イスラエルとユダの論争 2023年3月01日(水曜 聖書と祈りの会)

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イスラエルとユダの論争

日付
説教
村田寿和 牧師
聖書
サムエル記下 19章41節~44節

聖句のアイコン聖書の言葉

19:41 王はギルガルへ進んだ。キムハムも共に行き、ユダの全兵士もイスラエルの兵士の半分も王と共に進んだ。
19:42 イスラエルの人々は皆、王のもとに来て、王に言った。「なぜ我々の兄弟のユダの人々があなたを奪い取り、王と御家族が直属の兵と共にヨルダン川を渡るのを助けたのですか。」
19:43 ユダの人々はイスラエルの人々に答えた。「王はわたしたちの近親だからだ。なぜこの事で腹を立てるのだ。我々が王の食物を食べ、贈り物をもらっているとでも言うのか。」
19:44 イスラエルの人々はユダの人々に言い返した。「王のことに関して、わたしたちには十の持ち分がある。ダビデ王に対してもお前たちより多くの分がある。なぜわたしたちをないがしろにするのだ。わたしたちの王を呼び戻そうと言ったのはわたしたちが先ではないか。」しかし、ユダの人々の言葉はイスラエルの人々の言葉よりも激しかった。サムエル記下 19章41節~44節

原稿のアイコンメッセージ

 今朝は、『サムエル記下』の第19章41節から44節より、「イスラエルとユダの論争」という題でお話しします。

 バルジライに別れを告げたダビデ王は、バルジライの息子キムハムを連れてギルガルへ進みました。ギルガルは、ヨルダン川の西側にある町です。ダビデ王はヨルダン川を渡って、ギルガルに進んだのです。そのダビデ王と共に、ユダの全兵士とイスラエルの兵の半分も進みました。ここで、「兵士」と訳されている言葉(アム)は「民」とも訳せます。ユダのすべての民がダビデと共に進んだのに対して、イスラエルの民は半分だけダビデと共に進んだのです。ユダの民は一致して、ダビデ王を支持しました。しかし、イスラエルの民の半分は、ダビデ王を支持しなかったのです。

 ダビデ王と共に進んだイスラエルの人々は皆、王のもとに来て、こう言いました。「なぜ我々の兄弟のユダの人々があなたを奪い取り、王と御家族が直属の兵と共にヨルダン川を渡るのを助けたのですか」。前にもお話ししたように、ユダとイスラエルは、主が油を注がれたダビデを王とすることによって一つとなっていました。ダビデは、最初に、ヘブロンで油を注がれてユダの王となりました。そして、その後(七年6か月後)に、同じヘブロンで油を注がれてイスラエルの王となったのです。イスラエルとユダは、ダビデを王とすることによって結びついていた連合国家であったのです。そのことを前提にして、イスラエルの民は、「なぜ我々の兄弟のユダの人々があなたを奪い取り、王と御家族が直属の兵と共にヨルダン川を渡るのを助けたのですか」と言ったのです。ヨルダン川の渡し場も、ギルガルも、イスラエルの領地にあります。そこに大勢のユダの民がやって来て、ダビデ王と家族と家臣たちがヨルダン川を渡ることを助けたことは、イスラエルの民にとって面白くなかったのです。イスラエルの人々は、ユダの人々がダビデ王を、まるで自分たちだけの王であるかのように扱ったことに不平を言ったのです。これに対して、ダビデ王は何も答えませんでした。けれども、私たちは、その背後で、糸を引いていたのがダビデ王であったことを知っています。第19章9節後半から15節までをお読みします。旧約の512ページです。

 イスラエル軍はそれぞれ自分の天幕に逃げ帰った。イスラエル諸部族の間に議論が起こった。「ダビデ王は敵の手から我々を救い出し、ペリシテの手からも助け出してくださった。だが今は、アブサロムのために国外に逃げておられる。我々が油を注いで王としたアブサロムは戦いで死んでしまった。それなのに、なぜあなたたちは黙っているばかりで、王を連れ戻そうとしないのか。」

 イスラエルのすべての人々の声はダビデ王の家にまで届いた。王は、祭司ツァドクとアビアタルのもとに人を遣わしてこう言った。「ユダの長老たちにこう言ってくれ。あなたたちは王を王宮に連れ戻すのに遅れをとるのか。あなたたちはわたしの兄弟、わたしの骨肉ではないか。王を連れ戻すのに遅れをとるのか。アマサに対してはこう言ってくれ。お前はわたしの骨肉ではないか。ヨアブに代えてこれから先ずっと、お前をわが軍の司令官に任じないなら、神が幾重にもわたしを罰してくださるように。」

 ダビデはユダのすべての人々の心を動かして一人の人の心のようにした。ユダの人々は王に使者を遣わし、「家臣全員と共に帰還してください」と言った。

 このように、ダビデ王自身が、ユダの長老たちに「あなたたちはわたしの兄弟、わたしの骨肉ではないか。王を連れ戻すのに遅れをとるのか」と言って、イスラエルに先立って、自分を王として迎え入れるように催促していたのです。ダビデは、エルサレムに戻るに際して、しっかりとした支持基盤を求めたのです。それが、同族であるユダの民であったのです。

 今朝の御言葉に戻ります。旧約の514ページです。

 イスラエルの民の言葉に、ユダの人々が答えます。「王はわたしたちの近親だからだ。なぜこの事で腹を立てるのだ。我々が王の食物を食べ、贈り物をもらっているとでも言うのか」。かつて、サウル王は、家臣たちにこう言いました。「ベニヤミンの子らよ、聞くがよい。エッサイの子が、お前たち皆に畑やぶどう畑を与え、皆を千人隊の長や、百人隊の長にするだろうか」(サムエル上22:7)。このサウル王の言葉から、サウル王は、同族のベニヤミン族を優遇していたことが分かります。しかし、ユダの人々は、「自分たちはダビデ王から食べ物や贈り物をもらってはいない」と言うのです。このユダの人々の言葉は、ダビデがイスラエルの王となるときに結んだ契約と関係があるようです。イスラエルの人々は、ダビデと契約を結んで、ダビデに油を注いで王としました(5:3参照)。その契約とは、ユダとイスラエルを公平に扱うという契約であったと考えられるのです。この契約を巡って、イスラエルは不平を言い、ユダ族は弁明をしているわけです。

 イスラエルの人々はユダの人々に言い返しました。「王のことに関して、わたしたちには十の持ち分がある。ダビデ王に対してもお前たちより多くの分がある。なぜわたしたちをないがしろにするのだ。わたしたちの王を呼び戻そうと言ったのはわたしたちが先ではないか」。イスラエル民族は、族長ヤコブ(イスラエル)の十二人の息子の子孫たちでありました。当時、ユダ王国はユダ族とシメオン族の二部族から成っていました(後のユダ王国はユダ族とベニヤミン族からなる。列王上12:22参照)。そして、イスラエルは残りの10部族から成っていたのです。それで、イスラエルの人々は、「王のことに関して、わたしたちには十の持ち分がある」と主張したのです。また、イスラエルの人々は、「王を呼び戻そうと言ったのは、自分たちの方が先である」と主張しています。確かに、ダビデ王を呼び戻そうと言ったのは、イスラエルが先でした。しかし、ダビデ王本人は、ここでは口を開きませんが、同族のユダに呼び戻されることを望んだのです。ダビデ王は、イスラエルの民を完全に信頼しているわけではないのです。事実、ダビデ王と共にギルガルに進んだのは、イスラエルの民の半分であったのです。

 今朝の御言葉の最後に、「しかし、ユダの人々の言葉はイスラエルの人々の言葉よりも激しかった」と記されています。イスラエルの人々とユダの人々の間で、王を巡って激しい論争が行われました。そして、この論争を背景にして、ベニヤミン族のシェバが、ダビデ王に反逆するのです。

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