アブサロムに取り入るフシャイ 2022年11月09日(水曜 聖書と祈りの会)

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アブサロムに取り入るフシャイ

日付
説教
村田寿和 牧師
聖書
サムエル記下 16章15節~23節

聖句のアイコン聖書の言葉

16:15 アブサロムはイスラエル人の兵士を全員率いてエルサレムに入城し、アヒトフェルも共にいた。
16:16 ダビデの友、アルキ人フシャイはアブサロムのもとに来て、アブサロムに向かって言った。「王様万歳、王様万歳。」
16:17 アブサロムはフシャイに言った。「お前の友に対する忠実はそのようなものか。なぜ、お前の友について行かなかったのか。」
16:18 フシャイはアブサロムに答えた。「いいえ。主とここにいる兵士とイスラエルの全員が選んだ方にわたしは従い、その方と共にとどまります。
16:19 それでは、わたしは誰に仕えればよいのでしょう。御子息以外にありえましょうか。お父上にお仕えしたようにあなたにお仕えします。」
16:20 アブサロムはアヒトフェルに、「どのようにすべきか、お前たちで策を練ってくれ」と命じた。
16:21 アヒトフェルはアブサロムに言った。「お父上の側女たちのところにお入りになるのがよいでしょう。お父上は王宮を守らせるため側女たちを残しておられます。あなたがあえてお父上の憎悪の的となられたと全イスラエルが聞けば、あなたについている者はすべて、奮い立つでしょう。」
16:22 アブサロムのために屋上に天幕が張られ、全イスラエルの注目の中で、アブサロムは父の側女たちのところに入った。
16:23 そのころ、アヒトフェルの提案は、神託のように受け取られていた。ダビデにとっても、アブサロムにとっても、アヒトフェルの提案はそのようなものであった。サムエル記下 16章15節~23節

原稿のアイコンメッセージ

 今朝は、『サムエル記下』の第16章15節から23節より、「アブサロムに取り入るフシャイ」という題でお話しします。

 ヘブロンで王となったアブサロムはイスラエル人の兵士を全員率いてエルサレムに入城しました。かつてダビデの顧問であったギロ人アヒトフェルも共にいました。ダビデの友、アルキ人フシャイはアブサロムのもとに来て、アブサロムに向かって「王様万歳、王様万歳」と言いました。フシャイは、ダビデからスパイとしてアブサロムの動向を探るように命じられていました。また、アヒトフェルの助言を覆すよう命じられていました。第15章33節から36節にはこう記されていました。

 ダビデは彼に言った。「わたしと一緒に来てくれてもわたしの重荷になるだけだ。都に戻って、アブサロムにこう言ってくれ。『王よ、わたしはあなたの僕です。以前、あなたの父上の僕でしたが、今からはあなたの僕です』と。お前はわたしのためにアヒトフェルの助言を覆すことができる。都には祭司ツァドクとアビアタルもいて、お前と共に行動する。王宮で耳にすることはすべて祭司ツァドクとアビアタルに伝えてほしい。また、そこには彼らの二人の息子も共にいる。ツァドクの息子アヒマアツ、アビアタルの息子ヨナタンだ。耳にすることは何でもこの二人を通してわたしのもとに伝えるようにしてくれ。」

 フシャイは、ダビデ王からこのような密命を受けていたのです。そして、その密命を実行するために、フシャイは、アブサロムに向かって「王様万歳、王様万歳」と言ったのです。

 アブサロムはフシャイに、こう言いました。「お前の友に対する忠実はそのようなものか。なぜ、お前の友について行かなかったのか」。フシャイは、「王の友」という職務についていました。そのことを揶揄して、「お前はダビデの友ではなかったのか」と言うのです。フシャイはアブサロムにこう答えました。「いいえ。主とここにいる兵士とイスラエルの全員が選んだ方にわたしは従い、その方と共にとどまります。それでは、わたしは誰に仕えればよいのでしょう。御子息以外にありえましょうか。お父上にお仕えしたようにあなたにお仕えします」。このように、フシャイは、アブサロムに仕えることを明言し、アブサロムに取り入ったのです。しかし、私たちは、ここでフシャイが、ダビデに言われたとおりに語っているに過ぎないことを知っています。フシャイは、ダビデに命じられていたとおりに、アブサロムに対して「王よ、わたしはあなたの僕です。以前、あなたの父上の僕でしたが、今からはあなたの僕です」と言ったのです。フシャイは、このように語りながらも、実は友であるダビデに忠実であったのです。

 アブサロムはアヒトフェルにこう命じました。「どのようにすべきか、お前たちで策を練ってくれ」。アヒトフェルは、顧問団の長であったようです。アヒトフェルはアブサロムにこう言いました。「お父上の側女たちのところにお入りになるのがよいでしょう。お父上は王宮を守らせるため側女たちを残しておられます。あなたがあえてお父上の憎悪の的となられたと全イスラエルが聞けば、あなたについている者はすべて、奮い立つでしょう」。当時は、新しく王になった者は前の王の後宮(ハーレム)を引き継ぐことが行われていました。第12章8節のナタンの言葉を読むと、ダビデもサウルの後宮(ハーレム)を引き継いだようです。第12章8節で、ナタンはダビデに次のような主の言葉を語っています。12章7節後半から読みます。「わたしがあなたをサウルの手から救い出し、あなたの主君であった者の家をあなたに与え、その妻たちをあなたのふところに置き、イスラエルとユダの家をあなたに与えたのだ」。私たちは、この主の御言葉から、ダビデがサウルの後宮(ハーレム)を自分のものとしたことが分かるのです。

 しかし、ダビデがサウルの後宮(ハーレム)を引き継いだことと、アブサロムがダビデの後宮(ハーレム)を引き継ぐことは、少し異なります。なぜなら、アブサロムはダビデの息子であり、王家が代わるのではなく、王位継承であるからです。父の寝床を子が汚すことは、ヤコブの長子であるルベンが犯した罪でもありました。『創世記』の第35章22節にこう記されています。旧約の61ページです。

イスラエルがそこに滞在していたとき、ルベンは父の側女ビルハのところへ入って寝た。このことはイスラエルの耳にも入った。

このことをイスラエル(ヤコブ)はずっと覚えていて、第49章3節と4節で、ルベンにこう言うのです。旧約の89ページです。

ルベンよ、お前はわたしの長子/わたしの勢い、命の力の初穂。気位が高く、力も強い。お前は水のように奔放で/長子の誉れを失う。お前は父の寝台に上った。あのとき、わたしの寝台に上り/それを汚した。

このようにルベンは、父ヤコブの側女と関係を持ったゆえに、長子の誉れを失ったのです。父の側女と関係を持つことは、イスラエルにおいて憎むべきことであったのです。その憎むべきことを、あえてするように、アヒトフェルは助言するのです。

 では、今朝の御言葉に戻ります。旧約の507ページです。

 父ダビデの側女のところに入ることは、父ダビデの憎悪の的となることであり、その関係が修復不可能であることを示します。そのことを全イスラエルが知れば、アブサロムについている者は、もはや後戻りできないことを知って奮い立つと、アヒトフェルは言うのです。そのことによって、言わば背水の陣を敷くように助言したのです。

 アブサロムのために屋上に天幕が張られ、全イスラエルの注目の中で、アブサロムは父の側女たちのところに入りました。このようにして、かつてナタンがダビデに語った主の御言葉が実現したのです。第12章9節から12節に、こう記されていました。旧約の497ページです。

 「なぜ主の言葉を侮り、わたしの意に背くことをしたのか。あなたはヘト人ウリヤを剣にかけ、その妻を奪って自分の妻とした。ウリヤをアンモン人の剣で殺したのはあなただ。それゆえ、剣はとこしえにあなたの家から去らないであろう。あなたがわたしを侮り、ヘト人ウリヤの妻を奪って自分の妻としたからだ。』主はこう言われる。『見よ、わたしはあなたの家の者の中からあなたに対して悪を働く者を起こそう。あなたの目の前で妻たちを取り上げ、あなたの隣人に与える。彼はこの太陽の下であなたの妻たちと床を共にするであろう。あなたは隠れて行ったが、わたしはこれを全イスラエルの前で、太陽の下で行う。』」

 このナタンの預言が、アヒトフェルの助言に従ったアブサロムによって、実現したのです。

 今朝の御言葉に戻ります。旧約の507ページです。

 今朝の御言葉の最後、23節にこう記されています。

そのころ、アヒトフェルの提案は、神託のように受け取られていた。ダビデにとっても、アブサロムにとっても、アヒトフェルの提案はそのようなものであった。

神託とは神の言葉ということです。この23節は、微妙な書き方をしていると思います。アヒトフェルの提案は神の言葉であるとは記されておらず、神の言葉であるかのように受け取られていたと書いてあるからです。全イスラエルは、ヤコブの側女と寝たルベンが長子の誉れを失っていたことを知っていました。その全イスラエルの前で、父ダビデの側女たちと関係を持つことが神の言葉であるとは考えにくいことです。ですから、ここで言われていることは、アヒトフェルの提案は、神の言葉であるかのように影響力を持っていたということです。そのようなアヒトフェルの提案をフシャイは覆すことができるのか。そのことを次回、ご一緒に学びたいと思います。

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