ヤコブの死 2014年6月01日(日曜 夕方の礼拝)

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ヤコブの死

日付
説教
村田寿和 牧師
聖書
創世記 49章29節~33節

聖句のアイコン聖書の言葉

49:29 ヤコブは息子たちに命じた。「間もなくわたしは、先祖の列に加えられる。わたしをヘト人エフロンの畑にある洞穴に、先祖たちと共に葬ってほしい。
49:30 それはカナン地方のマムレの前のマクペラの畑にある洞穴で、アブラハムがヘト人エフロンから買い取り、墓地として所有するようになった。
49:31 そこに、アブラハムと妻サラが葬られている。そこに、イサクと妻リベカも葬られている。そこに、わたしもレアを葬った。
49:32 あの畑とあそこにある洞穴は、ヘトの人たちから買い取ったものだ。」
49:33 ヤコブは、息子たちに命じ終えると、寝床の上に足をそろえ、息を引き取り、先祖の列に加えられた。創世記 49章29節~33節

原稿のアイコンメッセージ

 前回、私たちは、父ヤコブが息子たちを、おのおのにふさわしい祝福をもって祝福したことを学びました。今夕の御言葉はその続きであります。

 ヤコブは自分を取り囲んでいる12人の息子たちに、「間もなくわたしは、先祖の列に加えられる。わたしはヘト人エフロンの畑にある洞穴に、先祖たちと共に葬ってほしい」と願いました。これはかつて、ヤコブがヨセフに誓わせたことでもあります。47章29節、30節にこう記されておりました。「イスラエルは死ぬ日が近づいたとき、息子ヨセフを呼び寄せて言った。『もし、お前がわたしの願いを聞いてくれるなら、お前の手をわたしの腿の間に入れ、わたしのために慈しみとまことをもって実行すると、誓ってほしい。どうか、わたしをこのエジプトに葬らないでくれ。わたしが先祖たちと共に眠りについたなら、わたしをエジプトから運び出して、先祖たちの墓に葬ってほしい』」。これと同じことを、今夕の御言葉では、すべての息子たちに命じているのです。父親を葬ることは、子供にとって聖なる義務と見なされておりました。それゆえ、「わたしをヘト人のエフロンの畑にある洞穴に、先祖たちと共に葬ってほしい」というヤコブの意志は、ヨセフだけではなく、すべての息子の前で明らかにされる必要があったのです。

 この洞穴について、ヤコブは30節で次のように言っています。「それはカナン地方のマムレの前のマクペラの畑にある洞穴で、アブラハムがヘト人エフロンから買い取り、墓地として所有するようになった」。アブラハムがヘト人エフロンから洞穴を買い取った次第については、23章に記されておりました。アブラハムは妻サラを葬るために、銀400シェケルで、エフロンの畑を買い取り、墓地として所有するようになったのです。そして、アブラハム自身もその墓地に、息子のイサクとイシュマエルの手によって葬られたのです。さらにその墓地には、イサクの妻リベカが葬られており、イサクも息子のヤコブとエサウの手によって葬られたのです。ヤコブは、最愛の妻ラケルを「エフラト、今のベツレヘムへ向かう道のほとりに葬った」のですが、もう一人の妻レアを、この墓地に葬りました。そして、自分も息子たちの手によって、この墓地に葬られたいと願うのです。創世記の大部分は、アブラハム、イサク、ヤコブの族長物語でありますが、そのいずれも、「カナン地方のマムレの前のマクペラの畑にある洞穴」に葬られるのです。ヤコブは、「間もなくわたしは、先祖の列に加えられる」と言いましたが、先祖と同じ墓に葬られることは、先祖の列に加えられることを具体的に現す行為でありました。また、アブラハム、イサク、ヤコブがカナン地方のマムレの前のマクペラの畑にある洞穴に葬られることは、彼らが、「この土地をあなたと、あなたの子孫に与える」という神の約束を信じて歩んだことを証ししているのです。この族長たちの信仰について、ヘブライ人への手紙は次のように記しています。ヘブライ人への手紙11章8節から16節までをお読みします。新約の415ページです。

 信仰によって、アブラハムは、自分が財産として受け継ぐことになる土地に出て行くように召し出されると、これに服従し、行き先も知らずに出発したのです。信仰によって、アブラハムは他国に宿るようにして約束の地に住み、同じ約束されたものを共に受け継ぐ者であるイサク、ヤコブと一緒に幕屋に住みました。アブラハムは、神が設計者であり建設者である堅固な土台を持つ都を待望していたからです。信仰によって、不妊の女サラ自身も、年齢が盛りを過ぎていたのに子をもうける力を得ました。約束なさった方は真実な方であると、信じていたからです。それで、死んだも同様の一人の人から空の星のように、また海辺の数えきれない砂のように、多くの子孫が生まれたのです。

 この人たちは皆、信仰を抱いて死にました。約束されたものを手に入れませんでしたが、はるかにそれを見て喜びの声をあげ、自分たちが地上ではよそ者であり、仮住まいの者であることを公に言い表したのです。このように言う人たちは、自分が故郷を探し求めていることを明らかに表しているのです。もし出て来た土地のことを思っていたのなら、戻るのに良い機会もあったかもしれません。ところが実際は、彼らは更にまさった故郷、すなわち天の故郷を熱望していたのです。だから、神は彼らの神と呼ばれることを恥となさいません。神は、彼らのために都を準備されていたからです。

 ヘブライ人への手紙は、アブラハム、イサク、ヤコブが、カナンの土地を所有することを越えて、「天の故郷を熱望していた」と記しております。これは、ヘブライ人への手紙のいわば解釈であります。ヘブライ人への手紙は、その冒頭で、「神は、かつて預言者たちによって、多くのかたちで、また多くのしかたで先祖に語られたが、この終わりの時代には、御子によって私たちに語られました」と記しました。神様は、御子イエス・キリストによって、最終的に、決定的にお語りになったのです。それゆえ、ヘブライ人への手紙は、御子イエス・キリストの啓示から振り返って、アブラハム、イサク、ヤコブが、カナンの土地を所有することを越えて、天の故郷を熱望していたと記すのです。

 では、今夕の御言葉に戻ります。旧約の91ページです。

 カナン地方に所有している墓地は、いずれはイスラエルが所有することになるカナン地方全体の保証でもありました。それゆえ、ヤコブは、32節で、「あの畑とあそこにある洞穴は、ヘト人から買い取ったもの」であることを繰り返し強調するのです。ヤコブは、息子たちに命じ終わると、寝床の上に足をそろえ、息を引き取り、先祖の列に加えられました。祖父アブラハム、父イサクと同じように、ヤコブも信仰を抱いて死んだのです。ヤコブは12人の息子たちに囲まれながら、満ち足りて死んで行ったと思います。しかしながら、よく考えて見ますと、ヤコブが所有しているのは、ヘト人エフロンの畑にある洞穴に過ぎないのです。アブラハム、イサク、ヤコブと三世代を経ても、カナン地方に所有しているのは、マクペラの畑だけであるのです。そうであれば、疑いを抱いても良さそうなものであります。私たちなら疑いを抱いてしまうのではないでしょうか?それほど、私たちは待つことができない、せっかちな者たちではないかと思うのです。たとえば、私たちは、主イエスから次のような御言葉をいただいています。「恐れるな。語り続けよ。黙っているな。わたしがあなたと共にいる。だから、あなたを襲って危害を加える者はない。この町には、わたしの民が大勢いるからだ」(使徒18:9)。私がこの所から説教しましてからもう何年も経っていますが、なかなかイエス様を信じる人が起こされないのが現状であります。そのような現実の中で、この御言葉は本当かしら?と疑問に思うわけです。しかし、たかだが何年かの福音宣教で、そのように考えるのは、あまりにもせっかちではないでしょうか?少なくとも、アブラハム、イサク、ヤコブであれば、信仰が弱まるなどということはなかったでしょう。なぜなら、彼らは、「約束なさった方は真実である」と信じていたからです。彼らは、「約束されたものを手に入れませんでしたが、はるかにそれを見て喜びの声をあげ」る信仰を抱いて生き、そして死んだのです。

 私たちは東部中会に属しておりますが、東部中会の中でも、将来に不安を覚える声が多く聞かれるようになりました。確かに現状を冷静に分析し、計画を立てることは大切なことであります。けれども、信仰をもって、歩むことはもっと大切なことであると思います。アブラハム、イサク、ヤコブは、「あなたとあなたの子孫にカナンの土地を与える」との約束を受けながら、墓地を所有しただけでした。しかし、それでも、信仰を抱いて、約束されたものをはるかに望み見て、喜びのうちに死んで行ったのです。

 今夕は最後に、テサロニケの信徒への手紙二の2章13節、14節を読んで終わりたいと思います。新約の381ページです。

 しかし、主に愛されている兄弟たち、あなたがたのことについて、わたしたちはいつも神に感謝せずにはいられません。なぜなら、あなたがたを聖なる者とする霊の力と、真理に対するあなたがたの信仰とによって、神はあなたがたを救われるべき者の初穂としてお選びになったからです。神は、このことのために、すなわち、わたしたちの主イエス・キリストの栄光にあずからせるために、私たちの福音を通して、あなたがたを招かれたのです。

 ここに集っている私たちは、どんなに人数が少なくとも、救われるべき者の初穂として選ばれ、招かれた者たちであります。そのことを信じて、この地で礼拝をささげ、主イエス・キリストの栄光を現してゆきたいと願います。

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