2022年10月23日「約束に従って」
問い合わせ
約束に従って
- 日付
- 説教
- 木村恭子 牧師
- 聖書
使徒言行録 13章16節~25節
音声ファイル
礼拝説教を録音した音声ファイルを公開しています。
聖書の言葉
そこで、パウロは立ち上がり、手で人々を制して言った。「イスラエルの人たち、ならびに神を畏れる方々、聞いてください。この民イスラエルの神は、わたしたちの先祖を選び出し、民がエジプトの地に住んでいる間に、これを強大なものとし、高く上げた御腕をもってそこから導き出してくださいました。神はおよそ四十年の間、荒れ野で彼らの行いを耐え忍び、カナンの地では七つの民族を滅ぼし、その土地を彼らに相続させてくださったのです。これは、約四百五十年にわたることでした。その後、神は預言者サムエルの時代まで、裁く者たちを任命なさいました。後に人々が王を求めたので、神は四十年の間、ベニヤミン族の者で、キシュの子サウルをお与えになり、それからまた、サウルを退けてダビデを王の位につけ、彼について次のように宣言なさいました。『わたしは、エッサイの子でわたしの心に適う者、ダビデを見いだした。彼はわたしの思うところをすべて行う。』神は約束に従って、このダビデの子孫からイスラエルに救い主イエスを送ってくださったのです。
ヨハネは、イエスがおいでになる前に、イスラエルの民全体に悔い改めの洗礼を宣べ伝えました。その生涯を終えようとするとき、ヨハネはこう言いました。『わたしを何者だと思っているのか。わたしは、あなたたちが期待しているような者ではない。その方はわたしの後から来られるが、わたしはその足の履物をお脱がせする値打ちもない。』日本聖書協会『聖書 新共同訳』
使徒言行録 13章16節~25節
メッセージ
関連する説教を探す
<説教要約>使徒言行録13:16-25 「約束に従って」
今日はピシディア州、アンティオキアでのパウロの説教の話です。マルコは離脱しましたが、パウロとバルナバは計画を変えることなく進みました。
ここで二人は、安息日にユダヤ教の会堂での礼拝に出席しました。この時、礼拝に出席したパウロとバルナバに向かって会堂長(シナゴグの責任者)は「兄弟たち、何か会衆のために励ましのお言葉があれば、話してください」と言葉をかけたのです。
会堂長たちは、すでにパウロとバルナバのことを知っていたということでしょうか。
キプロス島に続いて、ここでもパウロが語ります。
16節後半からがパウロの奨励、説教です。説教は41節まで続きます。
実は、この説教、いろんな意味で注目すべき重要な説教です。その理由は、パウロの説教が記されている最初の箇所であり、またユダヤ教の会堂で語られたキリスト教の説教です。さらに、旧約聖書の中心である救いの歴史(救済史)を上手にまとめていて、この救いがイエスによって実現したと教えている点で重要です。
説教全体は16節から41節までですが、三つの段落に区切ることができます。
1.16b-25節 旧約聖書から、神の救済の歴史のまとめ。
2.26-37節 神の救いの歴史が、イエス・キリストにおいて実現したこと。
3.38-41節 聴衆への呼びかけ、適応の部分。
今日は16-25節の神の救済の歴史のまとめたところを見ていきます。
13:16 そこで、パウロは立ち上がり、手で人々を制して言った。「イスラエルの人たち、ならびに神を畏れる方々、聞いてください。 という言葉で、パウロの話は始まりました。
次の17節
13:17 この民イスラエルの神は、わたしたちの先祖を選び出し、民がエジプトの地に住んでいる間に、これを強大なものとし、高く上げた御腕をもってそこから導き出してくださいました。
⇒これは、旧約聖書で言うなら、アブラハムの選びから、ヤコブの家族、つまりイスラエル12部族が飢饉のためにエジプトへ下り、そこで民が増し加えられ、「イスラエル民族」といわれるまでになったことまでをまとめています。
「神は、わたしたちの先祖を選び出した」とパウロはまとめていますが、これは、神がアブラハムを選び、彼を通して続く子孫に祝福の約束をなさったことです。
創世記17:7 わたしは、あなたとの間に、また後に続く子孫との間に契約を立て、それを永遠の契約とする。そして、あなたとあなたの子孫の神となる。 とありますから、アブラハム個人ではなく、民全体を選びだされたということです。
この後パウロの話は「民がエジプトの地に住んでいる間に、これを強大なものとした」と続きます。
旧約聖書、創世記では、神の祝福の約束が、アブラハム、イサク、ヤコブへと続きますが、創世記の最後は大飢饉のため、ヤコブ一家がエジプトへ下るところで終わります。
そのあと出エジプト記の初めには、イスラエルの民がそこで「イスラエル民族」といわれるまでになったことが記されています。
出エジプト1:7 イスラエルの人々は子を産み、おびただしく数を増し、ますます強くなって国中に溢れた。
この後、エジプトで奴隷として苦しむイスラエルの民を、神はエジプトから導き出されました。それが
「高く上げた御腕をもってそこから導き出してくださいました。」とまとめられているところです。
13:18 神はおよそ四十年の間、荒れ野で彼らの行いを耐え忍び、は荒野の40年の話です。
13:19 カナンの地では七つの民族を滅ぼし、その土地を彼らに相続させてくださったのです。は、12部族がカナンに入植し、土地の民と戦い、その地を相続したこと。申命記からヨシュア記までの要約です。ここでもパウロは、神が彼らに「土地を相続させてくださった」とまとめています。
13:20 これは、約四百五十年にわたることでした。その後、神は預言者サムエルの時代まで、裁く者たちを任命なさいました。ここは、士師記~サムエル記上7章までの要約ですが、ここでも神に逆らう民に対して、神は士師を送り彼らを導き続けたとまとめます。
21節、22節はイスラエルが神を離れて王を求めた結果サウルが与えられ、のちにダビデが与えられた話。
22節でパウロは、ダビデ王について、三つのことを述べています。
ダビデは神が見いだした者であること。神の心に適う者であること。神の思うところをすべて行う者であること。この三つのことも、それぞれ旧約聖書に基づいたまとめになっています。
パウロは、ここまで、旧約聖書にしるされたことを要領よく、上手に要約して語っています。ここまではこの場にいるユダヤ教の人々もみな同意する内容ですし、こんな風に旧約の歴史を的確にまとめ、語る、パウロの学識に、人々は驚いたかもしれません。
ところが、この後の話に続く23節は、多くの人が初めて聞く話でした。
13:23 神は約束に従って、このダビデの子孫からイスラエルに救い主イエスを送ってくださったのです。
ここで突然パウロの口から出た「救い主イエス」という言葉を、人々はどのように聞いたのでしょうか?
それも、パウロはここで「約束に従って」といいます。恵み深い神が、約束に従って神が送ってくださった方が「イエスだ」というのです。
パウロは簡単に「約束に従って」といいますが、これは、神がアブラハムに与えられた約束、イサク、ヤコブに引き継がれ、やがてダビデに与えられた約束のこと。ダビデに与えられた約束は、「ダビデ契約」と呼ばれて、「ダビデから出る子孫の王国を揺るぎないものとし、王座をとこしえに堅く据える。」という約束です。パウロは、この約束に従って、神は、ダビデの子孫からイスラエルに「救い主イエスを送ってくださった」と語ったのです。
ここにきて、その場にいた人々は、旧約聖書には記されていない、新しいことを聞きました。神の約束のメシア、救い主は「イエスだ」「あの十字架で死んだ、そして三日目に復活したイエスだ!」という証言です。
パウロはこのようにして、旧約聖書全体を順序正しく、簡潔に、しかし的確に旧約聖書の中心を要約し、語っています。
このように旧約の民イスラエルの歩みが示され、神の約束が語られ、最後にイエス・キリストが紹介されましたが、ここでクローズアップされてくるのは、神に背き、裏切り、罪を重ねる旧約の民と、約束に従って民を、彼らを救おうとされる、イスラエルの神の姿です。
そしてこの23節は、『 神は約束に従って、このダビデの子孫からイスラエルに、そして今ここにいるわたしたちにも、救い主イエスを送ってくださったのです。』と言い換えることができます。