エリファズの2回目の弁論② 2024年1月31日(水曜 聖書と祈りの会)

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エリファズの2回目の弁論②

日付
説教
村田寿和 牧師
聖書
ヨブ記 15章17節~35節

聖句のアイコン聖書の言葉

15:17 私はあなたに告げよう。聞け。/私が見たことを私は述べよう。
15:18 それは知恵ある人が示し/その先祖が隠さなかったものだ。
15:19 地は彼らだけに与えられ/彼らの中を他国の者が渡り歩くことはなかった。
15:20 悪しき者は一生の間、もだえ苦しむ。/冷酷な者には年の数が隠されている。
15:21 その両耳には恐ろしい音が聞こえ/平和な時にも略奪者が彼を襲う。
15:22 彼は暗闇から戻れるとは信じられず/剣に狙われ続ける。
15:23 彼は食物を求めてあちらこちらをさまよい/暗闇の日が身近に迫っていることを知る。
15:24 苦しみと悩みが彼を襲い/戦いに臨む王のように彼を威圧する。
15:25 それは、彼が神に手向かい/全能者に対して傲慢に振る舞い
15:26 分厚い盾をかざし/かたくなに神に向かって突進するからだ。
15:27 また、彼の顔は脂で覆われ/腰の回りは脂肪で太くなっており
15:28 滅ぼされた町、人の住まない家/瓦礫の山となる所に住む。
15:29 彼は富を得ず、財産を守らず/その得たものを地に広げることはない。
15:30 彼は暗闇から逃れることはできず/炎に若枝を枯らされ/彼の口の息によって逃れる。
15:31 人を惑わす空しいものに頼るな。/その報いは空しいからだ。
15:32 時が来る前にそれはしおれ/その枝は緑にはならない。
15:33 彼はぶどうの木のように熟さない実を振り落とし/オリーブの木のようにその花を落とす。
15:34 神を敬わない者の群れは実を結ばず/賄賂を好む者の天幕を火が焼き尽くす。
15:35 彼らは苦しみをはらんで不義を生み/その腹は欺きを育む。
ヨブ記 15章17節~35節

原稿のアイコンメッセージ

 前回は、『ヨブ記』の第15章1節から16節までを学びました。今朝は、17節から35節までを学びたいと思います。第15章から第21章まで、二回目のヨブと三人の友人との論争が記されています。ヨブの三人の友人の名前は、テマン人エリファズ、シュア人ビルダド、ナアマ人ツォファルです。この順番で弁論が語られ、それぞれの弁論にヨブが答えるという仕方で話しが進んでいきます。第15章には、エリファズの二回目の弁論が記されています。エリファズは、10節で、「私たちの中には白髪の者も老いた者もいて/あなたの父より年上だ」と言っていますが、これはエリファズ自身のことであると考えられています。ヨブとエリファズは親と子ほど年齢が離れていたのです。前回の振り返りを簡単にすると、2節から6節で、エリファズは、ヨブの言葉を愚か者の言葉とし、ヨブが神への畏れを捨てた悪しき者であると断定します。また、7節から13節で、ヨブよりも自分たちの知恵が勝っていることを人生経験の長さから主張します。自分たちの優しい言葉に耳を傾けず、自分たちに憤り、さらには神に向かって憤りの言葉を語るヨブは神を畏れない悪しき者であるのです。14節から16節で、エリファズは、女から生まれた人間が神の目に正しくも清くもないことから、ヨブの「自分は正しい、潔白である」という主張が間違いであることを論証します。ヨブは忌み嫌われる者、腐敗した者、不正を水のように飲む人間であるとエリファズは言うのです。

 今朝の御言葉はその続きとなります。

 17節から30節までをお読みします。

 私はあなたに告げよう。聞け。私が見たことを私は述べよう。それは知恵ある人が示し/その先祖が隠さなかったものだ。地は彼らだけに与えられ/彼らの中を他国の者が渡り歩くことはなかった。悪しき者は一生の間、もだえ苦しむ。冷酷な者には年の数が隠されている。その両耳には恐ろしい音が聞こえ/平和な時にも略奪者が彼を襲う。彼は暗闇から戻れるとは信じられず/剣に狙われ続ける。彼は食物を求めてあちらこれらをさまよい/暗闇の日が身近に迫っていることを知る。苦しみと悩みが彼を襲い/戦いに臨む王のように彼を威圧する。それは、彼が神に手向かい/全能者に対して傲慢に振る舞い/分厚い盾をかざし/かたくなに神に向かって突進するからだ。また、彼の顔は脂で覆われ/腰の周りは脂肪で太くなっており/滅ぼされた町、人の住まない家/瓦礫の山となる所に住む。彼は富を得ず、財産を守らず/その得たものを地に広げることはない。彼は暗闇から逃れることはできず/炎に若枝を枯らされ/彼の口の息によって逃れる。

 これからエリファズがヨブに語る言葉は、ヨブの父親よりも年上のエリファズが見たことであり、知恵ある人たちが先祖から受け継いできた言葉であります。19節に、「地は彼らだけに与えられ/彼らの中を他国の者が渡り歩くことはなかった」とあります。これは、外国の教えから影響を受けていない、信頼できる純粋な先祖たちの教えであるということです。

 20節から30節までは、エリファズが見たこと、知恵ある人が先祖から受け継いできた教えです。ここに記されていることは、一言で言うと、悪しき者は悪い報いを受けるという応報思想です。なぜ、エリファズは、悪しき者は悪い報いを受けるという応報思想を確かな知恵として語るのでしょうか。それは、第12章において、ヨブが応報思想を否定する発言をしていたからです。それは他でもないヨブ自身が正しい者であるにもかかわらず、悪しき報いを受けていたからですね。第12章4節から6節で、ヨブはこう言っていました。旧約の777ページです。

 私は友人のたちの笑いぐさ。神を呼び、神が答えてくださったのに/完全で正しき人が笑いぐさとなっている。安楽な思いの中には不運な者への侮蔑があり/人が足をすべらせるのを待っている。略奪者の天幕は安全で/神を怒らせる者/神を支配しようとする者は安らかである。

 このように、ヨブは応報思想を否定する発言をしていたのです。第12章13節以下では、応報思想では説明できない干魃や洪水などの災害について語りました(12:15参照)。諸国民が増え広がるのも、他国に侵略されて連れ去られるのも、人間には恣意的としか思えない神の御意思によるのです(12:23〜25参照)。

 今朝の御言葉に戻ります。旧約の781ページです。

 応報思想を否定するヨブの言葉を受けて、エリファズは、確かな知恵の教えとして、悪しき者は栄えているように見えても、死の恐怖に怯えて生きていると言います。ここに記されているエリファズの言葉をよく読むと、悪しき者の一生とヨブの一生が重ね合わせて記されているようにも読めます。21節に、「平和な時にも略奪者が彼を襲う」とありますが、ヨブは、平和な時に、シェバ人やカルデア人に使用人たちと家畜を襲われました(1:15、17参照)。また、24節から26節に、「苦しみと悩みが彼を襲い/戦いに臨む王のように彼を威圧する。それは、彼が神に手向かい/全能者に対して傲慢に振る舞い/分厚い盾をかざし/かたくなに神に向かって突進するからだ」とあります。これもヨブのことを言っているようです。エリファズは、自分が悪しき者と見なしているヨブのことを念頭に置いて、悪人の苦しみについて記すのです。悪しき者は繁栄しても、それは一時のことで、結局は滅びてしまいます。それゆえ、エリファズは31節から35節で、ヨブにこう勧告するのです。

 人を惑わす空しいものに頼るな。その報いは空しいからだ。時が来るまでにそれはしおれ/その枝は緑にはならない。彼はぶどうの木のように熟さない実を振り落とし/オリーブの木のようにその花を落とす。神を敬わない者の群れは実を結ばず/賄賂を好む者の天幕を火が焼き尽くす。彼らは苦しみをはらんで不義を産み/その腹は欺きを育む。

 悪しき者は必ず悪しき報いを受ける。それゆえ、空しい財産に頼らずに、ただ神を敬うようにとエリファズは言います。4節で、エリファズは、ヨブのことを「神への畏れを捨て、神の前で祈ることをやめている」と言いました。エリファズにとって、ヨブの神に対する嘆き訴えは、祈りではないのです。エリファズは、ヨブが富、財産により頼む者と考えているようです。実際、ヨブは災いに遭う前、多くの財産を持っていました(1:2、3)。ヨブは東の国一番の富豪であったのです(1:3、新共同訳)。それゆえ、エリファズは、ヨブが財産を頼みにする悪しき者であると考えたのです。エリファズは、ヨブが受けている苦難から、ヨブを悪しき者であると決めつけます。しかし、それはエリファズの願望でもあるのです。エリファズは悪しき者が平和なときにも不安と恐れに苛(さいな)まれていると言いますが、そうではない人もいるはずです。ここでエリファズが言っていることは、そうであってほしいという願望であるのです。それは、応報思想が成り立たないならば、神の正義も人間社会の秩序も成り立たないとエリファズが考えているからです。「自分は正しいのに苦しみを受けている。神の方こそ正しくない」と主張するヨブは、エリファズにとって、神を畏れない、愚か者であるのです。

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