2023年01月12日「十戒の学び２６　第五戒４」

　暫く中断していましたが、第五戒の学びに戻ります。第五戒の学びは、これで4回目となります。

　今日は、第五戒の後半の言葉、「あなたの神、主が与えようとしているその土地で、あなたの日々が長く続くようにするためである」に注目します。十戒は古代イスラエルがエジプトから神に救い出された後、シナイ山で与えられました。

　その40年後、神の約束の地カナンに入る時、民が世代交代していたため、ヨルダン川の東にあるモアブの平原で、モーセはこれを再確認します。その時の第五戒も見ておきます。申命記5:16です。「あなたの父と母を敬え。あなたの神、主が命じた通りに。それは、あなたの日々が長く続くようにするため、また、あなたの神、主があなたに与えようとしているその土地で幸せになるためである。」

　出エジプト直後のシナイ山で与えられたものと比べますと、「あなたの神、主が命じた通りに」という言葉と「幸せになる」が加わり、この戒めを心して守ること、そしてこれを守った時の幸せが強調されています。興味深いですね。

　パウロは、申命記の第五戒を念頭に置いてでしょう、エペソ6:1～3で、教会の子供たちにこう書いています。「子供たちよ。主にあって自分の両親に従いなさい。これは正しいことなのです。『あなたの父と母を敬え。』これは約束を伴う第一の戒めです。『そうすれば、あなたは幸せになり、その土地であなたの日々は長く続く』という約束です。」

　では、第五戒に従い、父母を敬って生きると、何故、私たちは長生きでき、幸せなのでしょうか。恐らくこういうことでしょう。

　前に申しましたように、第五戒は神への姿勢ともつながっているため、第五戒によく生きる時、神は大変喜ばれ、特別に祝福をもって私たちに臨んで下さるということが、一つ考えられます。それと共に、第五戒は対人関係における最も大切な基本姿勢を教えるものですので、私たちが幼い時からこれをよく守るなら、人との無用な衝突に巻き込まれにくく、むしろ人間関係において恵まれることが多いからという、実際的な点もあるように思われます。

　前回申しましたように、父母を敬い、彼らに従順で、時には我慢し、また父母を助け、彼らを愛し大切にするという、私たちが幼い時に身に着けた姿勢は、単に親との関係に留まりません。私たちと対等の人に対しても目下の人に対しても、つまり、私たちの接するあらゆる人に対し、その名誉を重んじ、礼節を尊び、謙虚に仕えるという、私たちの全生涯に亘る姿勢につながり、波及していきます。

　従って、父母を敬うという人間関係におけるこの基本が身に着いていませんと、色々な人との関係においても旨く行かなくなりやすい。言葉が乱雑で、礼儀に欠け、人を思いやるとか、謙って人を敬うというようなことも苦手なため、段々、人が離れて行き、自分の居場所を失いやすくなります。また人とよく衝突してスムーズに行かないことも多く、人に嫌がられ、非難も受けやすく、本人も苛立つことが多くなりやすい。その結果、幸福感や平安、感謝がどうしても少なくなる。何と不幸でしょうか。

　他方、父母の躾（しつけ）を幼い時からキチンと守り、彼らの注意を心に留め、わがままを抑えることができ、しかも父母を優しく思いやり、大切にするという、対人関係の最も基礎となることが身についていますと、どうでしょう。誰に対しても自然に配慮でき、人を助け、人の良い点を認めることのできる謙虚さや優しさも育っているため、どちらかといえば、人との摩擦も少なくなります。ピリピ2:3､4「何事も利己的な思いや虚栄からするのではなく、へりくだって、互いに人を自分よりも優れた者と思いなさい。夫々、自分のことだけでなく、他の人のことも顧みなさい」と言われていることが結構できるため、人との良いつながりや交わりも広がります。結果的に人からも好意的に思われやすい。そのため、感謝や幸福感が自然と増え、申命記5:16の第五戒が言うように、「あなたの日々が長く続く…主があなたに与えようとしているその土地で幸せになる」ということになります。

　無論、ウェストミンスター小教理問答の問66が言いますように、こういう長寿や幸せは、「神の栄光とその人自身の益になる限り」であり、第五戒を守るとこうなるといった、機械的、ご利益的理解は、本当のキリスト教信仰ではありません。

　神は天国の祝福を用意しておられるだけでなく、主イエス・キリストの贖いと執り成しの故に、この世でも私たちを幸せに送らせようとしておられます。十戒は私たちを祝福するためにあります！この神の愛を覚え、様々な人間関係でも幸せで、イエス・キリストの福音を証しできるためにも、第五戒を、改めて全教会員が心に留めたいと思います。