ノアの物語 2011年11月20日(日曜 夕方の礼拝)

問い合わせ

日本キリスト改革派 羽生栄光教会のホームページへ戻る

ノアの物語

日付
説教
村田寿和 牧師
聖書
創世記 6章9節~22節

聖句のアイコン聖書の言葉

6:9 これはノアの物語である。その世代の中で、ノアは神に従う無垢な人であった。ノアは神と共に歩んだ。
6:10 ノアには三人の息子、セム、ハム、ヤフェトが生まれた。
6:11 この地は神の前に堕落し、不法に満ちていた。
6:12 神は地を御覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で堕落の道を歩んでいた。
6:13 神はノアに言われた。「すべて肉なるものを終わらせる時がわたしの前に来ている。彼らのゆえに不法が地に満ちている。見よ、わたしは地もろとも彼らを滅ぼす。
6:14 あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい。箱舟には小部屋を幾つも造り、内側にも外側にもタールを塗りなさい。
6:15 次のようにしてそれを造りなさい。箱舟の長さを三百アンマ、幅を五十アンマ、高さを三十アンマにし、
6:16 箱舟に明かり取りを造り、上から一アンマにして、それを仕上げなさい。箱舟の側面には戸口を造りなさい。また、一階と二階と三階を造りなさい。
6:17 見よ、わたしは地上に洪水をもたらし、命の霊をもつ、すべて肉なるものを天の下から滅ぼす。地上のすべてのものは息絶える。
6:18 わたしはあなたと契約を立てる。あなたは妻子や嫁たちと共に箱舟に入りなさい。
6:19 また、すべて命あるもの、すべて肉なるものから、二つずつ箱舟に連れて入り、あなたと共に生き延びるようにしなさい。それらは、雄と雌でなければならない。
6:20 それぞれの鳥、それぞれの家畜、それぞれの地を這うものが、二つずつあなたのところへ来て、生き延びるようにしなさい。
6:21 更に、食べられる物はすべてあなたのところに集め、あなたと彼らの食糧としなさい。」
6:22 ノアは、すべて神が命じられたとおりに果たした。創世記 6章9節~22節

原稿のアイコンメッセージ

 今夕は創世記の第6章9節から22節より、御言葉の恵みにあずかりたいと願います。

 9節、10節をお読みします。

 これはノアの物語である。その世代の中で、ノアは神に従う無垢な人であった。ノアは神と共に歩んだ。ノアには三人の息子、セム、ハム、ヤフェトが生まれた。

 「これはノアの物語である」とありますが、「ノア」はアダムから10代目の子孫であり、主の好意を得た人物でありました。また「物語」と訳されているヘブライ語は、2章4節では「由来」、5章1節では「系図」と訳されていた「トーレードース」という言葉です。それで、口語訳聖書は「ノアの系図」、新改訳聖書は「ノアの歴史」と翻訳しています。どのように翻訳するかは別にしても、ノアの物語はあるまとまった資料に基づいて記されたものであるのです。「その世代の中で、ノアは神に従う無垢な人であった」とありますが、「その世代」とは、「地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っている」世代のことであります。新共同訳聖書は、「ノアは神に従う無垢な人であった」と翻訳していますが、口語訳聖書、新改訳聖書は、「ノアは正しい、全き人であった」と翻訳しています。こちらの翻訳の方が元の言葉に近いものです。ノアは正しい、全き人でありました。それはノアが神と共に歩んだ人であったからです。アダムから七代目のエノクが神と共に歩んだように、ノアも神と共に歩んだのです。このことはノアが主の名を呼び求める者であったことを教えています。そして、ノアは三人の息子、セム、ハム、ヤフェトをもうけたのでありました。ここに系図らしいことが少しだけ記されています。

 11節から13節までをお読みします。

 この地は神の前に堕落し、不法に満ちていた。神は地を御覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で堕落の道を歩んでいた。神はノアに言われた。「すべて肉なるものを終わらせる時がわたしの前に来ている。彼らのゆえに不法が地に満ちている。見よ、わたしは地もろとも彼らを滅ぼす。

 ここで「堕落」という言葉が何度も出てきますが、これは創世記の第1章31節を背景にして用いられています。「神はお造りになったすべてのものを御覧になった。見よ、それは極めて良かった」。神様が創造された世界は極めて良い世界でありました。しかし、今夕の御言葉は、「見よ、それは堕落していた」と記すのです。地はアダムの罪によって良き創造の状態から堕ちて、暴虐に満ちていたのです。また「堕落」と訳されている言葉は「滅ぼす」と訳されているのと同じ言葉であります。自分の欲望に従って生きるすべての人間は、この地で滅びの道を歩んでいたのです。それゆえ神様は、「見よ、わたしは地もろとも彼らを滅ぼす」と言われるのです。神様は御前にすでに滅んでいるものを滅ぼされるのであります。このように聞いて、そのようなことは神様にふさわしくないと思われるかも知れません。しかし、創造主である神様だからこそ、御自分の造られたものを滅ぼす権利をもっておられるのです。それも堕落し、暴虐に満ちた世であればなおさらのことであります。エレミヤ書の第18章1節から6節に次のように記されています。

 主からエレミヤに臨んだ言葉。「立って、陶工の家に下って行け。そこでわたしの言葉をあなたに聞かせよう。」わたしは陶工の家に下って行った。彼はろくろを使って仕事をしていた。陶工は粘土で一つの器を作っても、気に入らなければ自分の手で壊し、それを作り直すのであった。

 そのとき主の言葉がわたしに臨んだ。「イスラエルの家よ、この陶工がしたように、わたしもお前たちに対してなしえないと言うのか、と主は言われる。見よ、粘土が陶工の手の中にあるように、イスラエルの家よ、お前たちはわたしの手の中にある。」

 陶工が粘土で一つの器を作っても、気に入らなければ自分の手で壊すように、神様は御自分が造られた世界が堕落し、不法に満ちたとき滅ぼすことがおできになるのです。神様は、すべての肉なるものを終わらせることができる正当な権利を持つ唯一のお方なのです。

 今夕の御言葉に戻ります。

 「見よ、わたしは地もろとも彼らを滅ぼす」と言われた神様はノアに続けてこう言われました。14節から16節までをお読みします。

 「あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい。箱舟には小部屋を幾つも造り、内側にも外側にもタールを塗りなさい。次のようにしてそれを造りなさい。箱舟の長さを三百アンマ、幅を五十アンマ、高さを三十アンマにし、箱舟に明かり取りを造り、上から一アンマにして、それを仕上げなさい。箱舟の側面には戸口を造りなさい。また、一階と二階と三階を造りなさい。」

 新共同訳聖書は訳出していませんが、「あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい」には「自分のために」という言葉が記されています。「あなたは自分のためにゴフェルの木の箱舟を造りなさい」と記されているのです(新改訳聖書参照)。このことは、ゴフェルの木の箱舟を造ることによって、滅びを免れるようにとの神様の命令であります。神様はノアにこれから御自分がなさろうとすることを打ち明けられ、その救いの道を示されるのです。15節には箱舟の寸法が記されていますが、一アンマはひじから中指の先までの長さで約45センチメートルであります。そうすると、箱舟の長さは約135メートル、箱舟の幅は約23メートル、箱舟の高さは約14メートルになります。これは相当大きなものであります。神様はそのような大きな箱舟を造りなさいとノアに命じられたのです。

 さらに神様は次のように言われます。17節から21節までをお読みします。

 「見よ、わたしは地上に洪水をもたらし、命の霊を持つ、すべて肉なるものを天の下から滅ぼす。地上のすべての肉なるものを天の下から滅ぼす。地上のすべてのものは息絶える。わたしはあなたと契約を立てる。あなたは妻子や嫁たちと共に箱舟に入りなさい。また、すべて命あるもの、すべて肉なるものから、二つずつ箱舟に連れて入り、あなたと共に生き延びるようにしなさい。それらは、雄と雌でなければならない。それぞれの鳥、それぞれの家畜、それぞれの地を這うものが、二つずつあなたのところへ来て、生き延びるようにしなさい。更に、食べられる物はすべてあなたのところに集め、あなたと彼らの食糧としなさい」。

 神様はここで、ノアに箱舟を造るように命じられた理由を示されます。神様は地上に洪水をもたらすことによって、命の霊をもつ、すべての肉なるものを天の下から滅ぼされるのです。ここでの「すべての肉なるもの」には鳥や動物も含まれています。神様は洪水によって、地上のすべてのものの息を絶やされるのです。しかし、神様はノアに「わたしはあなたと契約を立てる」と言われます。この契約については第9章に記されていますが、ここでは言及されているだけであります。神様はノアに、「妻子や嫁たちと共に箱舟に入りなさい」と言われます。さらには、「すべての命あるもの、すべて肉なるものから、二つずつ箱舟に連れて入り、あなたと共に生き延びるようにしなさい」と言われます。陶工が粘土で作ったものを壊して作り直すように、神様は堕落し不法に満ちた世を、ノアを通して作り直そうとされるのです。それゆえ、主は「それらは雄と雌でなければならない」と言われるのです。神様がお造りになった「それぞれの鳥、それぞれの家畜、それぞれの地を這うものが、二つずつあなたのところへ来て、生き延びるようにしなさい」と言われるのです。神様はノアに、「あなたは自分のためにゴフェルの木の箱舟を造りなさい」と命じられましたけれども、それはノアだけではなく、ノアとその家族、さらには鳥や家畜や地を這うものが生き延びるためであったのです。それゆえ、箱舟は長さ約135メートル、幅約23メートル、高さ約14メートルもの大きなものでなければならないかったのです。更に神様はノアに食べられる物を集めるようにと言われました。ここでは青草や果実が考えられているようでありますが、箱舟は食糧貯蔵庫でもあるのです。

 このような神様の御言葉を聞いて、ノアはどうしたでしょうか。聖書は簡潔にこう記しています。22節。

 ノアは、すべて神が命じられたとおりに果たした。

 私たちは、ノアが戸惑ったのではないかとか、作業の途中で疑いを起こしたのではないかとかいろいろな想像をするのですが、聖書はそのようなことをひと言も記しておりません。「ノアは、すべて神が命じられたとおりに果たした」のです。神様の御言葉であるがゆえに、ノアは信仰をもって従ったのです。ここに神と共に歩むということがどういうことであるかが具体的に記されています。神様が「光あれ」と言われると光があったように、神様の御言葉はノアを通してそのとおりに実行されるのです。そして、私たちを救う神様の御意志は、イエス・キリストにおいて完全に成し遂げられたのです。イエス様は御父の御意志に従って、十字架のうえで命を捨ててくださいました。イエス・キリストこそ神と共に歩まれた方、いや神その方であられます。それゆえ、イエス・キリストを信じる者は滅びを免れ、永遠の命に至るのです。「主イエスを信じなさい。そうすれば、あなたも家族も救われます」(使徒16:31)。この神の言葉を自分救いのために、さらには家族の救いのために受け入れたいと願います。

関連する説教を探す関連する説教を探す