ダビデ王を迎えたシムイ 2023年2月08日(水曜 聖書と祈りの会)
問い合わせ
ダビデ王を迎えたシムイ
- 日付
-
- 説教
- 村田寿和 牧師
- 聖書
サムエル記下 19章16節~24節
聖書の言葉
19:16 王は帰途につき、ヨルダン川まで来た。ユダの人々は王を迎え、ヨルダン川を渡るのを助けようとして、ギルガルまで来ていた。
19:17 バフリム出身のあのベニヤミン人、ゲラの子シムイもユダの人々と共にダビデ王を迎えようと急いで下って来た。
19:18 シムイはベニヤミン族の千人を率いていた。サウル家の従者であったツィバは、十五人の息子と二十人の召し使いを率い、ヨルダン川を渡って、王の前に出た。
19:19 彼が渡し場を渡ったのは、王の目にかなうよう、渡るときに王家の人々を助けて川を渡らせるためであった。ゲラの子シムイは、王がヨルダン川を渡ろうとするとき、王の前にひれ伏し、
19:20 王に言った。「どうか、主君がわたしを有罪とお考えにならず、主君、王がエルサレムを出られた日にこの僕の犯した悪をお忘れください。心にお留めになりませんように。
19:21 わたしは自分の犯した罪をよく存じています。ですから、本日ヨセフの家のだれよりも早く主君、王をお迎えしようと下って参りました。」
19:22 ツェルヤの子アビシャイが答えた。「シムイが死なずに済むものでしょうか。主が油を注がれた方をののしったのです。」
19:23 だがダビデは言った。「ツェルヤの息子たちよ、ほうっておいてくれ。お前たちは今日わたしに敵対するつもりか。今日、イスラエル人が死刑にされてよいものだろうか。今日わたしがイスラエルの王であることを、わたし自身が知らないと思うのか。」
19:24 それからシムイに向かって、「お前を死刑にすることはない」と誓った。サムエル記下 19章16節~24節
メッセージ
関連する説教を探す
今朝は、『サムエル記下』の第19章16節から24節より、「ダビデ王を迎えたシムイ」という題でお話しします。
ユダの人々はダビデ王に使者を遣わし、「家臣全員と共に帰還してください」と言いました。このユダの人々の願いを受けて、ダビデ王は家臣全員と共に、ヨルダン川を渡って、エルサレムに帰ることにします。今、ダビデと家臣たちはヨルダン川の東側にいます。エルサレムを出て、ヨルダン川を渡り、東側のマハナイムにいるのです。そのダビデと家臣たちが、ヨルダン川を渡って、西側にあるエルサレムに帰ろうとしているのです。ダビデと家臣たちがヨルダン川まで来ると、ユダの人々は王を迎えました。ユダの人々は王がヨルダン川を渡るのを助けるために、ギルガルまで来ていたのです。ギルガルは、ヨルダン川の西側にある町です。ユダの人々は、ヨルダン川を渡ってはいないのです。ヨルダン川を渡って王を出迎えたのは、バフリム出身のベニヤミン人、ゲラの子シムイでした。シムイはベニヤミン族の千人を率いて、ダビデ王を迎えようと下って来たのです。シムイは、ヨルダン川を渡って、王の前にひれ伏します。なぜ、シムイはダビデ王を急いで出迎え、ヨルダン川を渡って、王の前にひれ伏したのでしょうか。それは、シムイがかつてダビデ王を呪った人物であったからです。第16章5節から14節までをお読みします。
ダビデ王がバフリムにさしかかると、そこからサウル家の一族の出で、ゲラの子、名をシムイという男が呪いながら出て来て、兵士、勇士が王の左右をすべて固めているにもかかわらず、ダビデ自身とダビデ王の家臣たち皆に石を投げつけた。シムイは呪ってこう言った。「出て行け。出て行け。流血の罪を犯した男、ならず者。サウル家のすべての血を流して王位を奪ったお前に、主は報復なさる。主がお前の息子アブサロムに王位を渡されたのだ。お前は災難を受けている。お前が流血の罪を犯した男だからだ。」
ツェルヤの子アビシャイが王に言った。「なぜあの死んだ犬に主君、王を呪わせておかれるのですか。行かせてください。首を切り落としてやります。」王は言った。「ツェルヤの息子たちよ、ほうっておいてくれ。主がダビデを呪えとお命じになったのであの男は呪っているのだろうから、『どうしてそんなことをするのか』と誰が言えよう。」ダビデは更にアビシャイと家臣の全員に言った。「わたしの身から出た子がわたしの命をねらっている。ましてこれはベニヤミン人だ。勝手にさせておけ。主の御命令で呪っているのだ。主がわたしの苦しみを御覧になり、今日の彼の呪いに代えて幸いを返してくださるかもしれない。」
ダビデと一行は道を進んだ。シムイはダビデと平行して山腹を進み、呪っては石を投げ、塵を浴びせかけた。王も同行の兵士も皆、疲れて到着し、そこで一息ついた。
このように、ダビデを呪ったシムイが、ダビデ王を誰よりも早く出迎えたのです。今朝の御言葉に戻ります。旧約の513ページです。
シムイは、ダビデ王の前にひれ伏し、こう言いました。「どうか、主君がわたしを有罪とお考えにならず、主君、王がエルサレムを出られた日にこの僕の犯した悪をお忘れください。心にお留めになりませんように。わたしは自分の犯した罪をよく存じています。ですから、本日ヨセフの家のだれよりも早く主君、王をお迎えしようと下って参りました」。このようにシムイは、手のひらを返したように、ダビデを「わが主君、王」と呼び、赦しを乞うのです。それに対して、ダビデ王ではなく、ダビデの妹であるツェルヤの子アビシャイはこう答えました。「シムイが死なずに済むものでしょうか。主が油を注がれた方をののしったのです」。アビシャイは、またしてもシムイを殺そうとするのです(16:9「ツェルヤの子アビシャイが王に言った。なぜあの死んだ犬に主君、王を呪わせておかれるのですか。行かせてください。首を切り落としてやります」参照)。しかし、ダビデは、こう言いました。「ツェルヤの息子たちよ、ほうっておいてくれ。お前たちは今日わたしに敵対するつもりか。今日、イスラエル人が死刑にされてよいものだろうか。今日わたしがイスラエルの王であることを、わたし自身が知らないと思うのか」。それからダビデは、シムイに向かって、「お前を死刑にすることはない」と誓ったのです。ダビデは、イスラエルの王として、シムイに、「お前を死刑にすることはない」という判決をくだしました。シムイは、ダビデ王が自分を殺すことはないであろうと考えていたようです。シムイは、ヨセフの家のだれよりも早くダビデ王を迎えるために下って来ました。「ヨセフの家」とは、ユダ族とシメオン族を除いたイスラエル10部族のことです(当時、ユダ王国はユダ族とシメオン族から成っていた)。シムイは、ヨセフの家で最初にダビデ王を出迎えた自分を、処刑することはあるまいと踏んでいたのです。シムイは、一人で来たのではありません。ベニヤミン族の千人を率いて来たのです。シムイをどのように扱うかは、ベニヤミン族をどのように扱うかを示すことになるわけです。ですから、ダビデ王がシムイに向かって「お前を処刑にすることはない」と誓ったのは、極めて政治的な判断であったのです。ダビデは、イスラエルの王として、ベニヤミン族を治めるために、シムイを処刑することはなかったのです。
では、ダビデがシムイの犯した悪を赦して、忘れたかと言えば、そうではありません。『列王記上』の第2章で、死期が近づいたとき、ダビデは王子ソロモンに、次のように命じています。旧約の528ページです。『列王記上』の第2章8節と9節をお読みします。
また、あなたのもとにはバフリム出身のベニヤミン人ゲラの子シムイがいる。彼はわたしがマハナイムに行ったとき、激しくわたしを呪った。だが、彼はわたしを迎えにヨルダン川まで下って来てくれた。わたしは彼に、『あなたを剣で殺すことはない』と主にかけて誓った。しかし今、あなたは彼の罪を不問に付してはならない。あなたは知恵ある者であり、彼に何をなすべきか分かっているからである。あの白髪を血に染めて陰府に送り込まなければならない。」
このようにダビデ王は、シムイが自分を呪ったことを覚えていたのです。そして、ダビデは、王子ソロモンに、その悪に報いてシムイを殺すように命じるのです。ダビデは、ソロモンの王権を危うくするサウル家の者を取り除くことを命じるのです。政治的な判断からシムイを処刑しなかったダビデは、政治的な判断からシムイを殺すように命じるのです。そして、ソロモンは、知恵を用いて、シムイが王の戒めに背いたという大義名分によって、シムイを処刑してしまうのです。今朝は、その所を読んで終わります。旧約の530ページ。『列王記上』の第2章36節から46節までをお読みします。
王は人を遣わし、シムイを呼んで、言った。「エルサレムに家を建てて、そこに住むがよい。そこからどこにも出て行ってはならない。もし出て行ってギドロン川を渡れば、死なねばならないと心得よ。お前の血はお前自身の頭に降りかかるであろう。」シムイは王に、「親切なお言葉です。僕は、わが主君、王の言われるとおりにいたします」と答えた。シムイはエルサレムに住んで多くの月日を過ごした。しかし、三年目が過ぎて、シムイの二人の僕が、ガトの王マアカの子アキシュのもとに逃げ去ったときのことである。この二人の僕がガトにいるとの知らせを受けると、シムイはろばに鞍を置き、二人の僕を捜し出すために、ガトのアキシュのもとへ行った。そしてシムイは、二人の僕をガトから連れ戻して来た。シムイがエルサレムからガトに行って帰って来たとの知らせがソロモンに届くと、王は人を遣わしてシムイを呼び、こう言った。「わたしはお前に主にかけて誓わせ、警告しておいたではないか。『どこであれ出て行けば、その日に死なねばならないと心得よ』と。そのときお前は、「親切なお言葉です。わたしは従います』と答えた。なぜ主にかけて誓ったこと、またわたしの授けた戒めを守らなかったのか。」更に王はシムイにこう言った。「お前はわたしの父ダビデに対して行ったすべての悪を知っているはずだ。お前の心はそれを知っている。主がお前の悪の報いをお前自身の頭にもたらしてくださるように。しかし、ソロモン王は祝福され、ダビデの王座はとこしえに主の御前にあって揺らぐことのないように。」
王がヨヤダの子ベナヤに命じたので、彼は出て行ってシムイを打ち殺した。
こうして王国はソロモンの手によって揺るぎないものとなった。
このように、シムイは、主が油を注がれた方をののしった悪の報いを受けることになるのです。ツェルヤの子アビシャイの言葉、「シムイが死なずに済むものでしょうか。主が油を注がれた方をののしったのです」という言葉は、長い時間を経て、ダビデの子ソロモンの手によって、実現することになるのです。