2020年09月06日「祝福にあずからせるため」
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祝福にあずからせるため
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- 木村恭子 牧師
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使徒言行録 3章22節~26節
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聖書の言葉
モーセは言いました。『あなたがたの神である主は、あなたがたの同胞の中から、わたしのような預言者をあなたがたのために立てられる。彼が語りかけることには、何でも聞き従え。この預言者に耳を傾けない者は皆、民の中から滅ぼし絶やされる。』預言者は皆、サムエルをはじめその後に預言した者も、今の時について告げています。あなたがたは預言者の子孫であり、神があなたがたの先祖と結ばれた契約の子です。『地上のすべての民族は、あなたから生まれる者によって祝福を受ける』と、神はアブラハムに言われました。それで、神は御自分の僕を立て、まず、あなたがたのもとに遣わしてくださったのです。それは、あなたがた一人一人を悪から離れさせ、その祝福にあずからせるためでした。」日本聖書協会『聖書 新共同訳』
使徒言行録 3章22節~26節
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<説教要約>
使徒言行録3章22-26節 (新約 P218)
説教 「祝福に与らせるため」
今朝の話は、神殿でのペトロの説教の最後の部分、まとめになります。旧約聖書の知識がないと理解するのが難しいところでもあるので、旧約聖書からの説明が多くなります。ですが、旧約聖書から神の壮大な救いの計画を知ることで、今私に与えられている神の愛と神の恵みを深く理解することができる。そういう箇所でもありますから、少しずつ理解を深めていきたいと思います。
今日の箇所、ペトロの説教には3人の人物の名前が登場します。この3人は旧約聖書に登場し、神の救いのご計画の中で用いられた重要人物です。
ですから当然ながらユダヤ人たちは彼らのことをよ~く知っています。ペトロの話に登場する順番で言えば、モーセ、サムエル、アブラハムですが、年代順に言うとアブラハム、モーセ、サムエルの順番で旧約聖書に登場します。ペトロの説教に沿って、少しずつ見ていきましょう。
まず、22-23節にモーセが登場します。22-23節読みます。
モーセは言いました。『あなたがたの神である主は、あなたがたの同胞の中から、わたしのような預言者をあなたがたのために立てられる。彼が語りかけることには、何でも聞き従え。この預言者に耳を傾けない者は皆、民の中から滅ぼし絶やされる。』
モーセは旧約聖書に登場する重要人物です。
モーセはイスラエルの人々がエジプトで奴隷として苦しめられていた時、彼らをエジプトから脱出させ、神が約束されたカナンの地へと導くために神が選んだ指導者です。
旧約聖書の出エジプト記からレビ記、民数記、申命記あたりに、モーセについての記述があります。
22-23節は申命記18章15節の引用です。
申命記は、モーセに導かれたイスラエルの民が、40年の荒野の放浪を終えて、いよいよ神が約束された土地に入っていくという時。その直前にモーセが語った説教集です。18章15節は、モーセが神の約束をイスラエルの人々に語った言葉です。
「あなたの神、主はあなたの中から、あなたの同胞の中から、わたしのような預言者を立てられる。あなたたちは彼に聞き従わねばならない。」(申命記18:15)
モーセは神に選ばれイスラエルの人々に遣わされた指導者であり、神に託された神のことばを人々に告げる預言者でもありました。
モーセは神と人との間に立って、人々に神のことば、神の意志を取り次ぐ働きをしました。
モーセは、神に背を向け偶像に走った人々のために、神に執り成しをした人物でもあります。
神は、もう一度そういう人物をイスラエルの人々に与えると約束しておられたのです。それも、同胞であるイスラエル人の中から。さらに神は、その人の語ることに従うように、とも言われていました。
ペトロはさらに言葉を重ね、『この預言者に耳を傾けない者は皆、民の中から滅ぼし絶やされる。』(使徒3:23)と語ります。
ペトロはここで、神がモーセを通して約束しておられた「わたしのような預言者」とは、イエス・キリストのことだ、と言っているのです。
イエス・キリストは、神から遣わされた方であり、人々を罪の奴隷状態から解放し、神の恵みの中へと導き入れてくださる方です。イエス・キリストはご自身のことばと行いを通して、人々に神を示された方です。イエス・キリストは、神に背を向けた人々のために、ご自身を犠牲として関係の回復、執成しをなさいました。ですから、このイエスこそ、神が約束しておられた「モーセのような預言者だ」とペトロは教えているのです。
24節では、サムエルという預言者が登場します。サムエルはイスラエルが王国になってから最初の預言者です。というよりは、王国になるときに、王を選ぶために遣わされた預言者です。サムエルは神の言葉に従って、サウルに油を注ぎ、またダビデに油を注いで王とした預言者です。サムエルの後、神はイスラエルに次々と預言者を与えます。彼らはその時々に、神からの言葉を人々に取り次ぎますが、その中心は「今の時について」つまり、イエス・キリストの誕生、十字架の死、復活、昇天という救いの業が成し遂げられた今の時のことを告げていたのだ、とペトロは教えています。
25節では、時代がさかのぼり、アブラハムが登場します。25節は、「アブラハム契約」と言われる神の約束です。アブラハム契約は創世記に何回か記されていますが、ペトロは創世記22章18節を引用しています。「地上の諸国民はすべて、あなたの子孫によって祝福を得る。あなたがわたしの声に聞き従ったからである。」(創世記22:18) です。
ペトロはここで、ユダヤ人たちに、神が約束されたアブラハムの子孫。その方によってすべての民が祝福を受ける方とは、イエス・キリストのことだと教えているのです。
26節がペトロの説教の結論です。
「神はご自分の僕を立て」とは、「神はご自身の御子イエスを僕(奴隷)以上の苦しみ(十字架の死)に渡されたが、そのイエスを復活させられた」ということ。ここで使われている「立て」と訳されているギリシャ語は復活までの意味を含む言葉です。イエスは復活し天に昇り、今神のもとで私たちのために執り成しておられますが、それは私たちがイエス・キリストを通して神の祝福に与るためだと教えているのです。神がイスラエルに与えられた救いの約束が、イエス・キリストによって実現したと語っているのです。この救いを神はイスラエル民族を用いて実現なさいました。ですから、ペトロは、イスラエルの人々がまずイエス・キリストを信じ受け入れて、祝福にあずかることを願っているのです。
ですが、この約束はイスラエル民族だけに与えられたものではありません。「地上の諸国民はすべて、あなたの子孫によって祝福を得る」(創世記22:18)というのが約束の言葉ですから、最初からすべての民が祝福の約束に含まれていたのです。この神の約束の実現は、イエス・キリストの福音として全世界に広がっていきます。ですから「悔い改めて神に立ち帰りなさい」という招きの言葉は、ここでペトロの説教を聞いているイスラエルの人たちだけでなく、今朝、この説教を聞いている私たちに語られている勧めの言葉でもあります。長い長い歴史の中で神が生きて働かれ、多くの預言者や福音宣教者の口を通して語られ、私たちにまで届けられたキリストの福音。これは私たちも神の祝福にあずかるためなのです。今朝、神はペトロの口を通して、またこのメッセージを通して、あなたに語っています。神のもとに立ち帰り、その恵みの中で生きるようにと。
また神は、旧約の歴史の中でイスラエルの民に約束を与え、それを実現し、御子キリストによって救いの道を完成なさいましたが、神の働きはそれで終わりではありません。今も同じように、現実の中で生きて働いておられて、私たちを救いの祝福の中へ、具体的に招き入れてくださるのです。
私の歩みに目を止め、祝福してくださる真の神に、私たちも目を向け、感謝をもって従っていきたいと思います。