ナタンの叱責 2022年7月13日(水曜 聖書と祈りの会)

問い合わせ

日本キリスト改革派 羽生栄光教会のホームページへ戻る

ナタンの叱責

日付
説教
村田寿和 牧師
聖書
サムエル記下 12章1節~12節

聖句のアイコン聖書の言葉

12:1 主はナタンをダビデのもとに遣わされた。ナタンは来て、次のように語った。「二人の男がある町にいた。一人は豊かで、一人は貧しかった。
12:2 豊かな男は非常に多くの羊や牛を持っていた。
12:3 貧しい男は自分で買った一匹の雌の小羊のほかに/何一つ持っていなかった。彼はその小羊を養い/小羊は彼のもとで育ち、息子たちと一緒にいて/彼の皿から食べ、彼の椀から飲み/彼のふところで眠り、彼にとっては娘のようだった。
12:4 ある日、豊かな男に一人の客があった。彼は訪れて来た旅人をもてなすのに/自分の羊や牛を惜しみ/貧しい男の小羊を取り上げて/自分の客に振る舞った。」
12:5 ダビデはその男に激怒し、ナタンに言った。「主は生きておられる。そんなことをした男は死罪だ。
12:6 小羊の償いに四倍の価を払うべきだ。そんな無慈悲なことをしたのだから。」
12:7 ナタンはダビデに向かって言った。「その男はあなただ。イスラエルの神、主はこう言われる。『あなたに油を注いでイスラエルの王としたのはわたしである。わたしがあなたをサウルの手から救い出し、
12:8 あなたの主君であった者の家をあなたに与え、その妻たちをあなたのふところに置き、イスラエルとユダの家をあなたに与えたのだ。不足なら、何であれ加えたであろう。
12:9 なぜ主の言葉を侮り、わたしの意に背くことをしたのか。あなたはヘト人ウリヤを剣にかけ、その妻を奪って自分の妻とした。ウリヤをアンモン人の剣で殺したのはあなただ。
12:10 それゆえ、剣はとこしえにあなたの家から去らないであろう。あなたがわたしを侮り、ヘト人ウリヤの妻を奪って自分の妻としたからだ。』
12:11 主はこう言われる。『見よ、わたしはあなたの家の者の中からあなたに対して悪を働く者を起こそう。あなたの目の前で妻たちを取り上げ、あなたの隣人に与える。彼はこの太陽の下であなたの妻たちと床を共にするであろう。
12:12 あなたは隠れて行ったが、わたしはこれを全イスラエルの前で、太陽の下で行う。』」サムエル記下 12章1節~12節

原稿のアイコンメッセージ

 今朝は、『サムエル記下』の第12章1節から12節より、「ナタンの叱責」という題でお話しします。

 先週学んだ、第11章27節にこう記されていました。「喪が明けると、ダビデは人をやって彼女を王宮に引き取り、妻にした。彼女は男の子を産んだ。ダビデのしたことは主の御心に適わなかった」。ダビデのしたことは、主の目に悪と映りました。それゆえ、主は、ダビデのもとに、預言者ナタンを遣わされるのです。

 ナタンは、ダビデに次のように語ります。「二人の男がある町にいた。一人は豊かで、一人は貧しかった。豊かな男は非常に多くの羊や牛を持っていた。貧しい男は自分で買った一匹の雌の小羊のほかに/何一つ持っていなかった。彼はその小羊を養い/小羊は彼のもとで育ち、息子たちと一緒にいて/彼の皿から食べ、彼の椀から飲み/彼のふところで眠り、彼にとって娘のようだった。ある日、豊かな男に一人の客があった。彼は訪れて来た旅人をもてなすのに/自分の羊や牛を惜しみ/貧しい男の小羊を取り上げて/自分の客に振る舞った」。ここには記されていませんが、豊かな男と貧しい男との間には、主従(しゅじゅう)関係があったようです。豊かな男は、自分が持つ権力によって、貧しい男から娘のようにかわいがっていた小羊を取り上げ、自分の客に振る舞ったのです。この話を聞いて、ダビデは豊かな男に激怒しました。そして、ナタンにこう言うのです。「主は生きておられる。そんなことをした男は死罪だ。小羊の償いに四倍の価を払うべきだ。そんな無慈悲なことをしたのだから」。ここで、ダビデは、王として、裁きをしています。「主は生きておられる」と誓い、判決を言い渡すのです。ダビデは、豊かな男がしたことが死に値する無慈悲な行為であると言います。そして、律法に従って、盗んだ小羊を四倍にして返すべきであると言うのです(出エジプト21:37「人が牛あるいは羊を盗んで、これを屠るか、売るかしたならば、牛一頭の代償として牛五頭、羊一匹の代償として羊四匹で償わねばならない」参照)。そのダビデに、ナタンはこう言います。「その男はあなただ」。「あなたこそ、死に値する無慈悲なことをした豊かな男だ」と、ナタンは、ダビデに言うのです。そして、イスラエルの神、主の御言葉を告げるのです。「あなたに油を注いでイスラエルの王としたのはわたしである。わたしがあなたをサウルの手から救い出し、あなたの主君であった者の家をあなたに与え、その妻たちをあなたのふところに置き、イスラエルとユダの家をあなたに与えたのだ。不足なら、何であれ加えたであろう。なぜ主の言葉を侮り、わたしの意に背くことをしたのか。あなたはヘト人ウリヤを剣にかけ、その妻を奪って自分の妻とした。ウリヤをアンモン人の剣で殺したのはあなただ。それゆえ、剣はとこしえにあなたの家から去らないであろう。あなたがわたしを侮り、ヘト人ウリヤの妻を奪って自分の妻としたからだ」。主は、預言者サムエルによって、羊飼いであるダビデに油を注いでイスラエルの王としました。そして、サウルの手から救い、サウルの王権をダビデに与えられたのです。ダビデがサウルの妻たちを自分の妻としたことは、ここにしか記されていないので、よく分かりません。けれども、ダビデは、多くの妻と側女を、主から与えられていました。それにも関わらず、ダビデは、主の御言葉を侮り、主の御意志に背くことをしたのです。新改訳2017は、9節を次のように翻訳しています。「どうして、あなたは主の言葉を蔑み、わたしの目に悪であることを行ったのか」。主は、ダビデをイスラエルの王とし、サウルの王権を継がせ、多くの妻たちを与えられました。そのように、豊かな恵みを与えられていたのです。しかし、ダビデは、その主の御言葉を軽んじて、主の目に悪であることを行ったのです。ダビデが軽んじた主の御言葉とは、十戒の第六戒と第七戒と第十戒であります(出エジプト20章参照)。「殺してはならない」。「姦淫してはならない」。「隣人の家を貪ってはならない」。この主の御言葉を軽んじて、ダビデは主の目に悪であることを行ったのです。ダビデは、ヘト人ウリヤを剣にかけ、その妻を奪って自分の妻としたのです。ダビデは、ヨアブの使者に「そのことを悪かったと見なす必要はない。剣があればだれかが餌食になる」と伝えさせました。しかし、ダビデのしたことは、主の目に悪と映ることであり、主は、ダビデに「ウリヤをアンモン人の剣で殺したのはあなただ」と言われるのです。そして、主は、ダビデに罰を与えられるのです。この罰は、ダビデ契約を前提にした特別な罰であります。「それゆえ、剣はとこしえにあなたの家から去らないであろう。あなたがわたしを侮り、ヘト人ウリヤの妻を奪って自分の妻としたからだ」。この後、ダビデの家は争い合うことになります。長男のアムノンは三男のアブサロムに殺されてしまいます。また、息子アブサロムは、父ダビデに反逆します。このように、ダビデの家では、争い、剣が去らなくなるのです。そして、そのことは、ダビデが主を侮り、ウリヤをアンモン人の剣にかけたゆえであるのです。

 続けて、ナタンはこう言います。11節から。「主はこう言われる。『見よ、わたしはあなたの家の者の中からあなたに対して悪を働く者を起こそう。あなたの目の前で妻たちを取り上げ、あなたの隣人に与える。彼はこの太陽の下であなたの妻たちと床を共にするであろう。あなたは隠れて行ったが、わたしはこれを全イスラエルの前で、太陽の下で行う』」。これも、ダビデ契約を前提とする、神様からの特別な罰です。第16章に、アブサロムが、全イスラエルの注目の中で、父ダビデの側女たちのところに入ったことが記されています(16:20~23参照)。このことは、ダビデがウリヤの妻を奪って自分の妻としたことに由来するのです。

 私たちは、主の御言葉のとおりになったことを知っています。そのことは、私たちに、主は人から侮られることは決してないことを教えているのです(ガラテヤ6:7「神は、人から侮られることはありません」参照)。

関連する説教を探す関連する説教を探す