2025年12月07日「用意して待つ」

＜説教要約＞待降節第Ⅱ主日　マタイ25章１－節　用意して待つ

25:1 「そこで、天の国は次のようにたとえられる。十人のおとめがそれぞれともし火を持って、花婿を迎えに出て行く」。ここに「天の国は次のようにたとえられる」とありますが、「天の国」とは、キリストが再臨されて完成する「神の国」のことで、再臨のキリストを待つキリスト者の姿勢について。あるいは、クリスチャンが自分の地上生涯の終わりを見据えて生きる姿勢、ということでもあります。

主人公は十人のおとめです。「十人のおとめがそれぞれともし火を持って、花婿を迎えに出て行く。」とありますが、十カップルの合同結婚式の話しではありません。十人のおとめは、花嫁ではなく、花嫁の友人。今で言うならブライズメイド、結婚式の準備をする花嫁を助けたり、式の立会人としての役割を担ったりする十人です。
当時のユダヤの結婚事情について説明しますと、結婚の手続きは通常こんな風に進められたようです。
まず、それぞれの両親が子どもを結婚させる約束をするのが最初です。両親の間で結婚の約束が決まると、法律上は正式な夫婦として扱われます。しかし結婚生活は始まりません。マリアが聖霊によって身ごもったのは、ちょうどこのような時でした。（マタイ1：18参照）
それから1年くらい後に、いよいよ結婚式となります。親せきや地域の人々を招いて結婚のお披露目の席、宴席を設け、その後結婚生活がスタートします。今日の話は、この最後の段階、盛大な結婚式直前の話です。

十人のおとめは、十人の花嫁ではなく、花嫁の友人、付添人で、花婿の到着を待って、花婿を迎え入れ、そして盛大な宴席が始まるのです。
当時の宴席は夕方から始まるのが通常だったので、ともし火、ランプの用意は必須でした。ところが、この日は何か特別な事情で花婿の到着が遅れました。6節を見ると花婿の到着は「真夜中」になったようです。
十人のおとめは、待ちきれなくて眠り込んでしまいました。十人のおとめはみな、ともし火、ランプの用意はしていました。そして、少なくともそれには十分な油を入れていたはずです。しかし五人のおとめはさらに、ツボに予備の油の用意をしていたのです。

ここでは、十人ともみな眠り込んでしまったので、眠り込んだことが問題ではないことがわかります。真夜中に花婿が到着し、問題がクローズアップされます。
25:67真夜中に『花婿だ。迎えに出なさい』と叫ぶ声がした。そこで、おとめたちは皆起きて、それぞれのともし火を整えた。
花婿の到着が予想以上に遅れ、十人のランプは消えかかっていました。ツボに油を用意していたおとめは油をランプに入れて、明かりを整えました。しかし予備の油を用意していなかったおとめは、ランプが消えかかって焦って言いました。
25:8 愚かなおとめたちは、賢いおとめたちに言った。『油を分けてください。わたしたちのともし火は消えそうです。』すると返ってきた答えは9節。
25:9 賢いおとめたちは答えた。『分けてあげるほどはありません。それより、店に行って、自分の分を買って来なさい。』
真夜中に店が開いているのかしら？　と思いますが、お祝いのときには遅い時間でも店を開けてくれることがあるそうです。賢いおとめたち、ちょっと冷たいなあとも思いますが、でも全員のランプが宴席の最中に消えてしまったら、その方が困ります。そして10節。
25:10 愚かなおとめたちが買いに行っている間に、花婿が到着して、用意のできている五人は、花婿と一緒に婚宴の席に入り、戸が閉められた。
ある注解書には、妨害者が入り込むのを防ぐため〈戸がしめられ〉鍵もかけられる、とありました。締め出された5人は、油を買って戻ってきて『御主人様、御主人様、開けてください』と叫びましたが、主人の答えは、『はっきり言っておく。わたしはお前たちを知らない』というものでした。この話の結論は13節。
25:13 だから、目を覚ましていなさい。あなたがたは、その日、その時を知らないのだから。」

このたとえからイエス様は何を教えようとしているのでしょうか。花婿はキリスト、ともし火はイエス・キリストを信じる信仰、油は信仰を支える聖霊。十人のおとめは、花婿であるキリストを待つ教会、あるいはキリストの来臨を待つキリスト者と考えると内容が見えてきます。
そしてイエス様がここで求めておられる「賢さ」とは、キリストの再臨が予想外に遅くなっても、あるいは早まったとしても、慌てなくて済むよう備えていること、用意していることです。
神の国への扉は一たん閉じられたら、開くことはないので、開かれているうちに入らなければならない。これは、キリストを信じるタイミングのことでもあります。私たちは、地上の命がある間に、地上で罪を悔い改めて神を見上げ、イエス・キリストの十字架と復活を信じ、従う歩みを始めなければ、救いのタイミングを失うことになることを、覚えたいと思います。

もう少し、この話の中での「賢さ」と「愚かさ」について考えたいと思います。
このたとえでは、ランプの「油」を用意していたか、していなかったかが問題になっています。
ここで「油」は「聖霊」のこと、「聖霊」が「油」にたとえられています。
そのことを理解してもう一度8節をみましょう。
25:8「油を分けてください。わたしたちのともし火は消えそうです。」という言葉ですが、油つまり「聖霊」は、人から分けてもらえるものではありません。
「聖霊」はキリストの霊であり、神からの賜物ですから、求める先が間違っています。
イザヤ55:1－3を読みます。渇きを覚えている者は皆、水のところに来るがよい。銀を持たない者も来るがよい。穀物を求めて、食べよ。来て、銀を払うことなく穀物を求め／価(あたい)を払うことなく、ぶどう酒と乳を得よ。なぜ、糧にならぬもののために銀を量って払い／飢えを満たさぬもののために労するのか。わたしに聞き従えば／良いものを食べることができる。あなたたちの魂はその豊かさを楽しむであろう。 耳を傾けて聞き、わたしのもとに来るがよい。聞き従って、魂に命を得よ。わたしはあなたたちととこしえの契約を結ぶ。ダビデに約束した真実の慈しみのゆえに。

ここで油を用意しておくとは、「わたしのもとに来るがよい。聞き従って、魂に命を得よ。」という神の招きに応じること。応じ続けることです。神のことばに従って、聖霊の恵みの中で一日、一日を歩んでいることが、用意しておくこと。用意ができているという状態です。そしてこの用意は、人頼みにはできません。各自がしなければならない用意です。その決断と実行は、他の人が変わることはできません。まして「神に従って生きる」のはの当人の生き方の問題です。まことの神を信じるのか、否か。信仰をもって、神に目を向けて、聖霊の恵みの中歩むのか、否か。この決断と選択は当人にしかできないということをしっかり胸に刻みたいと思います。
アドベントのこのとき、私たちは、それぞれに必要な用意を見定め、整えて、キリストの再臨を待ちたいと思います。