ヨルダン川を渡ったダビデ 2022年12月07日(水曜 聖書と祈りの会)

問い合わせ

日本キリスト改革派 羽生栄光教会のホームページへ戻る

ヨルダン川を渡ったダビデ

日付
説教
村田寿和 牧師
聖書
サムエル記下 17章14節~23節

聖句のアイコン聖書の言葉

17:14 アブサロムも、どのイスラエル人も、アルキ人フシャイの提案がアヒトフェルの提案にまさると思った。アヒトフェルの優れた提案が捨てられ、アブサロムに災いがくだることを主が定められたからである。
17:15 フシャイは祭司ツァドクとアビアタルに言った。「アヒトフェルはアブサロムとイスラエルの長老たちにこれこれの提案をしたが、わたしはこれこれの提案をした。
17:16 急いで、使者をダビデに送り、こう告げなさい。荒れ野の渡し場で夜を過ごさず、渡ってしまわなければなりません。王と王に従う兵士が全滅することのないように。」
17:17 ヨナタンとアヒマアツは、都に入って見つかってはならない、とエン・ロゲルにとどまっていた。使いの女が行って二人に知らせ、彼らがダビデ王に伝えに行くことにしたのである。
17:18 ところが一人の若者が彼らを見てアブサロムに知らせたので、彼らは急いで立ち去り、バフリムのある男の家に入った。その家の内庭に井戸があったので二人はその中に降り、
17:19 その家の妻が井戸の上に覆いをかけ、その上に脱穀した麦を広げた。何も気づかれることはなかった。
17:20 アブサロムの部下がその家の妻のところに来て、「アヒマアツとヨナタンはどこにいる」と言った。女が、「ここを通り過ぎて川の方へ行きました」と言うと、彼らは捜しに行き、発見できずにエルサレムへ戻った。
17:21 彼らが去った後、二人は井戸から上って来てダビデ王のもとに行き、こう知らせた。「直ちに川を渡ってください。アヒトフェルはあなたたちを討つためにこういう提案をしました。」
17:22 王は同行していた兵士全員と共に、直ちにヨルダンを渡った。夜明けの光が射すころには、ヨルダンを渡れずに残された者は一人もいなかった。
17:23 アヒトフェルは自分の提案が実行されなかったことを知ると、ろばに鞍を置き、立って家に帰ろうと自分の町に向かった。彼は家の中を整え、首をつって死に、祖先の墓に葬られた。サムエル記下 17章14節~23節

原稿のアイコンメッセージ

 前回、私たちは、アヒトフェルの優れた提案が捨てられたこと。それは、アブサロムに災いがくだることを主が定められたからであることを学びました。今朝の御言葉はその続きであります。

 フシャイは、かつてダビデからこう言われていました。「お前はわたしのためにアヒトフェルの助言を覆すことができる。都には祭司ツァドクとアビアタルもいて、お前と共に行動する。王宮で耳にすることはすべて祭司ツァドクとアビアタルに伝えてほしい。また、そこには彼らの二人の息子も共にいる。ツァドクの息子アヒマアツ、アビアタルの息子ヨナタンだ。耳にすることは何でもこの二人を通してわたしのもとに伝えるようにしてくれ」(15:34〜36)。このダビデの言葉のとおり、フシャイはアヒトフェルの助言を覆し、祭司のツァドクとアビアタルに王宮で耳にしたことを伝えます。フシャイは、祭司のツァドクとアビアタルにこう言います。「アヒトフェルはアブサロムとイスラエルの長老たちにこれこれの提案をしたが、わたしはこれこれの提案をした。急いで、使者をダビデに送り、こう告げなさい。荒れ野の渡し場で夜を過ごさず、渡ってしまわなければなりません。王と王に従う兵士が全滅することのないように」。このフシャイの言葉によると、この時、フシャイは、アブサロムが、アヒトフェルの提案を採用するか、自分の提案を採用するか知らなかったようです。かつてダビデは、祭司ツァドクをエルサレムに戻すにあたって、こう言いました。「わたしはあなたたちからの知らせを受けるまで、荒れ野の渡し場で待っている」(15:28)。そのことをフシャイもツァドクから聞いていたようです。もし、アブサロムがアヒトフェルの提案を採用して、実行に移せば、荒れ野の渡し場にいるダビデとその兵士たちは滅ぼされてしまいます。そのようなことがないように、フシャイは、「荒れ野の渡し場で夜を過ごさず、渡ってしまわなければなりません」と伝えるように言うのです。

 フシャイの言葉をダビデに伝えるのは、祭司の息子たちであるアヒマアツとヨナタンの役目でした。アヒマアツとヨナタンは、都エルサレムではなく、近くの村であるエン・ロゲルにとどまっていました。使いの女が行って、二人に知らせ、彼らがダビデ王に伝えにいくことになっていたのです。そして、実際、フシャイの言葉は、使いの女を通して、ヨナタンとアヒマアツに伝えられました。ところが、一人の若者が彼らを見てアブサロムに知らせたので、彼らは急いで立ち去り、バフリムのある男の家に入りました。バフリムは、ダビデを呪ったサウル家のシムイが住んでいる町です(16:5参照)。しかし、この男はダビデに好意を持っており、ダビデの部下である二人をかくまうのです。その家の内庭に井戸があったので二人はその中に降りました。その家の妻が井戸の上に覆いをかけ、その上に脱穀した麦を広げたので、誰にも気づかれませんでした。

 アブサロムの部下がその家の妻のところに来て、「アヒマアツとヨナタンはどこにいる」と尋ねると、女は「ここを通り過ぎて川の方へ行きました」と答えました。彼らは捜しに行きましたが、発見できずにエルサレムへと戻って行きました。彼らが去った後、二人は井戸から上って、ダビデ王のもとに行き、こう伝えます。「直ちに川を渡ってください。アヒトフェルはあなたたちを討つためにこういう提案をしました」。それを聞くと、ダビデは同行していた兵士全員と共に、直ちにヨルダン川を渡りました。「夜明けの光が射すころには、ヨルダンを渡れずに残された者は一人もいなかった」とあるように、今夜のうちにダビデに奇襲をかけるというアヒトフェルの提案は実行不可能なものとなってしまったのです。このようにして、ダビデとその兵士たちは全滅することを免れたのです。そして、それはフシャイや祭司とその息子たちだけではなく、名前も記されていない二人の女の働きによるものであったのです。エン・ロゲルにいるアヒマアツとヨナタンに、フシャイの言葉を伝えた使いの女と、バフリムでアヒマアツとヨナタンをかくまった女の働きがあってこそ、ダビデとその兵士たちは全滅を免れることができたのです。

 23節には、アヒトフェルのその後のことが記されています。アヒトフェルは自分の提案が実行されなかったことを知ると、ろばに鞍を置き、立って家に帰ろうと自分の町ギロに向かいました(15:12参照)。アヒトフェルは家の中を整え(遺書を残して)、首をつって死んだのです。アヒトフェルは、ダビデ王を討ち取る唯一の機会が失われてしまったことを悟ったのです。アヒトフェルは、ダビデがアブサロムに勝利すること。そうすれば、自分は必ず処刑されることを悟って、自分の手で人生に幕をおろしたのでした。このアヒトフェルの姿は、ダビデの子孫であるイエス・キリストを裏切ったイスカリオテのユダの姿に似ています。『マタイによる福音書』によれば、ユダは、イエス様に有罪の判決が下ったことを知って後悔し、銀貨30枚を祭司長たちに返そうとして、「わたしは罪のない人の血を売り渡し、罪を犯しました」と言いました。しかし、祭司長たちは、「我々の知ったことではない。お前の問題だ」と言ったのです。新改訳2017の翻訳によれば、「われわれの知ったことか。自分で始末することだ」と言ったのです。そこで、ユダは銀貨を神殿に投げ込んで立ち去り、首をつって死んだのです。ユダは、自分で自分の罪を始末した。自分で自分の罪を裁き、死刑の判決をくだしたのです。アヒトフェルも、ユダも首をつって死んだことは同じでも、その経緯(いきさつ)は違います。しかし、主に裁きをゆだねることなく、自分で自分を裁いた点においては同じであると言えます。アヒトフェルも、首をつることによって、自分で自分を裁いたのです。第16章23節に、「アヒトフェルの提案は、神託のように受け取られていた」と記されていました。もしかしたら、アヒトフェル自身もそのように考えていたのかも知れません。アヒトフェルは、神様の裁きに委ねることなく、自分が神であるかのように、自分を裁いてしまったのです。アヒトフェルは、自分が神であるかのように、人生の終わりの日を定めてしまったのです(コヘレト3:1、2「何事にも時があり/天の下の出来事にはすべて定められた時がある。生まれる時、死ぬとき」参照)。

関連する説教を探す関連する説教を探す