2023年08月06日「決められた道を走りとおす」

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決められた道を走りとおす

日付
説教
木村恭子 牧師
聖書
使徒言行録 20章13節~24節

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聖句のアイコン聖書の言葉

さて、わたしたちは先に船に乗り込み、アソスに向けて船出した。パウロをそこから乗船させる予定であった。これは、パウロ自身が徒歩で旅行するつもりで、そう指示しておいたからである。アソスでパウロと落ち合ったので、わたしたちは彼を船に乗せてミティレネに着いた。翌日、そこを船出し、キオス島の沖を過ぎ、その次の日サモス島に寄港し、更にその翌日にはミレトスに到着した。パウロは、アジア州で時を費やさないように、エフェソには寄らないで航海することに決めていたからである。できれば五旬祭にはエルサレムに着いていたかったので、旅を急いだのである。
パウロはミレトスからエフェソに人をやって、教会の長老たちを呼び寄せた。長老たちが集まって来たとき、パウロはこう話した。「アジア州に来た最初の日以来、わたしがあなたがたと共にどのように過ごしてきたかは、よくご存じです。すなわち、自分を全く取るに足りない者と思い、涙を流しながら、また、ユダヤ人の数々の陰謀によってこの身にふりかかってきた試練に遭いながらも、主にお仕えしてきました。役に立つことは一つ残らず、公衆の面前でも方々の家でも、あなたがたに伝え、また教えてきました。神に対する悔い改めと、わたしたちの主イエスに対する信仰とを、ユダヤ人にもギリシア人にも力強く証ししてきたのです。
そして今、わたしは、“霊”に促されてエルサレムに行きます。そこでどんなことがこの身に起こるか、何も分かりません。ただ、投獄と苦難とがわたしを待ち受けているということだけは、聖霊がどこの町でもはっきり告げてくださっています。しかし、自分の決められた道を走りとおし、また、主イエスからいただいた、神の恵みの福音を力強く証しするという任務を果たすことができさえすれば、この命すら決して惜しいとは思いません。そして今、あなたがたが皆もう二度とわたしの顔を見ることがないとわたしには分かっています。わたしは、あなたがたの間を巡回して御国を宣べ伝えたのです。
だから、特に今日はっきり言います。だれの血についても、わたしには責任がありません。わたしは、神の御計画をすべて、ひるむことなくあなたがたに伝えたからです。日本聖書協会『聖書 新共同訳』
使徒言行録 20章13節~24節

原稿のアイコンメッセージ

<説教要約> 使徒言行録20章13-24、 説教題「決められた道を走りとおす」
今朝は使徒言行録、20章13節から27節まで、中心は17~27節です。
13-16節は、トロアスを出発した後のパウロたちの足取りが記されています。一行は船で、またパウロだけは徒歩でアソスという町に向かいました。アソスからはパウロ一緒に乗船してミレトスに向かいました。
途中エフェソに立ち寄ることを避けたパウロですが、しかしエフェソ教会のことは心にかけていました。それで、エフェソの長老たちをミレトスに呼び寄せて話をしたのです。それが18節から20章の終わりまで続くパウロのメッセージです。今日はメッセージの前半部分27節までを見ておきます。

まず、18節から21節。パウロはここで、今までの自分の歩み、伝道の姿勢を振り返って語っています。この振り返りは、エフェソ伝道だけでなく、これまでのパウロの伝道の総括として読んでもいいでしょう。
福音宣教者としてのパウロの生活は、ファリサイ派ユダヤ教徒の時とは全く異なるもの、というよりは正反対。「謙遜」「涙」そして「試練」に耐える日々の連続でした。
行き先が定まらず、あちこちさまよった日々。多くの迫害。ヨーロッパに渡ってからは、行く先々のユダヤ教会堂でユダヤ教徒たちからの嫌がらせや迫害を受けました。鞭打たれ、投獄されたこと。暴動に巻き込まれたこともありました。しかし、パウロはそれでも福音宣教の働きをあきらめませんでした。復活のキリストから賜った「異邦人伝道」という使命を覚え続けました。
パウロは20節でこう語っています。「役に立つことは一つ残らず、公衆の面前でも方々の家でも、あなたがたに伝え、また教えてきました。」
「役に立つこと」とは、何か生活のために「役に立つこと」という意味ではありません。信仰のため、救いのために役立つこと、益になること。それをひとつ残らずあなた方に教えたというのです。
この言葉を言い換えているのが21節。パウロはここで、信仰のため、救いのために益となることを「神に対する悔い改めと、主イエスに対する信仰」という言葉でまとめています。ここ、重要です。
私たち信仰者にとって大切なのは「日々の悔い改めと主イエスを信じる信仰」です。
「悔い改め」というとき、まことの神へ立ち帰り、神と共に歩む姿勢。神に喜ばれるように歩むべく、日々自分の生活を振り返って罪を赦していただき、また神に立ち帰る歩み。
「信仰」は、主イエスの十字架と復活を信じるということですが、主イエスの十字架と復活は、「神が私を愛しておられる」という証です。十字架を通して示された神の愛が、私に注がれていることを信じること。
私が神に愛され、愛と恵みの中にあることを信じ、日々確認することです。
パウロはここまでの歩みを振り返るの中で、福音宣教者としての責任を果たすことができたこと、又自分の思いや計画以上のことを、神がご自身の計画によって成し遂げてくださったと感謝しています。

22節から25節は、この先のエルサレム行きについてです。
パウロはエルサレム行きの計画が、さらに困難な道であると理解しています。更なる試練が予感される中で、しかしパウロの願いは「自分の決められた道を走りとおし、主イエスからいただいた,神の恵みの福音を力強く証しする任務を果たすこと」と語ります。
パウロは「走る」というたとえをよく用いますが、長距離を走り続けることはなかなか難しい。
実は私は、最近あまり走れません。たぶん50メートルも走れないと思います。まして、長距離を走り続け、走りぬくことは無理だなあと思います。ですので、二つのことを心掛けています。

ここでお二人の方の言葉を紹介します。お一人は現在は引退牧師、もうお一人はすでに天に召された牧師です。
「わたしは登山が好きで、よく山に登るのですが、方向さえ間違わなければ、遠回りになったり、距離が長くなったとしても必ず頂上にたどり着きます。大切なことは、向かう方向、目指す方向を間違わないことです。」という言葉。走り続けなくても、とにかく目指すべき方向を見失わないこと、イエスを見上げて歩み続けることが重要なのです。
もう一つは「前に向かって進むこと。一歩進めない時には、半歩でも、1/4歩でも、あるいは這ってでもいいから。何とか前に向かって、キリストに向かって進む、そういう努力が大切ですよ」と。これは私が信仰スランプの時にいただいた言葉です。
要するに、キリストに向かって、神の国を目指して、という方向性と、どのような中でもギブアップしないで進み続けること。そういう歩みと共に、必ず神の助け、支えがあります。パウロを支え続けた主が、私たちの歩みも、必ずゴールまで導いてくださいます。

そして26-27節。パウロは、これがエフェソの教会への最後の言葉になるであろうと考えています。つまり遺言メッセージです。そういう中で彼は「誰の血についてもわたしには責任がありません」と言い切っています。これは責任を放棄する言葉ではありません。エフェソ教会はパウロの働きによってできた協会であっても、すでにパウロの手から離れています。そしてこの先は、エフェソの長老たちに群れを託そうと考えているのです。この後28節からは、長老に対する具体的な教えが語られていますが、ここは次回にいたします。

今日の話から、二つのことを覚えたいと思います。
一つは、人生の区切りでの振り返り、ということです。
私たちの人生は、パウロのように、ここまで変化にとんだ人生ではないかもしれません。それでも、人生の区切り、節目があります。それは今までの歩みが大きな変化を迎えるときです。きっかけは生活環境や家族の変化であったり、自分や家族の病気だったり、老化に伴うことであったり、いろいろです。
今回のパウロの場合は、働きの節目ですが、パウロはその節目で自らの歩みを振り返って、困難や試練がたくさんあったけれど、神の守りと祝福、恵みはそれ以上に豊かであったこと、そういう中で自分が主の業に用いられたことに感謝しているのです。
わたしたちも人生の区切り、転機で、自分の歩みを振り返りましょう。そうすることで、いろんな気づきがあり、神の恵みが見えてくるはずです。

もう一つは、将来のこと、これから先のことについてです。パウロは、聖霊によって投獄と苦難が待ち受けていることを知らされていました。パウロも当然ながら、恐れや不安はあったと思います。
しかし彼は、先のこと。先の不安よりも、今置かれている状況で自分の使命を果たすことに心を集中します。24節「しかし、自分の決められた道を走りとおし、また、主イエスからいただいた、神の恵みの福音を力強く証しするという任務を果たすことができさえすれば、この命すら決して惜しいとは思いません。」
私たちにも先々の不安はいろいろありますよね。でも、それを今から心配し、不安がっていても何にもなりません。それより、今できること、今与えられている課題に目を注ぐことです。
生かされていることに集中し、そこで果たすべき使命、役割に目を注ぐこと、これが神の国へと続く道です。

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