エジプトに下るヤコブ 2014年3月16日(日曜 夕方の礼拝)
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エジプトに下るヤコブ
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- 村田寿和 牧師
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創世記 46章1節~30節
聖書の言葉
46:1 イスラエルは、一家を挙げて旅立った。そして、ベエル・シェバに着くと、父イサクの神にいけにえをささげた。
46:2 その夜、幻の中で神がイスラエルに、「ヤコブ、ヤコブ」と呼びかけた。彼が、「はい」と答えると、
46:3 神は言われた。「わたしは神、あなたの父の神である。エジプトへ下ることを恐れてはならない。わたしはあなたをそこで大いなる国民にする。
46:4 わたしがあなたと共にエジプトへ下り、わたしがあなたを必ず連れ戻す。ヨセフがあなたのまぶたを閉じてくれるであろう。」
46:5 ヤコブはベエル・シェバを出発した。イスラエルの息子たちは、ファラオが遣わした馬車に父ヤコブと子供や妻たちを乗せた。
46:6 ヤコブとその子孫は皆、カナン地方で得た家畜や財産を携えてエジプトへ向かった。
46:7 こうしてヤコブは、息子や孫、娘や孫娘など、子孫を皆連れてエジプトへ行った。
46:8 エジプトへ行ったイスラエルの人々、すなわちヤコブとその子らの名前は次のとおりである。ヤコブの長男ルベン。
46:9 ルベンの息子のハノク、パル、ヘツロン、カルミ。
46:10 シメオンの息子のエムエル、ヤミン、オハド、ヤキン、ツォハル、およびカナンの女による息子シャウル。
46:11 レビの息子のゲルション、ケハト、メラリ。
46:12 ユダの息子のエル、オナン、シェラ、ペレツ、ゼラ。ただし、エルとオナンはカナンの土地で死んだ。ペレツの息子のヘツロン、ハムル。
46:13 イサカルの息子のトラ、プワ、ヨブ、シムロン。
46:14 ゼブルンの息子のセレド、エロン、ヤフレエル。
46:15 これらは、レアがパダン・アラムでヤコブとの間に産んだ子らである。ヤコブの娘ディナも含め、男女の総数は三十三名である。
46:16 ガドの息子のツィフヨン、ハギ、シュニ、エツボン、エリ、アロディ、アルエリ。
46:17 アシェルの息子のイムナ、イシュワ、イシュビ、ベリア、および妹セラ。ベリアの息子はヘベル、マルキエル。
46:18 これらは、ラバンが娘レアに与えたジルパの子らである。ジルパがヤコブとの間に産んだのは十六名である。
46:19 ヤコブの妻ラケルの息子のヨセフ、ベニヤミン。
46:20 ヨセフには、エジプトの国で息子が生まれた。それは、オンの祭司のポティ・フェラの娘アセナトが彼との間に産んだマナセとエフライムである。
46:21 ベニヤミンの息子のベラ、ベケル、アシュベル、ゲラ、ナアマン、エヒ、ロシュ、ムピム、フピム、アルド。
46:22 これらは、ヤコブとの間に生まれたラケルの子らで、その総数は十四名である。
46:23 ダンの息子のフシム。
46:24 ナフタリの息子のヤフツェエル、グニ、イエツェル、シレム。
46:25 これらは、ラバンが娘ラケルに与えたビルハの子らである。ビルハがヤコブとの間に産んだ者の総数は七名である。
46:26 ヤコブの腰から出た者で、ヤコブと共にエジプトへ行った者は、ヤコブの息子の妻たちを除けば、総数六十六名である。
46:27 エジプトで生まれたヨセフの息子は二人である。従って、エジプトへ行ったヤコブの家族は総数七十名であった。
◆ゴシェンでの再会
46:28 ヤコブは、ヨセフをゴシェンに連れて来るために、ユダを一足先にヨセフのところへ遣わした。そして一行はゴシェンの地に到着した。
46:29 ヨセフは車を用意させると、父イスラエルに会いにゴシェンへやって来た。ヨセフは父を見るやいなや、父の首に抱きつき、その首にすがったまま、しばらく泣き続けた。
46:30 イスラエルはヨセフに言った。「わたしはもう死んでもよい。お前がまだ生きていて、お前の顔を見ることができたのだから。」創世記 46章1節~30節
メッセージ
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今夕は、創世記46章1節から30節より、ご一緒に御言葉の恵みにあずかりたいと願います。
イスラエルは、息子ヨセフが生きているとの知らせを受けて、一家を挙げてエジプトへと旅立ちました。そして、ベエル・シェバに着くと、父イサクの神にいけにえをささげたのです。ベエル・シェバは、ヤコブが住んでいたと考えられるヘブロンの南方にありますから、エジプトへ向かう途上でのことであったと思われます。ベエル・シェバは、ヤコブの父イサクに、主が現れた場所でありました。そのベエル・シェバにおいて、ヤコブは父イサクの神に、いけにえをささげたのです。そして、その夜、幻の中で神様がイスラエルに、「ヤコブ、ヤコブ」と呼びかけました。ヤコブが「はい」と答えると、神様はこう言われたのです。「わたしは神、あなたの父の神である。エジプトへ下ることを恐れてはならない。わたしはあなたをそこで大いなる国民にする。わたしがあなたと共にエジプトへ下り、わたしがあなたを必ず連れ戻す。ヨセフがあなたのまぶたを閉じてくれるであろう」。私たちは、この神様の御言葉から、ヤコブがエジプトに下ることを恐れていたことを教えられます。人の心を見抜かれる神様の御言葉を通して、私たちは、ヤコブの心の内を知ることができるのです。ヤコブには、「死ぬ前に、どうしてもヨセフに会いたい」という強い願いがありました。そのヤコブがどうしてエジプトへ下ることを恐れたのでしょうか?それは、今、自分たちが住んでいるカナンの地が、神様が祖父アブラハムに、そして父イサクに、さらにはヤコブ自身に与えると約束されていた土地であったからです。ですから、ヤコブには、エジプトに下ってよいのであろうかという迷いもあったのだと思います。それゆえ、ヤコブはエジプトに下る前に、ベエル・シェバで父イサクの神にいけにえをささたのです。そして、神様は、そのようなヤコブの心を見抜かれて、幻の中で現れてくださり、「エジプトへ下ることを恐れてはならない」と言われるのです。そればかりか、神様は、「わたしはあなたをそこで大いなる国民にする」と言われるのです。かつて、神様は、アブラハムにも、「わたしはあなたを大いなる国民にする」と言われましたが、それと同じ約束がヤコブにも与えられているのです。神様はエジプトにおいてヤコブの一族を海辺の砂のように、夜空の星のように増やしてくださるのです。さらに、神様はこう言われました。「わたしがあなたと共にエジプトへ下り、わたしがあなたを必ず連れ戻す」。かつて、神様は、パダン・アラムに旅だったヤコブに対して、「見よ、わたしはあなたと共にいる。あなたがどこへ行っても、わたしはあなたを守り、必ずこの土地に連れ帰る」と約束してくださいましたが、ここでも、神様はヤコブと共にいてくださり、必ずヤコブを約束の地カナンへと連れ戻すと約束しておられます。しかし、神様が「ヤコブを必ず連れ戻す」と言われるとき、そのヤコブとは、ヤコブ個人というよりも、ヤコブの腰から出た一族を指しております。50章を見ますと、ヨセフがヤコブの遺骨をカナンの土地に葬ったことが記されておりますが、このことを神様は言われているのではなくて、ヤコブの一族がエジプトから脱出する、いわゆる出エジプトの出来事が、ここで言われているのです。
神様は最後に、ヤコブ個人に関わる慰めの言葉を語ってくださいました。「ヨセフがあなたのまぶたを閉じてくれるであろう」と言われたのです。かつて、ヤコブは息子ヨセフが野獣にかみ殺されてしまったと思い、こう言いました。「ああ、わたしもあの子のところへ、嘆きながら陰府に下って行こう」。しかし、神様は、ヤコブが息子ヨセフのもとで死を迎えることができると約束してくださったのです。それによって神様は、「死ぬ前に、どうしてもヨセフに会いたい」というヤコブの願いを善しとしてくださったのです。
この神様の御言葉を受けて、ヤコブは恐れることなくベエル・シェバを出発しました。イスラエルの息子たちは、エジプトの王ファラオが遣わした馬車に父ヤコブと子供や妻たちを乗せました。また、ヤコブとその子孫は皆、カナン地方で得た家畜や財産を携えてエジプトへと向かいました。こうしてヤコブは、息子や孫、娘や孫娘など、子孫を皆連れてエジプトへ行ったのです。ヤコブの一族は皆、すべての財産を携えてエジプトへと下って行ったのです。
8節から27節までには、エジプトへ行ったイスラエルの人々、すなわちヤコブとその子らの名前の一覧表が記されています。ここでは、繰り返してお読みしませんが、数字に関わることだけをお話したいと思います。27節に、「エジプトで生まれたヨセフの息子は二人である。従って、エジプトへ行ったヤコブの家族は総数七十名であった」と記されています。エジプトへ行ったヤコブの家族が70名であったことは、出エジプト記の1章5節にも、申命記の10章22節にも記されていることであります。そして、15節のレアがヤコブとの間に産んだ子らの総数33名と、18節のジルパがヤコブとの間に産んだ子らの総数16名と、22節のラケルがヤコブとの間に産んだ子らの総数14名と、25節のビルハがヤコブとの間に産んだ子らの総数7名を足すと、ちょうど70名になります。しかし、27節の「エジプトへ行ったヤコブの家族の総数70名」は、この一覧表を単純に合計した数字ではないのです。と言いますのも、実は、15節のレアがヤコブとの間に産んだ子らの総数は33名ではなくて、34名であるからです。ご自分で数えていただければ分かりますが、34名です。そうすると、一覧表の合計人数は71名となります。26節に、「ヤコブの腰から出た者で、ヤコブと共にエジプトへ行った者は、ヤコブの息子の妻を除けば、総数六十六名である」とありますが、この66名という人数は、どのようにして出てきたのかと言いますと、一覧表の合計人数である71名から、カナンの土地で死んだユダの息子エルとオナンと、エジプトにすでにいるヨセフとその息子マナセとエフライムの5名を引いた数字であります。そして、この66名に、ヨセフの二人の息子であるマナセとエフライム、さらにはヨセフとヤコブを加えた数字が、27節の70名となるのです。エジプトへ行ったヤコブの家族は、ヤコブ自身とヨセフとその二人の息子を含めて総数70名であったのです。
ヤコブは、ヨセフをゴシェンに連れて来るために、ユダを一足先にヨセフのところへ遣わしました。かつて、ヨセフは、兄たちに、父へのメッセージを託しましたが、その中で、ヨセフはこう語っておりました。「息子のヨセフがこう言っています。神がわたしを全エジプトの主としてくださいました。ためらわずに、わたしのところへおいでください。そして、ゴシェンの地域に住んでください。そうすればあなたも、息子も、孫も、羊や牛の群れも、そのほかすべてのものも、わたしの近くで暮らすことができます」(45:9,10)。そのヨセフの言葉どおり、ヤコブはエジプト北東部にあるゴシェンの地に来たのです。そして、ヨセフを連れてくるために、ユダをヨセフのもとに遣わしたのです。かつて、ヨセフをエジプトに売ることを企てたユダが、ここでは、ヨセフを父ヤコブに引き合わす者とされているのです。
ヨセフは、馬車を用意させると、父イスラエルに会いにゴシェンへやって来ました。ヨセフは父を見るやいなや、父の首に抱きつき、その首にすがったまま、しばらく泣き続けました。ヨセフは父ヤコブと二十数年ぶりに再会したのです。イスラエルはヨセフにこう言いました。「わたしはもう死んでもよい。お前がまだ生きていて、お前の顔を見ることができたのだから」。このヤコブの言葉は、私たちに、ルカによる福音書2章に記されている、老人シメオンの言葉を思い起こさせます。老人シメオンは、幼子イエスを抱いて、神をたたえてこう言いました。「主よ、今こそあなたは、御言葉どおり/この僕を安らかに去らせてくださいます。わたしはこの目であなたの救いを見たからです」。シメオンは、主が遣わすメシアに会うまでは決して死なない、とのお告げを聖霊から受けておりました。そして、シメオンはとうとう主が遣わされたメシア・イエスに会うことができたのです。それゆえ、「わたしは安らかに去ることができる」と言うのです。ヨセフに再会した父ヤコブも、このシメオンと同じ気持ちであったと思います。ヤコブはヨセフに再会することによって、思い残すことなく、安らかにこの地上を去ることができる平安を与えられたのです。そして、それは、イエス・キリストを信じる私たちにも与えられている平安であるのです。イエス・キリストが私たちの初穂として死から三日目に栄光の体へと復活されたゆえに、そして、今も、御言葉と聖霊において、私たちと共にいてくださるゆえに、私たちは安らかに、この地上を去ることができるのです。