2023年03月05日「教会を力づける旅」
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教会を力づける旅
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- 木村恭子 牧師
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使徒言行録 15章36節~41節
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聖書の言葉
数日の後、パウロはバルナバに言った。「さあ、前に主の言葉を宣べ伝えたすべての町へもう一度行って兄弟たちを訪問し、どのようにしているかを見て来ようではないか。」
バルナバは、マルコと呼ばれるヨハネも連れて行きたいと思った。しかしパウロは、前にパンフィリア州で自分たちから離れ、宣教に一緒に行かなかったような者は、連れて行くべきでないと考えた。
15:39 そこで、意見が激しく衝突し、彼らはついに別行動をとるようになって、バルナバはマルコを連れてキプロス島へ向かって船出したが、一方、パウロはシラスを選び、兄弟たちから主の恵みにゆだねられて、出発した。
そして、シリア州やキリキア州を回って教会を力づけた。
日本聖書協会『聖書 新共同訳』
使徒言行録 15章36節~41節
メッセージ
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<説教要約> 使徒言行録15章36-41節「 教会を力づける旅 」
今日は、使徒言行録に戻ります。今日は15章36節からです。今日の箇所は、パウロが第二回伝道旅行へ出発する、というところです。
36節には、旅の目的が記されています。
目的は、以前訪問し伝道した町の兄弟を訪問することです。自分たちが種まき伝道して、信徒が与えられた町。おそらくその町々には教会ができ始めていたのでしょう。その教会の様子を見に行く、というのが旅の目的です。パウロはいろんな町をめぐって伝道をしていますが、み言葉を語りっぱなしではありません。教会を、信徒を、訪問し手紙を書き、ある時には相談に乗る。そういう風にして常に諸教会、兄弟姉妹の信仰の歩みに配慮して連絡を取り、励ますということを続けます。それらがパウロ書簡として残されて、宛先の教会だけでなく、今も私たちへの配慮、励まし、教えとなっているわけです。
今日の説教題は「教会を力づける旅」としましたが、今回の旅の目的は、出発の時点では
「前に主の言葉を宣べ伝えたすべての町へもう一度行って兄弟たちを訪問し、どのようにしているかを見て来ようではないか。」ということで、そういうパウロの伝道方法がよくわかるのが今日のところです。
36節の出だしは「数日の後」とあります。これはエルサレムでの会議から戻ってから「数日の後」です。厳密に言うなら、旅に出発したのが「数日後」ではなく、そういう計画を話し始めたのが「数日後」だと思います。実は、そう簡単には出発できなかったのです。と言いますのも、この後パウロとバルナバの間でこの後、だれを連れて行くか、人選のことで問題が起きたからです。それが次の37-38節。
15:37 バルナバは、マルコと呼ばれるヨハネも連れて行きたいと思った。
15:38 しかしパウロは、前にパンフィリア州で自分たちから離れ、宣教に一緒に行かなかったような者は、連れて行くべきでないと考えた。
覚えておられるでしょうか? 既に見たのですが、実は第一回伝道旅行の時に、マルコが途中からエルサレムへ戻ってしまった、ということがありました。使徒言行録13章13節です。
使徒言行録13章では、マルコが帰った後、パウロとバルナバはそのまま伝道旅行を続けました。二人がマルコのことをどう考えていたか、その時点ではなにも記されていません。
ですが、それぞれに思うところはあったわけで、それが今日の箇所で意見の対立となったのです。
また、コロサイの信徒への手紙4章10節には「バルナバのいとこマルコが・・・」と記されており、バルナバとは親類関係だったことも分かっています。
また、マルコの母はイエスの弟子で、集会には彼の家がよくつかわれていましたし、イエスの十字架、復活、昇天を知っており、イエスの昇天後に聖霊が降り、エルサレム教会ができていった時期に、青年としてそこにいたのです。ですから、パウロとバルナバが彼の成長を期待して、マルコを伝道旅行に連れて行ったことも納得がいきます。
こういうことを知ったうえで13章13節をもう一度見ると
13:13 パウロとその一行は、パフォスから船出してパンフィリア州のペルゲに来たが、ヨハネは一行と別れてエルサレムに帰ってしまった。なんですね。
なぜマルコ突然帰ってしまったのか。理由が記されていないので、昔からいろんな推測がされています。
しかし、理由はともあれ、とにかくマルコは途中で伝道旅行から落後したということです。パウロもバルナバも、期待が大きかっただけに落胆したはずです。
そして、今日の箇所へとつながります。
パウロとバルナバが第2回伝道旅行に出かけよう!と盛り上がっている中、誰を連れて行こうかと話し合ったときに、真っ先にバルナバが「マルコと呼ばれるヨハネも連れて行きたい」と言い出したので、二人の「意見が激しく衝突した」と記されています。
マルコはバルナバのいとこでもありましたし、バルナバは、マルコが伝道旅行から落後した後も、彼のことをずっと祈っていたのだと思います。そしてもう一度彼に機会を与えたい、という強い思いがあったのでしょう。しかし、パウロはバルナバの意見を受け入れませんでした。
使15:39 そこで、意見が激しく衝突し、彼らはついに別行動をとるようになって、が、・・・。
二人の意見が激しく衝突し、結局意見の一致をみることなく、別行動をとることになりました。喧嘩別れして別々の行動をとったのです。教会的な働きの中で、しかも伝道旅行に行くという大切な問題で、教会の指導的立場にあるパウロとバルナバの意見が対立し、喧嘩別れのようになってしまった。とても残念なことだと思います。ただ、問題が起きたけれど、パウロもバルナバも、それぞれ伝道旅行に出発したのですね。二人は「福音を伝えたい、伝道したい」という点では一致していたのです。こうして、バルナバはマルコを連れて、船でキプロス島へ向かいました。
15:40 一方、パウロはシラスを選び、兄弟たちから主の恵みにゆだねられて、出発した。シラスは、エルサレム会議の結果報告のため、アンティオキア教会に派遣されたエルサレム教会の指導者の一人です。パウロは彼をエルサレムから呼び戻して、第二回伝道旅行に出発したのです。
「兄弟たちから主の恵みにゆだねられて、出発した。」とありますので、今回もアンティオキア教会からの正式な派遣、ということです。
41節には「 そして、シリア州やキリキア州を回って教会を力づけた。」とありますから、出発した時の目的に従って、第一回の伝道旅行で回った町々の教会を訪問して彼らを教え、励ましたのです。
今日の箇所では、パウロの伝道の方法を見ることができました。教会をたて、その教会のために祈り、フォローアップをしていく、というやり方です。教会は神の教会ですが、自然に成長するわけではありません。誕生した群れを覚えて祈り、また常に水を注ぎ、フォローアップしていくことが必要です。
また、今日のところでは、マルコの身勝手な行動のため、バルナバとパウロの仲が悪くなって、働きも別々になったことは、とても残念なことです。しかし、別の見方をするなら、福音宣教の働きが二手に分かれ、広がっていったと考えることもできます。私たちの目にはマイナスと見える事柄も、神がプラスに変えてくださることがあるのです。
起こった出来事を単純化して一面だけでとらえるのではなく、いろんなことを考えながら見ていくことの大切さを覚えます。
また、ここではバルナバがマルコのために祈り、又彼の配慮があって、マルコには名誉挽回の機会が与えられました。彼を見捨てなかったバルナバの祈りとサポートも覚えて、私たちも忍耐強く主の民に、兄弟姉妹にかかわっていきたいと思うのです。
ですが、何よりも、すべてを益としてくださる神の御業を覚えて、神の働きに期待したいと思うのです。
今日の中心聖句は15章40節。「パウロはシラスを選び、兄弟たちから主の恵みにゆだねられて、出発した。」です。