女と獣の秘められた意味 2018年10月28日(日曜 夕方の礼拝)
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女と獣の秘められた意味
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- 村田寿和 牧師
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ヨハネの黙示録 17章7節~18節
聖書の言葉
17:7 すると、天使がわたしにこう言った。「なぜ驚くのか。わたしは、この女の秘められた意味と、女を乗せた獣、七つの頭と十本の角がある獣の秘められた意味とを知らせよう。
17:8 あなたが見た獣は以前はいたが、今はいない。やがて底なしの淵から上って来るが、ついには滅びてしまう。地上に住む者で、天地創造の時から命の書にその名が記されていない者たちは、以前いて今はいないこの獣が、やがて来るのを見て驚くであろう。
17:9 ここに、知恵のある考えが必要である。七つの頭とは、この女が座っている七つの丘のことである。そして、ここに七人の王がいる。
17:10 五人は既に倒れたが、一人は今王の位についている。他の一人は、まだ現れていないが、この王が現れても、位にとどまるのはごく短い期間だけである。
17:11 以前いて、今はいない獣は、第八の者で、またそれは先の七人の中の一人なのだが、やがて滅びる。
17:12 また、あなたが見た十本の角は、十人の王である。彼らはまだ国を治めていないが、ひとときの間、獣と共に王の権威を受けるであろう。
17:13 この者どもは、心を一つにしており、自分たちの力と権威を獣にゆだねる。
17:14 この者どもは小羊と戦うが、小羊は主の主、王の王だから、彼らに打ち勝つ。小羊と共にいる者、召された者、選ばれた者、忠実な者たちもまた、勝利を収める。」
17:15 天使はまた、わたしに言った。「あなたが見た水、あの淫婦が座っている所は、さまざまの民族、群衆、国民、言葉の違う民である。
17:16 また、あなたが見た十本の角とあの獣は、この淫婦を憎み、身に着けた物をはぎ取って裸にし、その肉を食い、火で焼き尽くすであろう。
17:17 神の言葉が成就するときまで、神は彼らの心を動かして御心を行わせ、彼らが心を一つにして、自分たちの支配権を獣に与えるようにされたからである。
17:18 あなたが見た女とは、地上の王たちを支配しているあの大きな都のことである。」
ヨハネの黙示録 17章7節~18節
メッセージ
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序
前回、私たちは、ヨハネと一緒に、獣にまたがっている一人の女の姿を見ました。ヨハネはこれまで、ローマ帝国を獣として描いてきました(13:1参照)。しかし、17章では、獣に加えて、「大淫婦」として、ローマ帝国を描いています。獣もそれにまたがっている一人の女もローマ帝国であるのです。ローマ帝国を象徴するものが、獣だけではなく、淫らな女にも拡げられているのです。獣にまたがっている女の姿を見て、ヨハネは驚きました。そのヨハネに対して、天使は女と獣の秘められた意味を説き明かすのです。
1 女と獣の秘められた意味
7節から13節までをお読みします。
すると、天使がわたしにこう言った。「なぜ驚くのか。わたしは、この女の秘められた意味と、女を乗せた獣、七つの頭と十本の角がある獣の秘められた意味とを知らせよう。あなたが見た獣は以前はいたが、今はいない。やがて底なしの淵から上って来るが、ついには滅びてしまう。地上に住む者で、天地創造の時から命の書にその名が記されていない者たちは、以前にて今はいないこの獣が、やがて来るのを見て驚くであろう。ここに、知恵のある考えが必要である。七つの頭とは、この女が座っている七つの丘のことである。そして、ここに七人の王がいる。五人は既に倒れたが、一人は今王の位についている。他の一人は、まだ現れていないが、この王が現れても、位にとどまるのはごく短い期間だけである。以前いて、今はいない獣は、第八の者で、またそれは先の七人の中の一人なのだが、やがて滅びる。また、あなたが見た十本の角は、十人の王である。彼らはまだ国を治めていないが、ひとときの間、獣と共に王の権威を受けるであろう。この者どもは、心を一つにしており、自分たちの力と権威を獣にゆだねる。
7節に、「この女の秘められた意味」と「獣の秘められた意味」と、二度、「秘められた意味」と記されています。しかし、元の言葉では、秘められた意味という言葉は一つしか記されていません。女と、獣という二者を受けて、その一つの秘められた意味を知らせようと記されているのです。このことは、先程言いましたように、女と獣が、どちらもローマ帝国の象徴であるからです。8節以下の説き明かしは、私たちには分かりにくいと思います。なぜなら、この天使の言葉は、当時、民衆に広まっていた皇帝ネロについての伝説を背景としているからです。皇帝ネロは、キリスト教徒を最初に迫害した皇帝です。ネロは、ローマの大火事の犯人を、当時の新興宗教であったキリスト教徒であるとし、教会を迫害しました。使徒ペトロと使徒パウロは、皇帝ネロの治世に、ローマで殉教の死を遂げました。ネロは自殺したのですが、民衆の間には、ネロは生きており、パルティア王国に潜んでいるとのうわさが広まっていました。パルティア王国とは、ローマ帝国の東に位置するイランの王朝です。そのパルティア王国からネロが軍隊を率いて、ローマに復讐しに来るとうわさされていたのです。そのようなネロについての伝説を背景にして、天使の言葉は記されているのです。ですから、8節の「獣」は皇帝ネロのことを指しているのです。「あなたが見た獣は以前はいたが、今はいない。やがて底なしの淵から上って来るが、滅びてしまう」。この獣こそ、皇帝ネロに代表されるローマ帝国であるのです。死んだネロがよみがえって、再び皇帝として君臨する。これによって、地上に住む者は、驚き、この獣を崇めるようになります。もちろん、天地創造の時から小羊の命の書に名前が記されている者は、獣を崇めません。イエス・キリストにおいてまことの神を知っている者は、獣に惑わされることはないのです。
9節から女と獣の秘められた意味が説き明かされます。獣には七つの頭がありましたが、七つの頭は七つの丘のことであると言われます。ローマの町は、七つの丘のうえにありましたので、そのことが言われているようです。さらに、七つの頭は七人の王を意味します。5人は既に倒れたが、1人は今王の位についている。他の1人はまだ現れていないが、現れても位にとどまるのは短い期間だけである。以前いて、今はいない獣は第八の者で、それは先の七人のうちの1人であるが、やがて滅びる。ここに記されている皇帝が誰であるのかについては諸説があります。その一つを紹介したいと思います。既に倒れた5人の王とは、「アウグストゥス、ティベリウス、ガイウス、クラウディウス、ネロ」の5人のことです。今、王の位についている1人は「ウェスパシアヌス」のことです。他の1人、現れても短い期間だけ位にとどまるのは「ティトゥス」のことです。そして、7人のうちの1人であるネロのよみがえりである第八の者は「ドミティアヌス」のことです。なぜ、ドミティアヌスがネロのよみがえりであるのか。それは、ドミティアヌスがネロと同じように、キリスト教徒を迫害するからです。
12節に、十本の角は、十人の王であると記されています。「彼らはまだ国を治めていないが、ひとときの間、獣と共に王の権威を受ける」とあります。この獣が再来のネロであるならば、この十人の王は、パルティア王国の領主たちを指しているようです。
2 小羊の勝利
14節をお読みします。
この者どもは小羊と戦うが、小羊は主の主、王の王だから、彼らに打ち勝つ。小羊と共にいる者、召された者、選ばれた者、忠実な者たちもまた、勝利を収める。
この14節は、16章14節に記されていた「全能者である神の大いなる日の戦い」であり、19章11節以下に記されている戦いの先取りであります。この14節は、文脈を壊してしまうもので、ない方が全体の意味がはっきりします。それでも、14節がここに記されているのは、再来のネロであるドミティアヌス帝によって迫害を受けている教会に正しい見通しを与えるためであると思います。ローマ皇帝がどれほどの力と権威を持っていようとも、最後には小羊が勝利を収める。なぜなら、小羊であるイエス・キリストこそ、主の主、王の王であるからです。復活されたイエス・キリストは、すでに世に勝っているお方であり、天と地の一切の権能を授けられているお方であるのです(ヨハネ16:33、マタイ28:18参照)。それゆえ、小羊と共にいる私たちも、勝利を収めることができるのです。使徒パウロが記しているように、キリストと共に苦しむなら、共にその栄光をも受けるのです(ローマ8:17参照)。キリストにあって、私たちは勝利を収めることができる。この終わりから、私たちは今を考えなくてはならないのです。そのとき、私たちは、今がどのような時であるかを正しく判断することができるのです。
3 獣が淫婦を滅ぼす
15節から18節までをお読みします。
天使はまた、わたしに言った。「あなたが見た水、あの淫婦が座っている所は、さまざまの民族、群衆、国民、言葉の違う民である。また、あなたが見た十本の角とあの獣は、この淫婦を憎み、身に着けた物をはぎ取って裸にし、その肉を食い、火で焼き尽くすであろう。神の言葉が成就するときまで、神は彼らの心を動かして御心を行わせ、彼らが心を一つにして、自分たちの支配権を獣に与えるようにされたからである。あなたが見た女とは、地上の王たちを支配しているあの大きな都のことである。」
1節に、「多くの水のうえに座っている大淫婦に対する裁きを見せよう」とありましたが、15節では、多くの水が「さまざまの民族、群衆、国民、言葉の違う民である」ことが明かされます。18節にあるように、この女は、地上の王たちを支配している大きな都、ローマのことですが、ローマはさまざまな民族を支配する帝国であったのです。天使は、ヨハネに「大淫婦に対する裁きを見せよう」と語りましたが、大淫婦に対する裁きは、意外な仕方でなされます。十本の角と獣が、淫婦を憎み、身に着けた物をはぎ取って裸にし、その肉を食い、火で焼き尽くすのです。獣も女も、どちらもローマ帝国を表しているわけですから、これは内乱です。獣が女を滅ぼしてしまうのです。そして、その背後には、神様のお働きがあるのです。神様が彼らの心を動かされたゆえに、獣は淫婦を憎み、滅ぼすのです。神様は獣を用いて、淫婦を裁かれるのです。
ローマ帝国は、内乱によって滅亡する。これが、ヨハネに示された見通しでありました。しかし、実際、ローマ帝国は内乱によって滅びることはありませんでした。では、聖書の御言葉は実現しなかったのでしょうか。そうではありません。なぜなら、獣も淫婦も、ローマ帝国に限られない、悪魔から力と権威を与えられた指導者であり、その国であるからです。国のために生き、国のために死ぬことを強制する指導者や国があるならば、その指導者や国は、獣であり淫婦であるのです。そして、そのような国において、キリスト者は必ず迫害されることになるのです。しかし、忘れてはならないのは、私たちの主イエス・キリストは、獣に必ず勝利を収めるということです。イエス・キリストを信じる私たちも、必ず勝利を収めるということです。そのような結末を心に留めて、忠実に歩んでいきたいと願います。