アブサロムを赦したダビデ 2022年9月21日(水曜 聖書と祈りの会)
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アブサロムを赦したダビデ
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- 説教
- 村田寿和 牧師
- 聖書
サムエル記下 14章25節~33節
聖書の言葉
14:25 イスラエルの中でアブサロムほど、その美しさをたたえられた男はなかった。足の裏から頭のてっぺんまで、非のうちどころがなかった。
14:26 毎年の終わりに髪を刈ることにしていたが、それは髪が重くなりすぎるからで、刈り落とした毛は王の重りで二百シェケルもあった。
14:27 アブサロムには三人の息子と一人の娘が生まれた。娘はタマルという名で、大変美しかった。
14:28 アブサロムはエルサレムで二年間過ごしたが、王の前に出られなかった。
14:29 アブサロムは、ヨアブを王のもとへの使者に頼もうとして人をやったが、ヨアブは来ようとせず、二度目の使いにも来ようとしなかった。
14:30 アブサロムは部下に命じた。「見よ、ヨアブの地所はわたしの地所の隣で、そこに大麦の畑がある。行ってそこに火を放て。」アブサロムの部下はその地所に火を放った。
14:31 ヨアブは立ってアブサロムの家に来た。「あなたの部下がわたしの地所に火を放つとは何事です」と彼が言うと、
14:32 アブサロムはヨアブに言った。「わたしはお前に来てもらおうと使いをやった。お前を王のもとに送って、『何のためにわたしはゲシュルから帰って来たのでしょうか、これではゲシュルにいた方がよかったのです』と伝えてもらいたかったのだ。王に会いたい。わたしに罪があるなら、死刑にするがよい。」
14:33 ヨアブは王のもとに行って報告した。王はアブサロムを呼び寄せ、アブサロムは王の前に出て、ひれ伏して礼をした。王はアブサロムに口づけした。サムエル記下 14章25節~33節
メッセージ
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今朝は、『サムエル記下』の第14章25節から33節より、「アブサロムを赦したダビデ」という題でお話しします。
25節から27節までをお読みします。
イスラエルの中でアブサロムほど、その美しさをたたえられた男はなかった。足の裏から頭のてっぺんまで、非のうちどころがなかった。毎年の終わりに髪を刈ることにしていたが、それは髪が重くなりすぎるからで、刈り落とした毛は王の重りで二百シェケルもあった。アブサロムには三人の息子と一人の娘が生まれた。娘はタマルという名で、大変美しかった。
ここには、アブサロムの容姿について、また、その子供たちについて記されています。アブサロムは足の裏から頭のてっぺんまで、非のうちどころのない美しい男でした。アブサロムは、髪の毛を長く伸ばしていました。毎年の終わりに「刈り落とした毛は王の重りで二百シェケルもあった」とあります。二百シェケルはおよそ2キログラムにあたりますから、アブサロムは長髪であったのです(1シェケルは11.4グラム)。長い髪は力強さの象徴であったのです。また、アブサロムには三人の息子がいました。この息子たちは幼くして死んでしまったようです。と言いますのも、第18章18節に、「アブサロムは生前、王の谷に自分のために石柱を立てていた。跡継ぎの息子がなく、名が絶えると思ったからで、この石柱に自分の名を付けていた」と記されているからです。アブサロムは娘に、タマルという名をつけました。アブサロムは、アムノンによって辱められた妹の名前を娘につけたのです。ちなみに、タマルとは、「しゅろの木」という意味です。アブサロムは、美しく、力強い容姿であり、息子三人と娘一人を持つ立派な王子であったのです。
28節からは、24節までのお話しの続きが記されています。
アブサロムは、ヨアブによってエルサレムに連れ戻されましたが、王の前にでることは許されませんでした。それが2年も続いていたのです。それで、アブサロムは、ヨアブを王のもとに遣わそうとして、使いの者をやりましたが、ヨアブは来ませんでした。二度目に呼んでも来ようとはしませんでした。ヨアブは、ダビデ王がアブサロムに会おうとしない以上、自分も会わない方がよいと考えたのでしょう。そこでアブサロムは部下にこう命じました。「見よ、ヨアブの地所はわたしの地所の隣で、そこに大麦の畑がある。行ってそこに火を放て」。アブサロムの部下は、言われたとおりヨアブの畑に火を放ちました。このようにして、アブサロムは、ヨアブが自分のもとを訪ねてくるようにしたのです。
ヨアブは立ってアブサロムの家に来て、こう言いました。「あなたの部下がわたしの地所に火を放つとは何事です」。アブサロムはヨアブにこう言いました。「わたしはお前に来てもらおうと使いをやった」。ここに、アブサロムがヨアブの地所に火を放った理由が記されています。アブサロムは、「わたしはお前に来てもらおうと使いをやった。しかし、お前は来てくれなかった。それで、お前に来てもらうために、しかたなくお前の地所に火を放ったのだ」と言うのです。続けてアブサロムはこう言います。「お前を王のもとに送って、『何のためにわたしはゲシェルから帰って来たのでしょうか、これではゲシェルにいた方がよかったのです』と伝えてもらいたかったのだ。王に会いたい。わたしに罪があるなら、死刑にするがよい」。ここには、アブサロムがヨアブに来てもらおうと使いをやった目的が記されています。アブサロムは、王の意志によって、ゲシュルからエルサレムに帰って来ました。おそらく、アブサロムは、王位を継ぐ者として、王は自分を連れ戻したと考えたのでしょう。しかし、王はアブサロムを連れ戻したにもかかわらず、王の前に出ることを許しませんでした。そのような中途半端な状態に、アブサロムは嫌気がさしていたのです。アブサロムは、王に会って、完全な赦しを得たかったのです。けれども、アブサロムは、アムノンを殺したことを悪かったとは思っていなかったようです。と言いますのも、アブサロムは、「わたしに罪があるなら、死刑にするがよい」と言っているからです。アブサロムは、妹タマルを力ずくで辱めたアムノンを、王であり父であるダビデが裁いてくれると期待していました。しかし、2年が過ぎても、王は何もしませんでした。それで、アブサロムは、妹を辱めて妻にも迎えないアムノンを殺害したのです。アブサロムにとって、それは正当な報復であったのです。
ヨアブは王のもとに行って、アブサロムの言葉を伝えました。そして、王はアブサロムを呼び寄せたのです。アブサロムは王の前に出て、ひれ伏して礼をしました。これは服従を表すジェスチャー(身振り)です。そして、王はアブサロムに口づけしたのです。これは赦しと和解を表すジェスチャー(身振り)です。ここには、王とアブサロムとの間に交わされた言葉は記されていません。ただジェスチャー(身振り)だけが記されています。そして、このことは、ダビデがアブサロムを赦したことが、形式的なものであり、心からのものではなかったことを示しているのです。アブサロムは、アムノンを殺害したことを、心から悪いこととは思っていませんでした。そのようなアブサロムをダビデも心から赦すことはできなかったのです。しかし、形式的なものであったとしても、これにより、アブサロムは王子としての地位を回復し、王宮に出入りすることができるようになったのです。