2021年12月19日「喜びにあふれる出来事」

＜説教要約＞　マタイによる福音書2章1-15節「喜びにあふれる出来事」

クリスマスおめでとうございます。
今年一年、世の中ではいろんなことがあり、また皆様の日常にもいろんなことがあったことと思います。
しかしそういう中で、今年も皆様と共に、イエス・キリストのご降誕を覚え、礼拝を献げられることを感謝します。
今朝は、マタイによる福音書2章1～12節、占星術の学者たちが星に導かれて、イエス誕生の場に駆け付けた記事から、クリスマスの喜びをご一緒に味わいたいと思います。

2:1 aイエスは、ヘロデ王の時代にユダヤのベツレヘムでお生まれになった。
「ヘロデ王の時代に」とありますが、これはヘロデ大王のことす。彼は紀元前37年から33年間、ユダヤを治めた人物です。彼はローマに取り入ってこの地位を得た人物で、ユダヤ人ではありませんでした。ですから、ユダヤ人の支持を得ようと、エルサレム神殿の建設やサマリヤの再建などに取り組み、何とかその地位を守ろうとしました。また、王としての正統性を得るためにユダヤでは名門であるハスモン家の王女マリアンメと結婚しました。
しかし晩年は、王の地位への執着と猜疑心から、自分の妻子まで処刑するという凶行に及びました。
ですから、占星術の学者たちが東の方からエルサレムに来て、「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。わたしたちは東方でその方の星を見たので、拝みに来たのです。」と言われた時、内心気が気ではありませんでした。
ヘロデ王はこの言葉に不安を抱きました。それは、自分の地位が脅かされることへの不安でした。
また、「エルサレムの人々も皆、同様であった。」とあります。
エルサレムの人々は、王の凶行を知っていましたので、このニュースによって、自分たちにまで害が及ぶのではないかと、恐れたのです。

では、学者たちはどうでしょうか？
彼らはどこから来たのでしょうか。聖書には「東の方から」と記されていますが、はっきりしたことは分かりません。しかし、占星術が盛んで、東方でこの星を見た、ということなので、アッシリア、バビロン、あるいはベルシャあたりからやってきたのではないかと考えられています。これらの地は、かつてユダヤの人々が捕囚として連れていかれた場所です。ですから、「メシア、ユダヤ人の王が誕生する」という旧約預言について、知識を持った人が多くいたのです。
そういう中で、不思議な星を見つけた学者たちは、星の出現と、ユダヤ人の王・メシアの誕生を結び付けて考えました。そして彼らは、ユダヤ人の王・メシアを拝むため、礼拝するために、はるばるユダヤまで行くことにしたのです。これは、彼らの信仰、と言い換えることのできる事柄です。

ヘロデ王は学者たちの話を聞いて、すぐにユダヤ教の知識人である祭司長や律法学者たちを集めました。
そして、ユダヤ人の王、メシアが生まれることになっている場所を問いただしました。
すると彼らは、すぐに、それが「ユダヤのベツレヘム」であると、旧約聖書ミカ書の預言から答えたのです。
この話を聞いてから、ヘロデは学者たちを呼び寄せて、
2:8 「行って、その子のことを詳しく調べ、見つかったら知らせてくれ。わたしも行って拝もう」と言ってベツレヘムへ送り出しましたが、王は、生まれた子どもを亡き者にしようと考えていたのです。

学者たちが宮殿を出て、空を見上げると、
2:9 彼らが王の言葉を聞いて出かけると、東方で見た星が先立って進み、ついに幼子のいる場所の上に止まった。とあります。本当に、星が導いたのか、あるいは彼らにはそう見えたのかはわかりません。
とにかく、神の導きによって彼らは、ついに幼子を探し当てることができました。
学者たちは、星に導かれ、幼子を探し当て、その方を礼拝することができました。
彼らは「喜びにあふれた」とあります。彼らは苦労して、長い旅路の末にとうとう、この場所へとたどり着いたのです。ですが、自分たちの苦労以上に、心は大きな大きな喜びに満たされたのです。
彼らはひれ伏して幼子を拝みました。つまり、幼子イエスを礼拝したのです。そして献げ物をしました。「黄金、乳香、没薬を贈り物として献げた」。これらは、まさに王様に贈るような高価な品物です。
こうして外国人であるこの人たちが、生まれたばかりのイエスを礼拝したのです。
これは異邦人による最初のキリスト教礼拝といえるでしょう。しかし、外国人であるこの人たちがまず、キリストを礼拝したことは、偶然の出来事ではありません。この先の福音宣教の道筋を指し示す出来事です。

ところで、皆様は最近、星空を見上げたことがありますか？
私は先週金曜日の夜、星空を見上げる機会がありました。その時に、ヨブ記の言葉が心に浮かびました。
ヨブ記9：9-11
9:9 神は北斗やオリオンを／すばるや、南の星座を造られた。
9:10 神は計り難く大きな業を／数知れぬ不思議な業を成し遂げられる。
9:11 神がそばを通られてもわたしは気づかず／過ぎ行かれてもそれと悟らない。
天地万物を創られた神、その神のなさること、神の御業は、私たちにの理解を超えています。
そして、神が近くにおられても、私たちは気づかず、わかりません。

では、私たちは神を知ることができないのでしょうか？　確かに、神は目で見ることができないし、手で触ることもできません。
しかし、クリスマスの夜に、人としてお生まれになったメシア、救い主・イエス・キリストを通して、私たちは神を知ることができます。
東方の学者たちは、この方に会うこと、この方を礼拝することを願い、遠く旅してイエスのもとへとやってきました。そして、メシア・キリストを礼拝し大きな喜びを手にしたのです。

今日の話では、この世の王座、利権を守るために御子を殺そうとしたヘロデ王。
知識があっても、そこへ行こうとしなかったユダヤ教指導者たち。
そして、エルサレムの民衆は、自分たちの安全、生活を守ることを優先し、御子のもとへ行くことをしませんでした。
結果、彼らは、御子を礼拝する機会を失い、喜びの礼拝に与ることができなかったのです。

では、私たちはどうでしょうか？
もし、御子に目を向けるよりも、自分の生活、自分の人生を優先しているなら、わたしたちもまた、エルサレムの民衆と同じです。
ですから、このクリスマスの時に、私たちももう一度自分の信仰の歩みを問い直し、クリスマスの星、御子・キリストにしっかり目を向け、この方を礼拝する喜びに立ち返ろうではありませんか。
イエス・キリストを通して、まことの神に近づき、神と共に歩もうではありませんか。
そのような歩みにおいてこそ、わたしたちもまた、自分の人生において、まことの喜びを手にすることができるのです。
ヨハネ福音書を記したヨハネは、御子の誕生をこのように記しています。

ヨハネ1：16-18　
1:16わたしたちは皆、この方の満ちあふれる豊かさの中から、恵みの上に、更に恵みを受けた。
1:17 律法はモーセを通して与えられたが、恵みと真理はイエス・キリストを通して現れたからである。
1:18 いまだかつて、神を見た者はいない。父のふところにいる独り子である神、この方が神を示されたのである。