ツォファルの1回目の弁論を受けてのヨブの答え② 2023年11月29日(水曜 聖書と祈りの会)

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ツォファルの1回目の弁論を受けてのヨブの答え②

日付
説教
村田寿和 牧師
聖書
ヨブ記 12章7節~25節

聖句のアイコン聖書の言葉

12:7 しかし、獣に尋ねてみよ。/それはあなたに教えるだろう。/空の鳥もあなたに告げるだろう。
12:8 あるいは、地に語りかけよ。/それはあなたに教えるだろう。/海の魚もあなたに語るだろう。
12:9 これらすべてを主の手が造られたのだと/知らない者があろうか。
12:10 すべての生き物の命/すべての肉なる者の息は御手の内にある。
12:11 耳は言葉を聞き分け/舌は食物を味わえるではないか。
12:12 老いた者には知恵があり/長寿の者には英知があるというが
12:13 知恵と力は神と共にあり/思慮と英知も神のものである。
12:14 神が打ち倒せば、建て直せない。/神が人を閉じ込めれば、誰も開けられない。
12:15 神が水を閉ざせば、旱魃となり/水を放てば、地は滅びる。
12:16 力と洞察は神と共にあり/惑う者も惑わす者も神のものである。
12:17 神は参議をはだしで歩かせ/裁判官を愚かにし
12:18 王の帯を解き/彼らの腰に布を巻き
12:19 祭司をはだしで歩かせ/地位ある者を引き下ろす。
12:20 神は信頼される者の言葉を取り去り/長老の判断を奪い
12:21 高貴な者に侮蔑を浴びせ/力ある者の腰帯を解く。
12:22 神は闇の中から深い底をあらわにし/死の陰を光へと運ぶ。
12:23 神は諸国民を大きくして、これを滅ぼし/諸国民を広げて、これを連れ去る。
12:24 神はその地の民の頭から悟りを取り去り/彼らを道なき不毛の地に迷い込ませる。
12:25 彼らは光なき闇の中で手探りする。/神は彼らを酔いどれのように迷わせる。
ヨブ記 12章7節~25節

原稿のアイコンメッセージ

 今朝は、『ヨブ記』の第12章7節から25節より、御言葉の恵みにあずかりたいと願います。「聖書協会共同訳」に基づいてお話しします

 7節から10節までをお読みします。

 しかし、獣に尋ねてみよ。それはあなたに教えるだろう。空の鳥もあなたに告げるだろう。あるいは、地に語りかけよ。それはあなたに教えるだろう。海の魚もあなたに語るだろう。これらすべてを主の手が造られたのだと/知らない者があろうか。すべての生き物の命/すべての肉なる者の息は御手の内にある。

 ヨブは、友人たちに、「しかし、獣に尋ねて見よ。それはあなたに教えるだろう」と言います。ここでヨブは、第8章8節のビルダドの言葉を念頭において語っています。ビルダドは第8章8節で、「先の世代に尋ねてほしい。先祖たちの究めたことを確かめよ」と言いました。そのビルダドに対して、「獣に尋ねて見よ。それはあなたに教えるだろう」と言うのです。ヨブは、神が造られた獣や空の鳥や地の草木、海の魚に尋ねるようにと言います。そうすれば、これらすべては、主の手によって造られたことを語るであろうと言うのです。このヨブの言葉は、言い換えると、獣、空の鳥、地の草、海の魚をよく見るならば、それらを神が造り、それらの命を神が保っていることが分かるということです。これは後に、イエス様が弟子たちに言われたことです。イエス様は、何を食べようかと思い悩む弟子たちに、こう言われました。「空の鳥をよく見なさい。種も蒔かず、刈り入れもせず、倉に納めもしない。だが、あなたがたの天の父は鳥を養ってくださる。あなたがたは鳥よりも価値あるものではないか」(マタイ6:26)。このように、イエス様は、「空の鳥を養ってくださる父なる神は、あなたがたをも養ってくださる」と言われたのです。しかし、ヨブが友人たちに、「獣や空の鳥や地の草や海の魚に尋ねてみよ」と言ったのは、獣や空の鳥や地の草や海の魚が置かれている過酷な状況をも、神の御手の内にあることを悟らせるためであるのです。友人たちは、先祖の知恵である応報思想に基づいて、ヨブを罪人であると定め、悔い改めを迫りました。しかし、ヨブは応報思想が破綻していることを、6節で語りました。「略奪者の天幕は安全で/神を怒らせる者/神を支配しようとする者は安らかである」。このように応報思想が破綻していることは、獣も、空の鳥も、地の草も、海の魚も知っているとヨブは言うのです。応報思想で説明しきれないことの代表例に、いわゆる自然災害があります。しかし、その自然災害も神の御手の内にあるのです。

 11節から13節までをお読みします。

 耳は言葉を聞き分け/舌は食物を味わえるではないか。老いた者には知恵があり/長寿の者は英知があるというが/知恵と力は神と共にあり/思慮と英知も神のものである。

 ここで、ヨブは友人たちを非難しています。人間は舌で食物を味わい、味のないものや腐ったものは吐き出してしまいます(6:6、7参照)。それと同じように、人間は耳で言葉を聞き分けて、聞くべき言葉を心に納め、聞くに値いしない言葉は聞き流すのです。ヨブは、「耳は言葉を聞き分け/舌は食物を味わえるではないか」と言うことによって、自分が友人たちの言葉をそのまま受け入れる者ではないことをほのめかすのです。友人たちは皆、ヨブよりも年上であったようです。友人たちの中には白髪の者も老いた者もいて、ヨブの父よりも年上の者がいたのです(15:10参照)。そのような友人たちに、ヨブは、「老いた者には知恵があり/長寿の者には英知があるというが/知恵と力は神と共にあり/思慮と英知も神のものである」と言うのです。ヨブは、「老いた者、長寿の者であるからといって、必ずしも知恵と英知があるとは限らない」と言うのです。なぜなら、思慮と英知は神のものであるからです。ちなみに、主イエス・キリストを信じる私たちは、この思慮と英知を聖霊によって与えられています。『テモテへの手紙二』の第1章7節に、「神は、おくびょうの霊ではなく、力と愛と思慮分別の霊をわたしたちにくださったのです」とあります。神は、イエス・キリストを信じる私たちに、力と愛と思慮分別の霊を与えてくださったのです(ヤコブ3:17「上から出た知恵」も参照)。

 14節から25節までをお読みします。

 神が打ち倒せば、立て直せない。神が人を閉じ込めれば、誰も開けられない。神が水を閉ざせば、干魃となり/水を放てば、地は滅びる。力と洞察は神と共にあり/惑う者も惑わす者も神のものである。神は参議をはだしで歩かせ/裁判を愚かにし/王の帯を解き/彼らの腰に布を巻き/祭司をはだしで歩かせ/地位ある者を引き下ろす。神は信頼される者の言葉を取り去り/長老の判断を奪い/高貴な者に侮蔑を浴びせ/力ある者も腰帯を解く。神は闇の中から深い底をあらわにし/死の陰を光へと運ぶ。神は諸国民を大きくして、これを滅ぼし/諸国民を広げて、これを連れ去る。神はその地の民の頭から悟りを取り去り/彼らを道なき不毛の地に迷い込ませる。彼らは光なき闇の中で手探りする。神は彼らを酔いどれのように迷わせる。

ここでヨブは、被造世界(自然)と人間の歴史に働く、神の破滅的な力について語ります。すべての肉なる者の息は神の御手の内にある。神は、世界と人間の歴史を支配しておられる。そうであれば、地震によって町が破壊されることや人が牢屋に閉じ込められること、干魃や洪水の被害も、神の支配の内にあるのです。また、国の指導者(裁判官、王、祭司、長老)たちが惑い、惑わされるのも神によることであるのです(サムエル下17:14参照)。諸国民を繁栄させて大きくするのも、諸国民を滅ぼし連れ去るのも、すべては神によることであるのです。そして、そこには応報思想では説明できない、人間には恣意的としか思えない、神の知恵と力が働いているのです。25節に「彼らは光なき闇の中で手探りする。神は彼らを酔いどれのように迷わせる」とあります。これは、第5章14節のエリファズの言葉を念頭において語られたものです。第5章14節でエリファズはこう言っていました。「彼ら(曲がった者)は昼も闇に出会い/真昼にも夜のように手探りする」。エリファズによれば、曲がった者が自分の悪事のゆえに、真昼でも夜のように手探りします。しかし、ヨブによれば、人が真昼でも夜のように手探りするようになるのは、その人が神によって惑わされた結果であるのです。ここでヨブが言いたいことは、世界と人間の歴史は神の支配のもとにあること。そして、神の支配は応報思想では説明することができない神秘であるということです。私たちは、神が世界と人間の歴史を支配していることを信じています。そして、その神の支配は、応報思想ですべてを説明できるものではないのです(ヨハネ9:3「イエスはお答えになった。『本人が罪を犯したからでも、両親が罪を犯したからでもない。神の業がこの人に現れるためである』」参照)。しかし、私たちは、その神が気ままに振る舞って、人間の不幸を喜ぶ残酷な暴君のような神ではなく、愛の神であることを知っています。そのことは、獣や空の鳥や地の草や海の魚に尋ねても教えてくれません。私たちが「神は愛である」と知ったのは、神が御子イエス・キリストを遣わしてくださったことによるのです(一ヨハネ4:9「神は、独り子を世にお遣わしになりました。その方によって、わたしたちが生きるようになるためです」参照)。「神は、その独り子をお与えになるほどに、世を愛された。独り子を信じる者が一人も滅びないで、永遠の命を得るためである」(ヨハネ3:16)。そのことを信じて、私たちは、「我は天地の造り主、全能の父なる神を信ず」と告白しているのです(「使徒信条」参照)。

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