ダビデの罪② 2022年7月06日(水曜 聖書と祈りの会)

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ダビデの罪②

日付
説教
村田寿和 牧師
聖書
サムエル記下 11章14節~27節

聖句のアイコン聖書の言葉

11:14 翌朝、ダビデはヨアブにあてて書状をしたため、ウリヤに託した。
11:15 書状には、「ウリヤを激しい戦いの最前線に出し、彼を残して退却し、戦死させよ」と書かれていた。
11:16 町の様子を見張っていたヨアブは、強力な戦士がいると判断した辺りにウリヤを配置した。
11:17 町の者たちは出撃してヨアブの軍と戦い、ダビデの家臣と兵士から戦死者が出た。ヘト人ウリヤも死んだ。
11:18 ヨアブはダビデにこの戦いの一部始終について報告を送り、
11:19 使者に命じた。「戦いの一部始終を王に報告し終えたとき、
11:20 もし王が怒って、『なぜそんなに町に接近して戦ったのか。城壁の上から射かけてくると分かっていたはずだ。
11:21 昔、エルベシェトの子アビメレクを討ち取ったのは誰だったか。あの男がテベツで死んだのは、女が城壁の上から石臼を投げつけたからではないか。なぜそんなに城壁に接近したのだ』と言われたなら、『王の僕ヘト人ウリヤも死にました』と言うがよい。」
11:22 使者は出発し、ダビデのもとに到着してヨアブの伝言をすべて伝えた。
11:23 使者はダビデに言った。「敵は我々より優勢で、野戦を挑んで来ました。我々が城門の入り口まで押し返すと、
11:24 射手が城壁の上から僕らに矢を射かけ、王の家臣からも死んだ者が出、王の僕ヘト人ウリヤも死にました。」
11:25 ダビデは使者に言った。「ヨアブにこう伝えよ。『そのことを悪かったと見なす必要はない。剣があればだれかが餌食になる。奮戦して町を滅ぼせ。』そう言って彼を励ませ。」
11:26 ウリヤの妻は夫ウリヤが死んだと聞くと、夫のために嘆いた。
11:27 喪が明けると、ダビデは人をやって彼女を王宮に引き取り、妻にした。彼女は男の子を産んだ。ダビデのしたことは主の御心に適わなかった。
サムエル記下 11章14節~27節

原稿のアイコンメッセージ

 前回、私たちは、ダビデがウリヤの妻バト・シェバと床を共にして、子供を宿らせたこと。また、そのことを隠そうとして、ウリヤを呼び戻し、家に帰らせようとしたことを学びました。ダビデは、ウリヤを酒に酔わせて、家に帰らせようとしました。しかし、ウリヤは、ダビデの命にかけて誓ったとおり、家に帰ることなく、王宮の入り口で家臣と共に眠りました。ウリヤを家に帰らせ、妻と床を共にさせて、お腹の子をウリヤの子と思わせるというダビデの策略は成功しませんでした。それで、ダビデは、ウリヤを戦いの最前線に送り出して殺すことにするのです。

 翌朝、ダビデはヨアブにあてて書状をしたため、ウリヤに託しました。その書状には、こう書かれていました。「ウリヤを激しい戦いの最前線に出し、彼を残して退却し、戦死させよ」。ダビデは、このような書状をウリヤ自身に届けさせたのです(残酷)。ヨアブは、その理由を問うようなことはせず、ダビデの命令に忠実に従います。ヨアブは、敵の強力な戦士がいると判断した辺りにウリヤを配置しました。アンモン人たちは町から出撃してヨアブの軍と戦い、ダビデの家臣と兵士から戦死者が出ました。その戦死者の中にヘト人ウリヤもいたのです。

 ヨアブはダビデにこの戦いの一部始終について報告を送り、使者にこう命じました。「戦いの一部始終を王に報告し終えたとき、もし王が怒って、『なぜそんなに町に接近して戦ったのか。城壁の上から射かけてくると分かっていたはずだ。昔、エルベシェトの子アビメレクを討ち取ったのは誰だったか。あの男がテベツで死んだのは、女が城壁の上から石臼を投げつけたからではないか。なぜそんなに城壁に接近したのだ』と言われたなら、『王の僕ヘト人ウリヤも死にました』と言うがよい」。21節に、「エルベシェト」とありますが、これは「エルバアル」と呼ばれたギデオンのことです(士師7:1参照)。ここでも、『サムエル記』の編集者は、「バアル」を「ボシェト」(恥)と読みかえているのです。この21節に記されているお話しは、『士師記』の第9章50節から54節に記されています。実際に開いて読んでみたいと思います。旧約の399ページです。

 アビメレクはまたテベツに向かい、テベツに対して陣を敷き、これを制圧したが、この町の中に堅固な塔があり、男も女も皆、町の首長たちと共にその中に逃げ込んで立てこもり、塔の屋上に上った。アビメレクはその塔のところまで来て、これを攻撃した。塔の入り口に近づき、火を放とうとしたとき、一人の女がアビメレクの頭を目がけて、挽き臼の上石を放ち、頭蓋骨を砕いた。彼は急いで武器を持つ従者を呼び、「剣を抜いてわたしにとどめを刺せ。女に殺されたと言われないために」と言った。従者は彼を刺し、彼は死んだ。

 なぜ、ヨアブは、使者にこのような話をしたのでしょうか。それは、ヨアブが町に近づくことが危険であることを知っていたこと。そのヨアブがあえて町に近づいたのは、ヘト人ウリヤを死なせるためであったことを使者に伝えるためです。ヨアブは、使者を遣わすにあたって、報告のポイントがどこにあるのかを教えたのです。

今朝の御言葉に戻ります。旧約の496ページです。

 使者は出発し、ダビデのもとに到着してヨアブの伝言をすべて伝えました。使者はダビデにこう言いました。「敵は我々より優勢で、野戦を挑んで来ました。我々が城門の入り口まで押し返すと、射手が城壁の上から僕らに矢を射かけ、王の家臣からも死んだ者が出、王の僕ヘト人ウリヤも死にました」。使者は、その伝言の内容によって、殺されてしまうことがありました。ですから、使者は、ダビデが怒り出すまえに、「王の僕ヘト人ウリヤも死にました」と伝えます。その知らせを聞いて、ダビデは使者にこう言いました。「ヨアブにこう伝えよ。『そのことを悪かったと見なす必要はない。剣があればだれかが餌食になる。奮戦して町を滅ぼせ。』そう言って彼を励ませ」。このようにして、ダビデは、アマレク人の手によって、ウリヤを殺してしまったのです。

 ウリヤの妻は夫ウリヤが死んだと聞くと、夫のために嘆きました。喪が明けると、ダビデは人をやって彼女を王宮に引き取り、妻にしました(喪の期間は一週間と思われる)。こうして、ダビデの姦淫の罪はだれにも知られることがありませんでした。彼女は男の子を産みました。すべては、ダビデの思惑どおりに運び、「めでたし、めでたし」というところでしょうか。そうではありません。今朝の御言葉の最後に、こう記されています。「ダビデのしたことは主の御心に適わなかった」。このところを聖書協会共同訳は、「ダビデのしたことは主の目に悪とされた」と翻訳しています。また、岩波書店から出ている『旧約聖書』は、「ダビデのしたことはヤハウェの目に悪と映った」と翻訳しています。ダビデは、ヨアブに、「そのことを悪かったと見なす必要はない」と伝えました。しかし、ダビデのしたことは、主、ヤハウェの目には悪と映ったのです。それゆえ、主は、預言者ナタンを通して、ダビデを叱責されるのです。主、ヤハウェとは、「わたしはあなたと共にいる」という約束を含み持つ御名前でありました(出エジプト3:12参照)。その主、ヤハウェが共にいることをダビデは忘れていたのです。また、罪とは誰よりも、律法を与えられた神様に対するものであることを、ダビデは忘れていたのです。私たちも同じです。私たちが罪を犯すとき、主が共にいることを忘れるのです。また、罪とは、律法を与えられた神様に対するものであることを忘れるのです。罪を犯したダビデの姿は、私たちの姿でもあるのです。

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