あなたがたの魂のために 2018年10月07日(日曜 朝の礼拝)
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あなたがたの魂のために
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ヘブライ人への手紙 13章17節~19節
聖書の言葉
13:17 指導者たちの言うことを聞き入れ、服従しなさい。この人たちは、神に申し述べる者として、あなたがたの魂のために心を配っています。彼らを嘆かせず、喜んでそうするようにさせなさい。そうでないと、あなたがたに益となりません。
13:18 わたしたちのために祈ってください。わたしたちは、明らかな良心を持っていると確信しており、すべてのことにおいて、立派にふるまいたいと思っています。
13:19 特にお願いします。どうか、わたしがあなたがたのところへ早く帰れるように、祈ってください。ヘブライ人への手紙 13章17節~19節
メッセージ
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序
今朝は、ヘブライ人への手紙13章17節から19節より、御言葉の恵みにあずかりたいと願います。
1 指導者たちに従いなさい
17節をお読みします。
指導者たちの言うことを聞き入れ、服従しなさい。この人たちは、神に申し述べる者として、あなたがたの魂のために心を配っています。彼らを嘆かせず、喜んでそうするようにさせなさい。そうでないと、あなたがたに益となりません。
前回学んだ7節では、「あなたがたに神の言葉を語ったかつての指導者たち」のことが言われていました。今朝の17節では、「あなたがたに神の言葉を語っている今の指導者たち」のことが言われています。「指導者たちの言うことを聞き入れ、服従しなさい」。このように記されているところを見ると、宛先の教会では、指導者たちの言うことを聞き入れず、従っていなかった者がいたようです。具体的に言えば、教会には、指導者たちの言うことを聞き入れずに、イエス・キリストへの信仰を捨ててしまい、神殿祭儀に連なるユダヤ人会堂に戻ってしまう者たちがいたわけです。そのような者たちに、「指導者たちの言うことを聞き入れ、従いなさい」とヘブライ人への手紙は記すのです。「神の言葉を語っている指導者たち」とは、私たちの教会で言えば、御言葉の教師である牧師のことです。ですから、この所を私たちに当てはめると、「牧師の言うことを聞き入れ、従いなさい」となるのです。そして、このことは、教会員が牧師を迎えるときに、誓約したことであるのです。より正確に言えば、「牧師が聖書に従って語る言葉を、真理として受け入れること」を誓約したのです。
今朝の週報に、式文(2017年度試用版)にある「牧師の就職」の文書を挟んでおきました。今朝は、この文書を読むことによって、牧師の働き、牧師の誓約、教会員の誓約、牧師と教会員との関係について確認したいと思います。私が羽生栄光教会の牧師に就任したのが、2004年11月28日であります。それから15年近く経っています。そのような時に、改めて、式文の「牧師の就職」の文書を読んで、確認することは有益であると思います。ちなみに、牧師就職式は、中会の特命委員会によって執り行われます。そのことを念頭において、聞いていただければと思います。
224ページに「一、式辞」とあります。ここには、牧師の働きがおもに四つ記されています。お読みします。
日本キリスト改革派( )中会は、今ここに、( )教師の( )教会牧師就職式を挙げようとしています。
そもそも牧師は、御言葉の役者であって、聖書に示された主の御言葉を群れに説き明かし、それによって彼らに恵みを得させ、また、主にある訓戒と慰めとによって、キリストによる悔い改めと神に対する和解とに導く務めを持っています。更に牧師は、聖書の真理を擁護し、すべての誤謬を打ち砕き、その群れに救いの道を教え諭すだけでなく、御言葉をもって病める者を慰める務めも持っています。それゆえ、使徒パウロも、「これらはすべて神から出ることであって、神は、キリストを通してわたしたちを御自分と和解させ、また和解のために奉仕する任務をわたしたちにお授けになりました。つまり、神はキリストによって世を御自分と和解させ、人々の罪の責任を問うことなく、和解の言葉をわたしたちにゆだねられたのです。ですから、神がわたしたちを通して勧めておられるので、わたしたちはキリストの使者の務めを果たしています。キリストに代わってお願いします。神と和解させていただきなさい。」(コリントの信徒への手紙二5章18~20節)と言い、また、「教えに適う信頼すべき言葉をしっかりと守る人でなければなりません。そうでないと、健全な教えに従って勧めたり、反対者の主張を論破したりすることもできないでしょう。」(テトスへの手紙1章9節)と教えて、この職務の重大なことを説きました。
第二に、牧師は、礼典をつかさどる務めを持っています。礼典は、恵みの手段として主が定められた制度であり、使徒たちを経て教会に伝えられたものですから、御言葉の役者は、この礼典の重大さに留意しなければなりません。
第三に、牧師は、教会員のために、常に祈らなければなりません。「そこで、まず第一に勧めます。願いと祈りと執り成しと感謝とをすべての人々のためにささげなさい。王たちやすべての高官のためにもささげなさい。わたしたちが常に信心と品位を保ち、平穏で落ち着いた生活を送るためです。これは、わたしたちの救い主である神の御前に良いことであり、喜ばれることです。」(テモテへの手紙一2章1~3節)
第四に、牧師は、長老と共に教会員を訓練し、主が命じられたように教会を治める者です。主キリストは使徒に対し、「わたしはあなたに天の国の鍵を授ける。あなたが地上でつなぐことは、天上でもつながれる。あなたが地上で解くことは、天上でも解かれる。」(マタイによる福音書16章19節)と教えられました。更に使徒パウロも、「自分の家庭を治めることを知らない者に、どうして神の教会の世話ができるでしょうか。」(テモテへの手紙一3章5節)と教えて、この務めが、神の家司(いえつかさ)、監督、群れの監督者と言われている理由を明らかにしているとおりです。
次に、牧師の誓約文をお読みします。牧師の務めに就く人は、どのような誓約をするのかを確認したいと思います。
( )、あなたは、今、( )教会の牧師に就職しようとしています。あなたは、神と教会の前に、次の誓約をしなければなりません。
1、あなたは神の恵みによってこの職務に召されたことを確信し神への愛と福音を宣べ伝える熱心によってのみ、この務めを遂行することを誓約しますか。
2、あなたは、いかなる場合にも、福音の真理及び教会の純潔と一致と平和のために努力することを誓約しますか。
3、あなたは、キリスト者また福音の役者としての義務を果たし、生活において福音の告白を飾り、託された人々の前に敬虔の模範となるように努力することを誓約しますか。
4、あなたは、この教会の招聘に応じて、牧師の務めを行うにあたり、この人々を愛し、神の恵みと力によって、喜んで義務を果たすことを誓約しますか。
このようなことを牧師である私は、神と教会の前に誓約したのです。
次に教会員の誓約文をお読みします。教会員は牧師を迎えるに当たって、どのような誓約をするのかを確認したいと思います。
1、主はあなたがたの選んだこの愛する兄弟を、今、あなたがたの牧師として遣わされます。あなたがたは、真心から喜びと敬虔をもって、この兄弟を御言葉の役者として受け入れることを誓約しますか。
2、主は、牧師の務めとして、教え、勧め、また戒めることを命じられました。あなたがたは、彼が聖書に従って語る言葉を、真理として受け入れることを誓約しますか。
3、牧師は、大きな責任を身に帯びて、託された人々を守るものです。あなたがたは、彼に対し、使徒たちが命じるように従順であることを誓約しますか。
4、牧師は、宣教によって人を神の国に導く特権をゆだねられたものです。あなたがたは、そのために言葉と行いをもって、彼を励まし、また助けることを誓約しますか。
このようなことを教会員である皆さんは、神と教会の前に誓約したのです。
最後に、「就職の祈祷」をお読みします。ここには、牧師と教会員とのあるべき関係が良く言い表されています。
恵み深い父なる神よ。あなたは、知恵と力とを用いて天と地とそのなかにあるすべてのものを造り、これを支え導いておられます。私たちは、真心からの賛美をもってあなたの御名をほめたたえます。
聖なる主よ。あなたは、独り子を賜ったほどに、私たちを愛してくださり、御子にあって世を御自分と和解させ、且つ、和解の福音をしもべたちに与えてくださいました。
私たちは、あなたがこの兄弟を選んで、( )教会の牧師としてくださることを感謝いたします。願わくは、聖霊を豊かに与え、兄弟が御言葉の役者にふさわしい者とされ、常に命の御言葉を語り、魂を養い、福音の真理をもって罪人を主の救いに導くことができるようにしてください。願わくは、主の恵みによって兄弟の言葉と行いを神の御旨にかなうものとならせ、主の御栄光を現し、常に教会員の模範となることができるようにしてください。
父なる神よ。特に( )教会を顧み、恵みを注いでください。教会員一人ひとりが、大きな喜びと感謝をもって( )牧師を迎え、信頼と敬愛とをもって指導に従い、信仰から信仰に進み、柔和と謙遜をもって彼と共に励んで、主の業を全うすることができるようにしてください。主の御霊がこの教会に満ちあふれ、ますます主の栄光を現すことができるようにしてください。
主イエス・キリストの御名によってお祈りいたします。アーメン。
長く式文を読みましたが、ここには、牧師の働き、牧師である私が誓約したこと、教会員である皆さんが誓約したこと、牧師である私と教会員の皆さんとのあるべき関係が祈りというかたちで記されています。そして、ここに、今朝の御言葉を私たちが自分たちに結びつけて聞くための土台が記されているのです。
2 あなたがたの魂のために
17節の二つ目の文に、「この人たちは、神に申し述べる者として、あなたがたの魂のために心を配っています」とあります。「牧師」は、「神に申し述べる者として、教会員の魂のために心を配っている人」であるのです。「神に申し述べる者」とは、世の終わりの裁きにおいて、神様に申し述べる者ということです。4章13節に、こう記されていました。「更に、神の御前では隠れた被造物は一つもなく、すべてのものが神の目には裸であり、さらけ出されているのです。この神に対して、わたしたちは自分のことを申し述べねばなりません」。ここには、教会員一人一人が、世の終わりの裁きにおいて、自分のことを申し述べることが記されています。しかし、牧師は、自分のことだけではなく、自分に委ねられた群れのことをも申し述べねばならないのです。そのような責任を負う者として、教会員の魂のために心を配っているのです。新共同訳聖書は「あなたがたの魂のために心を配っています」と翻訳していますが、口語訳聖書は「あなたがたの魂のために目を覚ましています」と翻訳しています。「あなたがたの魂のために目を覚ましています」。こちらの訳の方が元の言葉に近いのです。教会員の魂のために目を覚ましている。それは、教会員の魂のためにいつも祈っているということです。牧師がいるということは、教会員にとって、自分の魂のためにいつも祈ってくれる人がいるということです。そのことを、どうぞ、覚えていただきたいと思いますね。
牧師は教会員について申し述べる者として、教会員のためにいつも祈っている。それゆえ、ヘブライ人への手紙はこう記すのです。「彼らを嘆かせず、喜んでそうするようにさせなさい。そうでないと、あなたがたに益となりません」。牧師を嘆かせる教会員の態度とは、どのようなものでしょうか。それは、牧師の言うことを聞き入れず、従わないということでしょう。教会員としての誓約に背いて、牧師を非難することでしょう。もし、教会員がそのような態度を取るならば、牧師は意気消沈して、喜んで牧師としての務めを果たすことができなくなります。それは、その人ばかりでなく、教会全体にとって大きな損失であるのです。
3 祈ってください
18節、19節をお読みします。
わたしたちのために祈ってください。わたしたちは、明かな良心を持っていると確信しており、すべてのことにおいて、立派にふるまいたいと思っています。特にお願いします。どうか、わたしがあなたがたのところへ早く帰れるように、祈ってください。
18節に、「わたしたちのために祈ってください」と一人称複数形で記されていますが、19節を見ると、「わたしがあなたがたのところへ早く帰れるように、祈ってください」と一人称単数形で記されています。これは、どういうことかと言いますと、18節は、指導者たちの一人として、「わたしたちのために祈ってください」と記しているわけです。「私たち指導者たちのために祈ってください」と記しているわけです。ですから、続く文には、指導者たちのあるべき姿が記されているわけです。牧師は、明かな良心を持っていると確信しており、すべてのことにおいて立派に振る舞いたいと思っているべきであるのです。ここで「明かな良心を持っていると確信しており」と訳されている言葉は、「〔自分の〕内奥(ないおう)の意識が良い〔状態にある〕と確信している」と訳すことができます(岩波訳)。自分の心にやましい思いを持たないようにする。これは、牧師の働きを続けて行くうえで必要不可欠なことです。と言いますのも、私の心の深い所から、「あなたは牧師にふさわしくないのではないか」という問いが沸いてくるからです。わたしのことを知っているもう一人の自分が、「あなたは牧師にふさわしくないのではないか」と問うてくるからです。そのとき、私は、自分自身に弁明しなければならない。もう一人の自分に弁明できるように、自分の心にやましい思いを持たないようにすることが必要不可欠であるのです。もちろん、私にやましい思いが全くないわけではありません。また、すべてのことにおいて、立派にふるまっているわけでもありません。ですから、私のために祈っていただきたいと願います。牧師の務めを果たすことができるように、祈っていただきたいと思います。そのように、牧師と教会員が互いに祈り合う教会として、これからも歩んでいきたいと願います。