シェバの反逆 2023年3月08日(水曜 聖書と祈りの会)
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シェバの反逆
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- 村田寿和 牧師
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サムエル記下 20章1節~13節
聖書の言葉
20:1 そこにベニヤミン人ビクリの息子でシェバという名のならず者が居合わせた。彼は角笛を吹き鳴らして言った。「我々にはダビデと分け合うものはない。エッサイの子と共にする嗣業はない。イスラエルよ、自分の天幕に帰れ。」
20:2 イスラエルの人々は皆ダビデを離れ、ビクリの息子シェバに従った。しかし、ユダの人々はヨルダン川からエルサレムまで彼らの王につき従った。
20:3 ダビデはエルサレムの王宮に戻ると、家を守るために残した十人の側女を集め、監視付きの家に入れた。彼は側女たちの面倒は見たが、彼女たちのところに入ることはなかった。彼女たちは死ぬまで閉じ込められ、やもめのような生涯を送った。
20:4 王はアマサに命じた。「ユダの人々を三日のうちに動員してここに来なさい。」
20:5 アマサはユダの人々を動員するために出て行ったが、定められた期日に戻らなかった。
20:6 ダビデはアビシャイに言った。「我々にとってビクリの子シェバはアブサロム以上に危険だ。シェバが砦の町々を見つけて我々の目から隠れることがないように、お前は主君の家臣を率いて彼を追跡しなさい。」
20:7 ヨアブの兵、クレタ人とペレティ人、および勇士の全員が彼に従ってエルサレムを出発し、ビクリの息子シェバを追跡した。
20:8 彼らがギブオンの大石のところにさしかかったとき、アマサが彼らの前に現れた。ヨアブは武装して、さやに納めた剣を腰に帯びていたが、ヨアブが前に出ると、剣が抜けた。
20:9 ヨアブはアマサに、「兄弟、無事か」と声をかけ、口づけしようと右手でアマサのひげをつかんだ。
20:10 アマサはヨアブの手にある剣に気づかなかった。ヨアブは剣でアマサの下腹を突き刺した。はらわたが地に流れ出て、二度突くまでもなくアマサは死んだ。ヨアブと弟アビシャイはビクリの息子シェバの追跡を続けた。
20:11 ヨアブの従者の一人が傍らに立って言った。「ヨアブを愛する者、ダビデに味方する者はヨアブに続け。」
20:12 だが、アマサが道の真ん中に血にまみれて転がっていたので、兵士たちは皆立ち止まった。この男はそれを見てアマサを道から畑に移し、そこまで来た者がそれを見て立ち止まることのないように、その上に衣をかぶせた。
20:13 アマサが道から除かれると、兵は皆、ヨアブの後についてビクリの息子シェバを追跡した。サムエル記下 20章1節~13節
メッセージ
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今朝は、『サムエル記下』の第20章1節から13節より、「シェバの反逆」という題でお話しします。
前回、私たちは、ダビデ王を迎えるに当たって、イスラエルの人々とユダの人々との間に論争が生じたことを学びました。イスラエルの人々は、ダビデ王が自分たちをないがしろにしていると不平を言いました。そのようなイスラエルの人々の不平を背景にして、ベニヤミン人ビクリの息子シェバが反逆するのです。シェバは、サウル王と同じベニヤミン人でした。シェバは、角笛を吹き鳴らしてこう言います。「我々にはダビデと分け合うものはない。エッサイの子と共にする嗣業はない。イスラエルよ、自分の天幕に帰れ」。このように言って、シェバは、かつてイスラエルの長老たちがダビデと結んだ契約を破棄するのです。第5章3節に、こう記されていました。「イスラエルの長老たちは全員、ヘブロンの王のもとに来た。ダビデ王はヘブロンで主の御前に彼らと契約を結んだ。長老たちはダビデに油を注ぎ、イスラエルの王とした」。この契約には、ダビデがユダの人々を同じようにイスラエルの人々を扱うことが含まれていたと思います。しかし、ダビデ王がイスラエルの人々をないがしろにしていると感じたシェバは、契約を破棄して、ダビデを王として認めないのです。「我々にはダビデと分け合うものはない。エッサイの子と共にする嗣業はない」と言って、ダビデが王であることを否定するのです。さらには、「イスラエルよ、自分の天幕に帰れ」と言って、ダビデに従わないように、イスラエルの人々を誘導するのです。このシェバの言葉を聞いて、イスラエルの人々は皆ダビデを離れ、ビクリの息子シェバに従いました。しかし、ユダの人々はヨルダン川からエルサレムまでダビデ王に従いました。ダビデはエルサレムの王宮に戻ると、家を守るために残した十人の側女を集め、監視付きの家に入れました。この十人の側女は、アブサロムが王となったことを示すために関係を持った側女たちです。第16章20節から23節にこう記されていました。旧約の507ページです。
アブサロムはアヒトフェルに、「どのようにすべきか、お前たちで策を練ってくれ」と命じた。アヒトフェルはアブサロムに言った。「お父上の側女たちのところにお入りになるのがよいでしょう。お父上は王宮を守らせるため側女たちを残しておられます。あなたがあえてお父上の憎悪の的となられたと全イスラエルが聞けば、あなたについている者はすべて、奮い立つでしょう。」アブサロムのために屋上に天幕が張られ、全イスラエルの注目の中で、アブサロムは父の側女たちのところに入った。そのころ、アヒトフェルの提案は、神託のように受け取られていた。ダビデにとっても、アブサロムにとっても、アヒトフェルの提案はそのようなものであった。
この十人の側女たちが、その後どうなったのかが、今朝の御言葉に記されているのです。
今朝の御言葉に戻ります。旧約の515ページです。
ダビデは、アブサロムによって辱められた十人の側女たちを集め、監視付きの家に入れました。ダビデは、側女たちを養いましたが、彼女たちのところへ入ることはありませんでした。彼女たちは死ぬまで閉じ込められ、やもめのような生涯を送ったのです。
ダビデ王はアマサにこう命じます。「ユダの人々を三日のうちに動員してここに来なさい」。このアマサは、アブサロムが軍の司令官に任命した人物です。アマサはダビデの甥でした。ダビデは、ヨアブに代えてアマサを軍の司令官に任じていたのです。ダビデは、第19章14節で、こう言っていました。「アマサに対してはこう言ってくれ。お前はわたしの骨肉ではないか。ヨアブに代えてこれから先ずっと、お前をわが軍の司令官に任じないなら、神が幾重にもわたしを罰してくださるように」。この言葉のとおり、ダビデはアマサを軍の司令官に任じていたのです。そのアマサの最初の仕事が、三日のうちに、ユダの民を動員することであったのです。ダビデは、アマサに国民軍を募ることを命じたわけです。しかし、アマサは定められた期日になっても戻りませんでした。ユダの人々を動員するには、時間が足りなかったのです。それで、ダビデは、アビシャイにこう言います。「我々にとってビクリの子シェバはアブサロム以上に危険だ。シェバが砦の町々を見つけて我々の目から隠れることがないように、お前は主君の家臣を率いて彼を追跡しなさい」。ダビデは、シェバのことをアブサロム以上に危険であると言いました。それは、アブサロムの反逆がダビデ家の王位継承問題であったのに対して、シェバの反逆はイスラエルにおけるダビデ家の王権を否定するものであったからです。それゆえ、ダビデ王は、自分の家臣を率いてシェバを追跡するように、アビシャイに命じるのです。アビシャイは、ヨアブの兵士たち、クレタ人とペレティ人といった傭兵たち、ダビデの勇士の全員を率いて、ビクリの息子シェバを追跡します。彼らがギブオンの大石のところにさしかかったとき、アマサが彼らの前に現れました。アマサはユダの人々を動員して、彼らを追いかけて来たのでしょう。ヨアブは武装して、鞘に収めた剣を腰に帯びていましたが、ヨアブが前に出ると、剣が抜けました。ヨアブはアマサに、「兄弟、無事か」と声をかけ、口づけしようと右手でアマサのひげをつかみました。そして、ヨアブは、左手にある剣で、アマサの下腹を突き刺したのです。ヨアブにとってアマサは従兄弟(いとこ)であり、まさしく兄弟でした。また、ここで「無事か」と訳されている言葉は、「シャロームか」「平安か」とも訳せます。そのような平和の挨拶にみせかけて、ヨアブはアマサの下腹を剣で突き刺したのです。アマサのはらわたは地に流れ出て、二度突くまでもなくアマサは死にました。ヨアブが、だまし討ちをして人を殺すのは、これで二回目です。かつてヨアブは、ネルの子アブネルの下腹を突いて殺しました(3:27参照)。ギブオンの戦いで、アブネルがヨアブの弟アサエルを殺したので、その血の報復として、ヨアブはアブネルを殺したのです(3:30参照)。では、今朝の御言葉で、ヨアブは、なぜ、アマサを殺したのでしょうか。それは、アマサがかつての敵の軍隊の司令官であり、今は自分に代わってダビデの軍隊の司令官となっていたからです。ヨアブは、自分に代わって司令官となったアマサを憎んでおり、アマサを殺すことによって、司令官に返り咲こうとしたのです。そのヨアブの心をよく知っている従者の一人がこう言います。「ヨアブを愛する者、ダビデに味方する者はヨアブに続け」。このように、ヨアブはダビデの軍隊の司令官として振る舞うのです。しかし、ヨアブに従う者の足を妨げるものがありました。それが、道の真ん中に転がっていた血まみれのアマサの死体です。ユダの民は、自分たちを動員してここまで連れて来たアマサの死体を見て立ち止まりました。それで、ヨアブの従者は、民が立ち止まることがないように、その上に衣をかぶせて、道から除いたのです。このようにして、アマサは殺され、その遺体は葬られることなく、道端に捨て置かれたのです。
このヨアブの行為は、ダビデ王に対する反逆罪とも言えます。なぜなら、ダビデ王がアマサを軍隊の司令官として任命したからです。けれども、ダビデはヨアブを罰することはしませんでした。それは、次回学ぶことになりますが、ヨアブがシェバの首を持ち帰って来るからです。しかし、ダビデは、ヨアブの手に余る振る舞いを忘れることはありませんでした。死ぬ時が近づいたダビデは、王子ソロモンにこう言います。『列王記上』の第2章5節と6節をお読みします。旧約の528ページです。
またあなたは、ツェルヤの子ヨアブがわたしにしたことを知っている。彼がイスラエルの二人の将軍、ネルの子アブネルとイエテルの子アマサにしたことである。ヨアブは彼らを殺し、平和なときに戦いの血を流し、腰の帯と足の靴に戦いの血をつけた。それゆえ、あなたは知恵に従って行動し、彼が白髪をたくわえて安らかに陰府に下ることをゆるしてはならない。
この父ダビデの言葉に従って、ソロモンはヨアブを殺すのです。『列王記上』の第2章28節から33節をお読みします。旧約の530ページです。
この知らせ(ソロモン王の命令によってアドニヤが殺されたこと)がヨアブまで届いた。ヨアブはアブサロムには加担しなかったが、アドニヤに加担したので、主の天幕に逃げ込み、祭壇の角をつかんだ。ソロモン王は、ヨアブが主の天幕に逃げ込み、祭壇のそばにいることを知らされると、「行ってヨアブを討て」と命じ、ヨヤダの子ベナヤを遣わした。ベナヤは主の天幕に入り、ヨアブに、「王が、『出てこい』と命じておられる」と言ったが、彼は、「出て行かない。わたしはここで死んでもよい」と答えた。ベナヤはヨアブがこう言って答えたと、その結果を王に伝えた。王は言った。「彼の言うとおりにせよ。彼を打ち殺して地に葬れ。こうして、ヨアブが理由もなく流した血をわたしとわたしの父の家からぬぐい去れ。主が彼の流した血の報いを彼自身の頭にもたらしてくださるように。彼はわたしの父ダビデの知らないうちに、自分より正しく善良な二人の人物、イスラエルの軍の司令官、ネルの子アブネルと、ユダの軍の司令官、イエテルの子アマサを討ち、剣にかけて殺した。この二人の血の報いはヨアブとその子孫の頭にとこしえにもたらされ、ダビデとその子孫、その家、その王座には主によってとこしえに平和が続くように。」
このように、ヨアブは、アブネルとアマサの二人を剣にかけて殺した罪の刑罰を受けることになるのです。ダビデの息子ソロモンは、ヨアブを打ち殺すことによって、ヨアブの罪がダビデの家とは無関係であることを示すのです。