2023年02月02日「十戒の学び２９　第五戒７」

　今日で第五戒の学びを、一応、終りたいと思います。

　第五戒について、これまで色々な点を学んで来ました。神が下さいました戒めを学べば学ぶ程、その素晴らしさに驚き、旧約時代の信仰者が次のように神に歌ったこともよく分ります。詩篇119:47､48「私はあなたの仰せ（おおせ）を喜びます。それを私は愛します。私は愛するあなたの仰せを求めて両手を上げ、あなたの掟に思いを潜めます。」 同127節「それゆえ私はあなたの仰せを愛します。金よりも、純金よりも。」

　さて、今日は為政者への私たちの姿勢について学びたいと思います。

　第五戒は、神が私たちにお求めになります隣人愛に生きる上で最も大切な人間関係の基礎、また基本となることを教えています。その隣人愛は、社会の秩序、平和、福祉などにも必然的に関心を払い、それらを求めます。その点で第五戒は、為政者への私たちの姿勢に繋がるわけです。

　現実には、多くの為政者が私利私欲で働き、彼らに失望させられることが余りにも多いため、私たちはつい、彼らのために祈ることも、彼らに敬意を払うことも少なくなりやすいと思います。

　しかし、聖書はどう教えているでしょうか。為政者たちが今よりももっと強大な権力を振るっていた紀元1世紀に、使徒パウロは、テモテと教会役員たちにこう教えました。Ⅰテモテ2:1～3「そこで、私は何よりもまず勧めます。全ての人のために、王たちと高い地位にある全ての人のために願い、祈り、執り成し、感謝を捧げなさい。それは、私たちがいつも敬虔で品位を保ち、平安で落ち着いた生活を送るためです。そのような祈りは、私たちの救い主である神の御前において良いことであり、喜ばれることです。」

　ここに、願いと祈りと執り成しと感謝を、「王たちと高い地位にある全ての人のために…捧げなさい」とあります。要は、為政者のための祈りを求めています。

　そしてそれは、「私たちがいつも敬虔で品位を保ち、平安で落ち着いた生活を送るため」とあります。これは第五戒の後半の御言葉、「あなたの神、主が与えようとしているその土地で、あなたの日々が長く続くようにするためである」という祝福の一つの具体的な形と言えます。

　私たちが、敬虔で品位を保ち、平安で落ち着いて生きるために、為政者のために祈る。これは、私たちが一層神を喜び、隣人に主の愛をもって仕え、福音を証しし、私たちが彼らへの祝福の源となるためでもあるのです。為政者のための祈りは、隣人愛という大きな枠組みの中で神から期待されている大切なことの一つなのです。

　私たちはまた法律や制度を尊び、為政者に敬意を払うことも教えられます。Ⅰペテロ2:13～17は言います。「人が立てた全ての制度に、主の故に従いなさい。それが主権者である王であっても、あるいは悪を行う者を罰して善を行う者を誉めるために、王から遣わされた総督であっても、従いなさい。善を行って、愚かな者たちの無知な発言を封じることは、神の御心だからです。自由な人として、しかもその自由を悪の言い訳にせず、神の僕として従いなさい。全ての人を敬い、兄弟たちを愛し、神を恐れ、王を敬いなさい。」

　法律や制度を尊び、為政者を敬うことを、教えられます。これも第五戒が求めることの一つなのです。

　無論、神の律法に背く法律や制度を作り、それらを強要する為政者をも、私たちが敬い、黙って従わなければならない、というのではありません。不当にも、ペテロとヨハネを捕え、脅かしたユダヤ議会で、二人は毅然としてこう言いました。使徒4:19「神に聞き従うよりも、あなた方に聞き従う方が、神の御前に正しいかどうか、判断して下さい。」（同5:29も）

　為政者や国家は、しばしば悪魔化し、良心的に生きる少数者や弱者を弾圧し、抹殺して来ました。悪魔・サタンは絶えず働いています。この闇の力を私たちは断じて忘れてはなりません。

　この点で、日本キリスト改革派教会創立30周年記念宣言の 三 ⑶ （専制への反対）という所の次の文言を、よく心に留めたいと思います。「神のみが、体と良心との主であられる。神はいかなる国家的権威であれ宗教的権威であれ、彼らが絶対的権能とりわけ良心と思想をほしいままに統制する権能を主張する場合はいつでも、我々がその権威者に逆らってご自身に服従することを要求される。」

　しかし、神の正義と憐れみが少しでも具体化され、社会の秩序、平和、福祉などに貢献する限り、為政者のために私たちは祈り、敬意を払い、法律や制度に喜んで従いたいと思います。大きな、そして大切な隣人愛という枠組みの中で、第五戒は私たちに命じます。「あなたの父母を敬え。あなたの神、主が与えようとしているその土地で、あなたの日々が長く続くようにするためである。」