ヨブの嘆き① 2023年8月23日(水曜 聖書と祈りの会)

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ヨブの嘆き①

日付
説教
村田寿和 牧師
聖書
ヨブ記 3章1節~10節

聖句のアイコン聖書の言葉

3:1 やがてヨブは口を開き、自分の生まれた日を呪って、
3:2 言った。
3:3 わたしの生まれた日は消えうせよ。男の子をみごもったことを告げた夜も。
3:4 その日は闇となれ。神が上から顧みることなく/光もこれを輝かすな。
3:5 暗黒と死の闇がその日を贖って取り戻すがよい。密雲がその上に立ちこめ/昼の暗い影に脅かされよ。
3:6 闇がその夜をとらえ/その夜は年の日々に加えられず/月の一日に数えられることのないように。
3:7 その夜は、はらむことなく/喜びの声もあがるな。
3:8 日に呪いをかける者/レビヤタンを呼び起こす力ある者が/その日を呪うがよい。
3:9 その日には、夕べの星も光を失い/待ち望んでも光は射さず/曙のまばたきを見ることもないように。
3:10 その日が、わたしをみごもるべき腹の戸を閉ざさず/この目から労苦を隠してくれなかったから。ヨブ記 3章1節~10節

原稿のアイコンメッセージ

 今朝は、『ヨブ記』の第3章1節から10節より、「ヨブの呪い」という題でお話しします。

 前回、私たちは、ヨブの三人の友人たちが、災難に遭ったヨブを見舞い慰めるために、それぞれの国からやって来たことを学びました。彼らは、変わり果てたヨブの姿を見て、嘆きの声を上げ、衣を裂き、天に向かって塵を振りまき、頭にかぶりました。そして、ヨブの子供たちの死を悼んで、七日七晩、ヨブと共に地面に座っていたのです。しかし、彼らは、ヨブの激しい苦痛を見ると、話しかけることもできませんでした。ヨブと三人の友人たちは、無言のまま、七日七晩、地面に座っていたのです。その沈黙を破って、ヨブは口を開き語り始めます。ヨブは、自分の生まれた日を呪って、こう言うのです。

 3節から10節までをお読みします。

 わたしの生まれた日は消え失せよ。男の子をみごもったことを告げた夜も。その日は闇となれ。神が上から顧みることなく/光もこれを輝かすな。暗黒と死の闇がその日を贖って取り戻すがよい。密雲がその上に立ちこめ/昼の暗い影に脅かされよ。闇がその夜をとらえ/その夜は、はらむことなく/喜びの声もあがるな。日に呪いをかける者/レビヤタンを呼び起こす力ある者が/その日を呪うがよい。その日には、夕べの星も光を失い/待ち望んでも光は射さず/曙のまばたきを見ることもないように。その日が、わたしをみごもるべき腹の戸を閉ざさず/この目から労苦を隠してくれなかったから。

 ヨブは、全ての子供と全財産を失ったとき、地にひれ伏して、こう言いました。「わたしは裸で母の胎を出た。裸でそこに帰ろう。主は与え、主は奪う。主の御名はほめたたえられよ」(1:21)。また、ヨブはひどい皮膚病にかかったとき、妻に対してこう言いました。「わたしたちは、神から幸福をいただいたのだから、不幸もいただこうではないか」(2:10参照)。ヨブは、神を呪うことはしませんでした。しかし、そのヨブが、自分の生まれた日を呪うのです。ヨブは神を呪いませんが、自分の生まれた日を呪うことによって、造り主である神を間接的に非難するのです。

 私たちは、「誕生日、おめでとう(ハッピーバースディ)」と言って、誕生日をお祝いします。第1章4節によれば、ヨブの息子たちは、それぞれの誕生日に集まり、宴会をしていました。ヨブの息子たちは、互いに誕生日をお祝いしていたのです。そして、おそらく、ヨブも今までは、自分の誕生日を祝っていたと思います。神によって造られたこと。母の胎に宿り、生まれてきたことを感謝していたと思います。しかし、そのヨブが、自分の誕生日を呪うのです。「わたしの生まれた日は消え失せよ。男の子をみごもったことを告げた夜も」と言うのです。これは自分の存在そのものを否定する言葉です。ヨブの苦痛はそれほど激しかったのです。

 ヨブは、4節で、「その日は闇となれ。神が上から顧みることなく/光もこれを輝かすな」と言います。「その日」とは、ヨブが生まれた日であり、男の子をみごもったことを告げた夜のことです。「その日は闇となれ」。このヨブの言葉は、『創世記』の第1章3節、「神は言われた。『光あれ』」を背景にしています。神様は、「光あれ」と言って創造の御業を始められました。しかし、ヨブは「その日は闇となれ」と言って、神様の創造の御業を覆そうとするのです。また、5節の「暗黒と死の闇がその日を贖って取り戻すがよい。密雲がその上に立ちこめ/昼の暗いかげに脅かされよ」も、『創世記』の御言葉を背景にしています。『創世記』の第1章2節に、「地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、神の霊が水の面を動いていた」とあります。この闇は、神が光を創造されることによって、夜となります。しかし、ヨブは、「暗黒と死の闇がその日を贖って取り戻すがよい」と言って、神の創造の御業を巻き戻そうとするのです。

 6節と7節に、「闇がその夜を捕らえ/その夜は年の日々に加えられず/月の一日に数えられることのないように。その夜は、はらむことなく/喜びの声もあがるな」とあります。ここでの「夜」は、夫婦の交わりによって、ヨブが母の胎に宿った夜のことです。ヨブは、その夜が月の一日に数えられることのないようにと言うのです。そのために、日に呪いをかける者、レビヤタン(海の怪物)を呼び起こす力ある者の助けを求めるのです。

 9節に、「その日には、夕べの星も光を失い/待ち望んでも光は射さず/曙のまばたきを見ることもないように」とあります。ここでも、ヨブは『創世記』の御言葉を背景にして語っています。『創世記』は、「夕べがあり、朝があった」という言葉によって、創造の御業が進んでいきます。しかし、ヨブは、自分が母の胎に宿った夜は、明けることがないようにと言うのです。夕べがあっても朝が来ないのであれば、創造の御業は進まないわけですね。なぜ、そのようなことをヨブは願うのか。10節で、ヨブはこう言います。「その日が、わたしをみごもるべき腹の戸を閉ざさず/この目から労苦を隠してくれなかったから」。ヨブは、「自分が母の胎に宿ることがなければ、自分は生まれて来ることもなかった。生まれてこなければ、この目で労苦を見ることもなかった。だから、自分が母親の胎内に宿った日は暦から消え失せてしまえばよい。その夜は、明けることなく、朝を迎えなければよい」と言うのです。そのようにして、ヨブは、神に対して恨みつらみを述べるのです。ヨブが語りかけているのは、自分に対してでも、三人の友人に対してでもなく、自分を母の胎に宿らせた創造主である神に対してであるのです。ヨブの呪いの言葉は、造り主である神に対する最大級の抗議の言葉であるのです。

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