ダビデ王を迎えたメフィボシェト 2023年2月15日(水曜 聖書と祈りの会)
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ダビデ王を迎えたメフィボシェト
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- 説教
- 村田寿和 牧師
- 聖書
サムエル記下 19章25節~31節
聖書の言葉
19:25 サウルの孫メフィボシェトも王を迎えに下って来た。彼は、王が去った日から無事にエルサレムに帰還する日まで、足も洗わず、ひげもそらず、衣服も洗わなかった。
19:26 彼が王を迎えに出ると、王は、「メフィボシェトよ、なぜお前はわたしに従って来なかったのか」と尋ねた。
19:27 彼は言った。「主君、王よ、僕に欺かれたのです。わたしは足が不自由ですから、ろばに鞍を置き、それに乗って王様に従って行こうと考えておりました。
19:28 ところがあの僕が主君、王にわたしのことを中傷したのです。しかし、主君、王は神の御使いのような方です。王の目に良いと映ることをなさってください。
19:29 父の家の者は皆、主君、王にとって死に値する者ばかりですのに、この僕を王の食卓に並ばせてくださったのです。この上、どのような権利があって王に助けを求めることができましょうか。」
19:30 王は言った。「もう自分のことを話す必要はない。わたしは命じる。お前とツィバで地所を分け合いなさい。」
19:31 メフィボシェトは王に言った。「主君、王が無事に王宮にお帰りになったのですから、すべてツィバのものとなってもかまいません。」サムエル記下 19章25節~31節
メッセージ
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今朝は、『サムエル記下』の第19章25節から31節より、「ダビデ王を迎えたメフィボシェト」という題でお話しします。
前回、私たちは、エルサレムに帰るダビデ王をシムイが出迎えたお話しを学びました。続く今朝の御言葉には、サウルの孫であるメフィボシェトがダビデ王を迎えに下って来たことが記されています。メフィボシェトは、王が去った日から無事にエルサレムに帰還する日まで、足も洗わず、ひげもそらず、衣服も洗いませんでした。そのようにして、メフィボシェトは王がエルサレムを去ってしまった悲しみを表したのです。また、そのようにして、メフィボシェトは王に対する忠誠心を表したのです。メフィボシェトが王を迎えに出ると、王はこう尋ねました。「メフィボシェトよ、なぜお前はわたしに従って来なかったのか」。この王の問いは、第16章に記されていたメフィボシェトの従者ツィバとの対話を背景にしています。第16章1節から4節までをお読みします。旧約の505ページです。
ダビデが山頂を少し下ったときに、メフィボシェトの従者ツィバが、ダビデを迎えた。彼は二頭の鞍を置いたろばに、二百個のパン、百房の干しぶどう、百個の夏の果物、ぶどう酒一袋を積んでいた。王が、「お前はこれらのものをどうするのか」と尋ねると、ツィバは、「ろばは王様の御家族の乗用に、パンと夏の果物は従者の食用に、ぶどう酒は荒れ野で疲れた者の飲料に持参しました」と答えた。王がツィバに、「お前の主人の息子はどこにいるのか」と尋ねると、ツィバは王に、「エルサレムにとどまっています。『イスラエルの家は今日、父の王座をわたしに返す』と申していました」と答えた。王はツィバに、「それなら、メフィボシェトに属する者はすべてお前のものにしてよろしい」と言った。ツィバは、「お礼申し上げます。主君である王様の御好意にあずかることができますように」と言った。
このツィバとの対話を背景にして、今朝の御言葉は記されているのです。では、今朝の御言葉に戻ります。旧約の513ページです。
前回触れませんでしたが、ツィバもダビデ王を出迎えるためにヨルダン川に来ていました。18節の後半に、「サウル家の従者であったツィバは、十五人の息子と二十人の召し使いを率いて、ヨルダン川を渡って、王の前に出た」と記されています。ダビデ王とメフィボシェトの対話は、ツィバの目の前で行われているのです。ツィバによれば、メフィボシェトは、ダビデがエルサレムから去ったことを、サウル家を再興するチャンスとしてエルサレムに留まりました。しかし、長い間、足を洗わず、ひげもそらず、衣服も洗っていないメフィボシェトの姿からは、そのようなことはとても考えられないわけです。それで、ダビデは、メフィボシェト本人に、「なぜお前はわたしに従って来なかったのか」と尋ねたのです。メフィボシェトはこう答えました。「主君、王よ、僕に欺かれたのです。わたしは足が不自由ですから、ろばに鞍を置き、それに乗って王様に従って行こうと考えておりました。ところがあの僕が主君、王にわたしのことを中傷したのです。しかし、主君、王は神の御使いのような方です。王の目に良いと映ることをなさってください。父の家の者は皆、主君、王にとって死に値する者ばかりですのに、この僕を王の食卓に並ばせてくださったのです。この上、どんな権利があって王に助けを求めることができましょうか」。ここで、メフィボシェトは、「主君、王」という言葉を何度も繰り返しています。より正確に翻訳すると「わたしの主君、王」と記されています。メフィボシェトは、自分の主君であり、王であるダビデに、身の潔白を主張します。そして、自分の主君であり王であるダビデに、すべての判断をゆだねるのです。メフィボシェトは、ダビデ王にとってサウル家に属する自分が死に値すること。それにもかかわらず、ダビデ王が自分を王の食卓に並ばせてくださった恵みを語ります。そのようにして、メフィボシェトは、ダビデ王に、父ヨナタンと結んだ契約を思い起こさせるのです。その上で、「どのような権利があって王に助けを求めることができましょうか」とメフィボシェトは言うのです。
王はこう言いました。「もう自分のことを話す必要はない。わたしは命じる。お前とツィバで地所を分け合いなさい」。かつて、ダビデは、ツィバに、「メフィボシェトに属する物はすべてお前のものにしてよろしい」と言いました(16:4)。しかし、メフィボシェトの主張を聞いて、ダビデは、地所をメフィボシェトとツィバの二人で分け合うように命じるのです。ダビデは、エルサレムを去ったとき、ろばや食べ物や飲み物を、ツィバから受け取った恩義がありました(16:1,2参照)。また、ダビデはマハナイムに着いたとき、メフィボシェトの世話をしていたロ・デバル出身のアミエルの子マキルから、寝具や食糧などを受け取った恩義がありました(17:27参照)。それゆえ、ダビデは、メフィボシェトとツィバで地所を分け合うように命じるのです。そのようにして、ダビデは、メフィボシェトからもツィバからも支持を取り付けるのです。ここにもダビデ王の極めて政治的な判断力が働いているのです。
メフィボシェトは、王にこう言いました。「主君、王が無事に王宮にお帰りになったのですから、すべてツィバのものとなってもかまいません」。ある研究者は、この言葉は本心からのものではなく、リップサービスのようなものだと言っています。しかし、私は本心からの言葉として受けとめたいと思います。ダビデ王が無事にエルサレムに帰還する日まで、衣服を洗わなかったメフィボシェトにとって、地所が半分戻ってくるよりも、ダビデ王が無事に戻って来たことは大きな喜びであったのです。