2023年08月24日「十戒…第三戒　神の名の乱用」

　「みだりに」という言葉の説明から始めたいと思います。…「みだりに」の意味は「実体の ない」で、ここから「空しく」「とるに足りない」の意味が出て「偽りの」という意味にもなり ます。だから「みだりに」神の名を唱えることは、心を全然伴わない、空虚な心で神の名を使用 することを指しています。

第三戒の大切な点は、その御名を用いる者の心のあり方、信仰の内側の姿が問題となっているということは明らかです。

　第三戒は、礼拝における姿勢、あり方を問題にしています。このことは否定できません。…

神礼拝で大切なことは礼拝者の礼拝態度です。…外見は取り澄ましていても、内心では礼拝がいやになってしまっているということもあります。習慣化して、そのたびごとの礼拝が緊張感を失っている…礼拝はしていても思いは他のことに向いているというようなことも珍しくはありません。表面上は礼拝していますが、心の中に浮かんでいる思いは礼拝後のことばかり。これでは…みだりに唱えていることに他ならないのです。

　第三戒は厳しい教えなのです。しかし、同時に、私たちは神の前を生きています。いや、生きていくことが許されています。神の前を、神に反発しつつ、暗い気持ちで歩む時には、神に対して、態度がよくなるはずはありません。神の恵みを信じて、ただそれだけに信頼したい。そのような思いが心にある時は、私たちは不真面目な態度で神の前を生きることはできません。まず私たちが心を開き、神を信頼して、神の前を生きていくのが第一です。そのために、神が御心を開いて、私たちに接しておられることに気がつかなければなりません。とかく、私たちは神に対して心を閉ざしがちです。神との交わりがいかに豊かなものかに目が向かず、神の憐れみがいかに深く大きなものかにも感動しない、こういうあり方が積み重なって、私たちの神に対する態度ができ上がるのだと思います。神の前がいかに心安く、平安であるか、祝福されているかを悟れば、神に対する姿勢は一変するでしょう。

　イスラエルは畏れ多くて、ヤハウェと発音さえしませんでした。これは正しいでしょうか。

　なるほど、神を畏れることは、第三戒に合致しています。神の名を呼ぶことはただの発声とは違います。神の名を唱えることは神を呼び出すことではありません。神は人間の大声で目を覚まし、お出ましするような方ではありません。しばしばそのように誤解されます。畏れ多すぎて、ユダヤ人のように、名も唱えないほどにたてまつることも行き過ぎだと言わなければなりません。

　新約においては、神は受肉し、イエス・キリストと唱えられます。キリストは愛の神だから、安っぽく唱えられても差し支えないというのではありませんが、キリストが畏れ多いとたてまつられて、その名さえも使われないというようなことは的外れです。

　神の名は神が救い主であるということを示すものです。…神の名は神がいかに恵みに満ちた方であるか、を語っています。何回唱えてはならないとか、ひんぱんに唱えてはならないというのではなく、神の名に秘められている意味、神とはどういうお方かを知らず、あるいは知っても信じなかったり、受け入れたりしないような名の使い方は本末転倒なのです。

　第三戒を宣誓や誓いと関連させて理解することが一般的でした。…誓いはいろいろの機会になされます。キリスト教世界では、神の名が使われます。神を第三者にして、誓いの確実さを保証しようとするものです。裁判や、結婚、それに、教会では洗礼や陪餐のときになされます。…そして教会役員就職式の際にも誓約がなされます。…第三戒をこの宣誓に適用するのは、神の前で誓った以上、その宣誓に忠実であることが、神の名を冒涜しないのであり、神の名を重んじることになります。

　私たちはたとえ神の名を使って誓約や宣誓をするのではないとしても、キリスト者として、神の前で隠されたものはないということを信じて、どのような場でなされたにせよ、誓約に忠実なこと、これもまた信仰の基本であろうと思います。

　語り合いのために

・第三戒は単に神の御名の乱用だけではなく、信仰者の内面を問う戒めである。私たちの礼拝態度について吟味すべきことはないか？

・講解者である金田先生は、神様に対する私たちの心の開きがどうであるかを問うておられる。この点について吟味すべきことはないか？

・宣誓や誓約などの公的な場面でも信仰生活のどの場面でも、第三戒の指針、神の前にある自分の言葉と行いと態度を誠実に保つ秘訣は何か？