おもだった人を選ぶ
- 日付
- 説教
- 木村恭子 牧師
- 聖書 マルコによる福音書 3章13節~19
イエスが山に登って、これと思う人々を呼び寄せられると、彼らはそばに集まって来た。
そこで、十二人を任命し、使徒と名付けられた。彼らを自分のそばに置くため、また、派遣して宣教させ、悪霊を追い出す権能を持たせる ためであった。
こうして十二人を任命された。シモンにはペトロという名を付けられた。
ゼベダイの子ヤコブとヤコブの兄弟ヨハネ、この二人にはボアネルゲス、すなわち、「雷の子ら」という名を付けられた。
アンデレ、フィリポ、バルトロマイ、マタイ、トマス、アルファイの子ヤコブ、タダイ、熱心党のシモン、
それに、イスカリオテのユダ。このユダがイエスを裏切ったのである。日本聖書協会『聖書 新共同訳』
マルコによる福音書 3章13節~19
<説教要約>2024年10月13日 マルコ3:13-19 ⑮「 おもだった人を選ぶ 」
今朝は、福音書からイエス様が12人を選ぶという箇所を学びます。ここからまず私たちが覚えたいことは、イエス様が、神が、人を選ばれるということです。
イエス様が十二人を選ぶ記事は、マタイ、マルコ、ルカ福音書(共観福音書と言います)3つの福音書に記されています。それぞれの記述は短いのですが、3つの福音書を合わせて読むと情報量が増えます。また、書き方に違いもあるので比較しながら考えたいと思います。
マルコ福音書では「イエスが山に登って、これと思う人々を呼び寄せられた」とありますが、
ルカ福音書によれば「イエスは祈るために山に行き、神に祈って夜を明かされた。 朝になると弟子たちを呼び集めた。」です。マタイ福音書では場所が特定できません。
また、ルカ福音書から、イエス様は12人を呼ぶ前に、山の上で一晩中祈られたことがわかります。祈りの中で、父なる神と一晩中対話され、イエス様は選ぶべき12人を定められたのです。
12人の中にイスカリオテのユダの名があります。このことから、イエス様はこの時点ですでに、御自身の使命、十字架にかかって死ぬことを理解し、受け入れていたと考えられます。
また誰を選ぶかという以上に、イエス様は、選ぼうとしている一人一人のために、深く祈られたはずです。
また、イエス様がその場に呼んだ人の数ですが、お呼びになったのは12人だけだったのか、あるいは12人以上の弟子を呼んで、その中から12人を選んだのかは、3福音書の書き方はまちまちです。
しかし、3つの福音書が共通して語っていることがあります。それは選ばれた12人は、自主的に自分から申し出て使徒の働きを引き受けたのではなく、イエス様がお選びになったという点です。
イエス様が御自身のお考え、ご計画の中で12人を選び、使徒という働きをゆだねられたのです。また、イエス様に指名されたとき、全員が進んで引き受けよう思ったのでしょうか。指名されたけれど、果たして自分でいいんだろうかと思った人もいたかもしれません。
それでも、イエス様の深いお考えの中で、ことが進んでいくということを、覚えたいと思うのです。
では、12人は何のために選ばれたのか、彼らに託された働きは何だったのでしょうか?
この点に関しては、マルコ福音書が一番詳しく記しています。14節後半から15節。
「彼らを自分のそばに置くため、また、派遣して宣教させ、悪霊を追い出す権能を持たせるため」とあります。彼らに求められた働きをもう少し詳しく見ていきましょう。働きは3つです。
(1)彼らを自分のそばに置くため ⇒ これは、12人をご自分のそばにおいて、自ら教え導き、訓練するため、と思いますよね。もちろんそういう目的もあったはずです。ですが12人は、イエス様のおそばにいることで、どんな経験をしたのでしょうか? 彼らは、イエス様が共にいてくださることの安心、平安、つまりインマヌエル、主が共におられる、という貴重な体験をすることになるのです。
(2)派遣して宣教させるため ⇒ 「神の国の福音を広く告げ広める」という働きを彼らに託すため。
イエス様は、この先ずっと彼らと共にいることができない、ということをご存知でした。
御自分の十字架と死、復活、昇天までを視野に入れて、12使徒を選ぶということをなさったのです。
(3)悪霊を追い出す権能を持たせるため
三番目は「悪霊を追い出す権能を持たせるため」です。
「悪霊を追い出す」とは、神の支配がすでに始まっている、ということを表すしるしです。悪霊に付かれて苦しんでいた人が、苦しみから解放され、穏やかに生きることができるようになる。これは、悪霊の支配から神の恵みの支配へと移されるということです。
さらに、福音書には記されていませんが、もう一つ大切な働きがあります。それは、彼らがイエス様のおそばにいて、イエス様のなさったこと、教えられたことの証人となるためです。彼らの発言は、後々聖書をまとめる際の大切な証言、資料となりました。またこの中には福音書を書いた者もいます。
では、この12人はどんな人物だったのでしょうか? イエス様が12人を選ぶ基準は何だったのでしょうか? 3章の16節の後半から19節までに12使徒のリストがありますが、名前の他は、ほとんど記されていません。ですが、ここで明らかなこと、大切なことは、先ほども言いましたが、イエス様が「十二人を任命された」ということです。選んだ基準は私たちにはわかりません。このメンバーにイエス様を裏切ったユダがいるのも解せません。私たち人間の目には、イエス様が12人を選んだ理由、基準はわかりません。しかし、イエス様の側には、神の側には、ご計画があり、必然があるのです。
そして、始めに私たちの教会では、長老1名、執事2名を選ぼうとしている、というとお話ししました。
教会役員を選ぶことは、今日の箇所からの応用問題です。
教会の働きに神が選び、召される。これはイエス様の時代も、今も変わりありません。ですが今の時代、どのようにして神の選びを知ることができるでしょうか。
私たちの教派では、このように考えます。
神の選び、任命は「良心の内的なあかし、教会員による明白な認可、教会会議による判定」を通して明らかにされる、と。
「良心の内的なあかし」とは、祈りを通して与えられる本人の自覚、意思決定です。祈りを通して、自分の思いがどのように導かれていくか、それを自分で見極めることが重要です。ですが、自分の思いだけでは十分ではありません。
「教会員による明白な認可」は、教会員がこの人に役員として働いてほしいという願いで、これは役員選挙によってあらわされます。
さらに「教会会議による判定」、教会の役員であれば小会会議での決議のことです。
今の時代、私たちは直接神の声を聞くことはできません。
ですから、このような3段階を経て、神の御心、神の御意思を確認することができます。
そのことを覚えながら、1月の会員総会での役員選挙を覚えて、祈りを重ねましょう。
ところで、12使徒の中でイスカリオテのユダに関しては、9節後半に「イエスを裏切ったのである。」とあります。では何故イエス様はユダを使徒に任命したのか?
ユダの裏切りに関して聖書は多くを語りませんがヨハネ福音書にこのような記述があります。
ヨハネ 13:2「 夕食のときであった。既に悪魔は、イスカリオテのシモンの子ユダに、イエスを裏切る考えを抱かせていた。」
ユダが使徒に加えられた理由についてはいろいろ考えさせられますが、聖書には記されていませんので、詮索するのは無駄でしょう。しかし、この個所を他人事として読むのではなく、「私たちもユダと同じように、サタンに付け入られる弱さを持つ罪人である」ということを覚えたいと思います。
イエス様を裏切らないためには、イエス様から離れないためには、毎週の礼拝で、罪の悔い改めと、赦しの宣言をいただきながら、共に神の国の歩みを進めてゆくこと、これしかありませんし、これさえあれば大丈夫です。