ダビデとメフィボシェト 2022年6月08日(水曜 聖書と祈りの会)

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ダビデとメフィボシェト

日付
説教
村田寿和 牧師
聖書
サムエル記下 9章1節~13節

聖句のアイコン聖書の言葉

9:1 ダビデは言った。「サウル家の者がまだ生き残っているならば、ヨナタンのために、その者に忠実を尽くしたい。」
9:2 サウル家に仕えていたツィバという名の者がダビデのもとに呼び出された。「お前がツィバか」と王が尋ねると、「僕でございます」と彼は答えた。
9:3 王は言った。「サウル家には、もうだれも残っていないのか。いるなら、その者に神に誓った忠実を尽くしたいが。」「ヨナタンさまの御子息が一人おられます。両足の萎えた方でございます」とツィバは王に答えた。
9:4 王は「どこにいるのか」と問い、ツィバは王に、「ロ・デバルにあるアミエルの子マキルの家におられます」と答えた。
9:5 ダビデ王は人を遣わし、ロ・デバルにあるアミエルの子マキルの家から彼を連れて来させた。
9:6 サウルの子ヨナタンの子メフィボシェトは、ダビデの前に来るとひれ伏して礼をした。「メフィボシェトよ」とダビデが言うと、「僕です」と彼は答えた。
9:7 「恐れることはない。あなたの父ヨナタンのために、わたしはあなたに忠実を尽くそう。祖父サウルの地所はすべて返す。あなたはいつもわたしの食卓で食事をするように」とダビデが言うと、
9:8 メフィボシェトは礼をして言った。「僕など何者でありましょうか。死んだ犬も同然のわたしを顧みてくださるとは。」
9:9 王は、サウルの従者であったツィバを呼んで言った。「サウルとその家の所有であったものはすべてお前の主人の子息に与えることにした。
9:10 お前は、息子たち、召し使いたちと共に、その土地を耕して収穫をあげ、お前の主人の子息のために生計を立てよ。お前の主人の子息メフィボシェトは、いつもわたしの食卓で食事をすることになる。」ツィバには十五人の息子と二十人の召し使いがいた。
9:11 ツィバは王に答えた。「私の主君、王が僕にお命じになりましたことはすべて、僕が間違いなく実行いたします。」メフィボシェトは王子の一人のように、ダビデの食卓で食事をした。
9:12 メフィボシェトにはミカという幼い息子がいた。ツィバの家に住む者は皆、メフィボシェトの召し使いとなった。
9:13 メフィボシェトは王の食卓に連なるのが常のことであり、両足とも不自由なので、エルサレムに住んだ。サムエル記下 9章1節~13節

原稿のアイコンメッセージ

 今朝は、『サムエル記下』の第9章1節から13節より、「ダビデとメフィボシェト」という題でお話しします。

 ダビデはこう言いました。「サウル家の者がまだ生き残っているならば、ヨナタンのために、その者に忠実を尽くしたい」。ここで「忠実」と訳されているヘブライ語は、ヘセドです(1、3、7節)。ヘセドは「契約に誠実な愛」を表します。ダビデは、「ヨナタンのために、契約に誠実な愛を尽くしたい」と言うのです。このダビデの言葉は、かつてヨナタンと主の御前に結んだ契約を前提にしています。『サムエル記上』の第20章に、ヨナタンがダビデの家と契約を結んだことが記されています。その13節後半から16節に、こう記されていました。旧約の462ページです。

 主が父と共におられたように、あなたと共におられるように。そのときわたしにまだ命があっても、死んでいても、あなたは主に誓ったようにわたしに慈しみを示し、また、主がダビデの敵をことごとく地の面から断たれるときにも、あなたの慈しみをわたしの家からとこしえに断たないでほしい。」

 ヨナタンはダビデの家と契約を結び、こう言った。「主がダビデの敵に報復してくださるように。」

 14節と15節で「慈しみ」と訳されている言葉は、「忠実」と訳されていた「ヘセド」です。古代オリエントの社会では、新しい王朝の創始者は、前の王朝の子孫を皆殺しにすることが常でありました(列王上15:29、16:11参照)。そのことを前提にして、ヨナタンは、ダビデに、「あなたが王になっても、わたしの家から慈しみを断たないでほしい」と願ったのです。そして、その見返りとして、ヨナタンはダビデの味方になることを誓ったのです。そして、現に、ダビデはヨナタンの助けがあったからこそ、サウルの手を逃れることができたのです。ダビデにとって、ヨナタンは親友であり、命の恩人でもあるのです。そのヨナタンとの契約を、ダビデは、今朝の御言葉で、忠実に果たそうとするのです。

 今朝の御言葉に戻ります。旧約の493ページです。

 サウル家に仕えていたツィバという名の者がダビデに呼び出されました。「お前がツィバか」と王が尋ねると、「僕でございます」と彼は答えました。王はこう言いました。「サウル家には、もうだれも残っていないのか。いるなら、その者に神に誓った忠実を尽くしたいのだが」。すると、ツィバは王に、こう答えました。「ヨナタンさまの御子息が一人おられます。両足の萎えた方でございます」。この「両足が萎えたヨナタンの息子」については、第4章4節に、こう記されていました。旧約の486ページです。

 サウルの子ヨナタンには両足の萎えた息子がいた。サウルとヨナタンの訃報がイズレエルから届いたとき、その子は五歳であった。乳母が抱いて逃げたが、逃げようとして慌てたので彼を落とし、足が不自由になったのである。彼の名はメフィボシェトと言った。

ツィバは、名前は出しませんが、「メフィボシェト」のことをダビデに告げたのです。

 今朝の御言葉に戻ります。旧約の493ページです。

 王は「どこにいるのか」と問い、ツィバは王に、「ロ・デバルにあるアミエルの子マキルの家におられます」と答えました(ロ・デバルは「なにも無い」の意味)。そこで、ダビデは人を遣わし、彼を連れて来させました。サウルの子ヨナタンの子メフィボシェトは、ダビデの前に来るとひれ伏して礼をしました。「メフィボシェトよ」とダビデが言うと、「僕です」と彼は答えました。このとき、メフィボシェトは、殺されるのではないかと恐れていたと思います。そのようなメフィボシェトに、ダビデはこう言うのです。「恐れることはない。あなたの父ヨナタンのために、わたしはあなたに忠実を尽くそう。父祖サウルの地所はすべて返す。あなたはいつもわたしの食卓で食事をするように」。ダビデは、メフィボシェトを連れて来させたのは、ヨナタンとの契約を誠実に果たすためであることを告げます。ダビデは、ヨナタンの息子であるメフィボシェトに慈しみを示すのです。それは、具体的には、サウルの土地をすべて返し、王の食卓で食事をすることでした。サウルの孫であり、ヨナタンの息子であるメフィボシェトは、大地主となり、王子の一人のような栄誉を与えられたのです。メフィボシェトは礼をして、こう言いました。「僕など何者でありましょうか。死んだ犬も同然のわたしを顧みてくださるとは」。この言葉は、謙遜の言葉とも読むことができますが、メフィボシェトの現実であり、本心からの言葉であったと思います。

 王は、サウルの従者であったツィバを呼んで、こう言いました。「サウルとその家の所有であったものはすべてお前の主人の子息に与えることにした。お前は、息子たち、召し使いたちと共に、その土地を耕して収穫をあげ、お前の主人の子息のために生計を立てよ。お前の主人の子息メフィボシェトは、いつもわたしの食卓で食事をすることになる」。ダビデは、両足が不自由なメフィボシェトのために、ツィバに、土地の管理を命じました。「ツィバには十五人の息子と二十人の召し使いがいた」とあります。この者たちがメフィボシェトの召し使いとなって、土地を耕し、収穫をあげたのです。メフィボシェトは王子の一人のように、ダビデの食卓で食事をしました。また、両足が不自由であったため、エルサレムに住みました。このようにして、ダビデは、神に誓ったヨナタンとの契約を忠実に果たしたのです。また、このようにして、ダビデは、自分に謀反を企てる可能性があるサウルの家の者を、自分の権力と監視のもとに置いたのです。12節に、「メフィボシェトにはミカという幼い息子がいた」とあります。ダビデは、メフィボシェトだけではなく、その息子ミカもエルサレムに住まわせました。そのようにして、ダビデは、サウルの家の者が、自分の家(王朝)を揺るがすことがないようにしたのです。第7章に記されていたナタンの預言、「あなたの身から出る子孫に跡を継がせ、その王国を揺るぎないものとする」という御言葉は、このようなダビデの慈しみによっても、実現していくのです。

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