「エジプトに避難」ウイリアム・モーア 2009.12.27

聖書:マタイによる福音書2章13−23

◆エジプトに避難する

 13:占星術の学者たちが帰って行くと、主の天使が夢でヨセフに現れて言った。「起きて、子供とその母親を連れて、エジプトに逃げ、わたしが告げるまで、そこにとどまっていなさい。ヘロデが、この子を探し出して殺そうとしている。」14:ヨセフは起きて、夜のうちに幼子とその母を連れてエジプトへ去り、15:ヘロデが死ぬまでそこにいた。それは、「わたしは、エジプトからわたしの子を呼び出した」と、主が預言者を通して言われていたことが実現するためであった。

◆ヘロデ、子供を皆殺しにする

 16:さて、ヘロデは占星術の学者たちにだまされたと知って、大いに怒った。そして、人を送り、学者たちに確かめておいた時期に基づいて、ベツレヘムとその周辺一帯にいた二歳以下の男の子を、一人残らず殺させた。17:こうして、預言者エレミヤを通して言われていたことが実現した。 18:「ラマで声が聞こえた。激しく嘆き悲しむ声だ。ラケルは子供たちのことで泣き、/慰めてもらおうともしない、/子供たちがもういないから。」

◆エジプトから帰国する

 19:ヘロデが死ぬと、主の天使がエジプトにいるヨセフに夢で現れて、20:言った。「起きて、子供とその母親を連れ、イスラエルの地に行きなさい。この子の命をねらっていた者どもは、死んでしまった。」21:そこで、ヨセフは起きて、幼子とその母を連れて、イスラエルの地へ帰って来た。22:しかし、アルケラオが父ヘロデの跡を継いでユダヤを支配していると聞き、そこに行くことを恐れた。ところが、夢でお告げがあったので、ガリラヤ地方に引きこもり、23:ナザレという町に行って住んだ。「彼はナザレの人と呼ばれる」と、預言者たちを通して言われていたことが実現するためであった。

 

教会暦年のクリスマス】

私にとって、クリスマス後の数日はちょっと寂しい時期になります。何故なら、キリスト教会の暦年によりますと、クリスマス・シーズンはキリストの御降誕日12月25日から1月6日まで続きます。しかしながら、一般の社会を見たら、クリスマスはクリスマスイブ、つまり、御降誕日の前の日までのようです。ある場合はクリスマスイブの前日位からクリスマスのライトや飾りなどが店から消えてしまい、スピーカから流れるクリスマス•キャロルも聞こえなくなります。そして、お正月の商戦が激しく始まります。

 

【クリスマス当日はもうクリスマスを祝わない】

わが家の近所にはよく知られたコーヒー店があります。必ず毎年クリスマスの一ヵ月前にイルミネーションがつ、長さ5メートル程のでっかい赤いリボンが店の天辺から掛けられています。ずとそのおめでたい様子、不思議にクリスマスイブの夜遅くには飾り下ろされま。近所の教会もイブの夜遅く通りましたら、中のクリスマス飾りを取っていました。ですから、翌日の25日のクリスマスに近所を歩くと、とても寂しい気持ちです。クリスマスが来る前に、クリスマスが無かったような感じであります。

 

とにかく、周りの環境を見ると、クリスマスはもう済んだのです。クリスマスは忘れられ、この世はクリスマスの前の状態に戻りました。戦争は続づき、不景気は残され、政治家はとんでもない偽りを言ったり、ショッキンッグな犯罪がニュースを支配しています。人間の罪は醜くて、クリスマスの平和と親善とは大きな対照を示します。

聖家族エジプト避難

今日の御言葉によりますと、クリスマスは聖家族にも速く終わりました。と言うのは、ヨセフとマリアは赤ちゃんイエスを殺人的なヘロデ王から守る為に直ぐにエジプトへ避難しなければなりませんでした。「きよしこのよる、星はひかり、救いのみ子は、まぶねの中に、眠りたもう、いとやすく」の平和な状態は、間もなく外国へ夜逃げの恐ろしい状態に変わりました。

 

ヘロデ王の幼児虐殺】

ヘロデ王は占星術の学者達から救い主の誕生の事を聞いて、必死になり、その子を探し出して殺そうとしました。しかし、救い主として生まれた子を確かめられなかったので、ベツレヘムにいた二歳以下の男の子を皆殺させました。幸いに、主の天使が夢でヨセフに現われて、速く逃げると忠告しましたから、聖家族は無事にエジプトへ避難する事が出来ました。

 

その始めのクリスマスが済んでからヨセフとマリアと赤ちゃんイエスには決して全てが平和と喜びではなかったのです。愛する神は御子を完璧な世に送りませんでした。「自分の民を罪から救う」為に御子を私達の世に遣わされましたからです。やはり人間の罪の故にベツレヘムには、また全世界には全ては明るくてはありませんでしたので、救い主が何よりも必要となりました。

 

始めのクリスマスは速く終わって、「激しく嘆き悲しむ声」が聞こえました。テロと恐れがあって、不正義と圧迫も普通になりました。ヘロデ王は少しでも自分の安心を得る為に無邪気な赤ちゃんを沢山屠ってしまいました。

 

イエス・キリストは罪を救う為に世にきた】

皆さん、今日与えられた御言葉はあまりクリスマスらしくはないですね。ヨセフと出産したばかりのマリアが血に飢えたヘロデから逃げるストーリはクリスマスの喜びと楽しみに全く合わないようです。しかし、イエス・キリストはそのような罪深い世界を救う為に生まれました。幸いにもヨセフは神の天使の声に聞いて忽ち家族を連れてエジプトへ避難したのです。

 

ヘロデ王ナザレ帰還】

聖家族はエジプトで守られ、ヘロデ王が死ぬと、もう一度主の天使がヨセフに夢で現われ、イスラエルへ帰るようにと教えられました。しかしヘロデの代わりが息子アルケラオになりましたので、彼等はその危険を避けるようにガリラヤのナザレへ行って、そこでイエスを無事に育ました。

 

【イスラエルの出エジプト】

ちょっと逆説的ですが、マリアとヨセフがイエスを守る為にエジプトへ避難した時、彼等は敵の領地に入りました。皆さんが覚えていらっしゃると思いますが、主の御降誕の何百年前にイスラエルの民がエジプトで奴隷になり、重労働をさせられました。そして、イスラエルの神が御自分の民の苦難を顧みて、モーセを通して彼等を自由にして下さいました。力強い徴をエジプトの王ファラオに見せて、敵の領地エジプトから解放され、約束の地カナンまで導かれました。

 

【主イエスは罪の世界を解放するために】

救い主であるイエス・キリストは敵の領地に入りましたが、その敵の領地はエジプトだけではありませんでした。実は、この危険、また残酷な世に生まれると主は敵の領地に入り、私達と共に宿られました。主は始めから、生まれたばかりの赤ちゃんの時から悪に直面したのです。

 

しかし、天の父なる神はイエスが私達の贖いになる時まで御子を見守って下さいました。御自分の十字架の死を通して私達を罪から救う時まで、主守られました。主イエスは私達の為に敵の領地に入ったのでクリスマスは速く終わらなければなりませんでした。

 

【罪の贖いとして捧げられた神の子羊イエス】

全世界の救い主になる赤ちゃんイエス・キリストは敵の領地に入りました。そして、その赤ちゃんを通して私達は神の防備のない愛をはっきりと見る事が出来たのです。神はこの世に入った時、力と武器を持っていらっしゃいませんでした。却って、小さな赤ちゃんの姿を通して、世に下って下さいました。なぜなら、強制と武器を通していらっしゃったら、私達を外面的に征服させる事が出来ましたが、主は何よりも私達の心を御自分の愛と犠牲を通して変革したかったのです。その故に無邪気な、傷つきやすい赤ちゃんイエスを私達に送りました。そして、その同じイエスは大きくなると、武器を持って敵と戦いませんでした。実は主は、私達の永遠の救いの為に自ら進んで御自分の命を捨てられたのです。

 

聖餐式】

たちは間もなく聖餐式にあずかろうとします。聖餐式に私達の為の主イエス・キリストの十字架の贖い死を覚え、記念します。主イエスが罪の故私達が受けるべき罰を御自分の身に受けたのです。預言者イザヤの言葉通りに、

「彼が担ったのは私たちの病、彼が負ったのは私たちの痛みであったのに、私たちは思っていた、神の手にかかり、打たれたから彼は苦しんでいるのだ、と。彼が刺し貫かれたのは、私たちの背きのためであり、彼が打ち砕かれたのは、私たちの咎のためであった。彼の受けた懲らしめによって、私たちに平和が与えられ、彼の受けた傷によって、私たちは癒された。」(イザヤ書534−6)

 

その為に私達の救い主、主イエス・キリストは敵の領地に入り、数え切れない侮辱を受け、その為に御自分の命を犠牲にしたのです。そして、その為に御自分の敵であった私たちを友と変えて下さいました。主イエス・キリストが私たちの為にクリスマスに来て下さった事を思い起こしながら、聖餐にあずかりたいと思います。(おわり)

2009年12月27日 | カテゴリー: マタイによる福音書 , 新約聖書

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