能的に身構えます。しかしその時、却って問題そのものに捕われ過ぎて、自分を失い易いことがあると思います。ヘリコプターの操縦を習っていた人がそうですし、今、聖書で見たペテロがそうですね。

 むしろ、大きな問題に直面し、パニックに陥りそうになる時こそ、私たちのために十字架で命を捧げて下さった程に私たちを愛して下さっている御子イエスを、また、見えるものも見えないものも、今のことも先のことも支配し、ご自分を信じ、頼る者たちのために、御言葉の約束を必ず成就される全知全能の父なる神を、より意識的にしっかり見つめたいと思うのです。

 大きなことは言えませんが、私も大きな問題に直面して自分を失いそうになった時、心の背筋を伸ばして神をぐっと見つめたことで、心が落ち着き、問題を冷静に見ることができ、乗り越えられたことが何度かあります。

 まず神をこそしっかり見つめ、その定まった視点をもって次に現実をも冷静に直視し、主イエスの御霊に手を添えて頂きながら、落ち着きと勇気をもって自分の心の操縦桿を握り、今年もご一緒に前進していきたいと思います。

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