主によって力を奮い起こしたダビデ 2022年1月12日(水曜 聖書と祈りの会)

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主によって力を奮い起こしたダビデ

日付
説教
村田寿和 牧師
聖書
サムエル記上 30章1節~31節

聖句のアイコン聖書の言葉

30:1 三日目、ダビデとその兵がツィクラグに戻る前に、アマレク人がネゲブとツィクラグに侵入した。彼らはツィクラグを攻撃して、町に火をかけ、
30:2 そこにいた女たち、年若い者から年寄りまで、一人も殺さずに捕らえて引いて行った。
30:3 ダビデとその兵が町に戻ってみると、町は焼け落ち、妻や息子、娘たちは連れ去られていた。
30:4 ダビデも彼と共にいた兵士も、声をあげて泣き、ついには泣く力もなくなった。
30:5 ダビデの二人の妻、イズレエルのアヒノアムとカルメルのナバルの妻であったアビガイルも連れ去られていた。
30:6 兵士は皆、息子、娘のことで悩み、ダビデを石で打ち殺そうと言い出したので、ダビデは苦しんだ。だが、ダビデはその神、主によって力を奮い起こした。
30:7 ダビデは、アヒメレクの子、祭司アビアタルに命じた。「エフォドを持って来なさい。」アビアタルがダビデにエフォドを持って来ると、
30:8 ダビデは主に託宣を求めた。「この略奪隊を追跡すべきでしょうか。追いつけるでしょうか。」「追跡せよ。必ず追いつき、救出できる。」という答えであった。
30:9 ダビデと彼に従う兵六百人は出立した。ベソル川に着くと、そこで落伍者が出た。
30:10 ダビデと四百人の兵は追跡を続けたが、二百人は疲れすぎていてベソル川を渡れなかったので、そこにとどまった。
30:11 兵士たちは野原で一人のエジプト人を見つけ、ダビデのもとに連れて来た。パンを与えて食べさせ、水を飲ませ、
30:12 更に干しいちじく一かたまりと干しぶどう二房を与えて食べさせると元気を取り戻した。彼は、三日三晩、飲まず食わずでいたからである。
30:13 ダビデが彼に、「お前は誰の配下の者で、どこから来たのか」と問うと、「わたしはエジプトからの従者で、アマレク人の奴隷になっていました。三日前に病にかかり、主人に捨てられました。
30:14 クレタ人のネゲブ、ユダに属するネゲブ、カレブのネゲブに侵入し、ツィクラグに火をかけたのは我々です。」
30:15 ダビデは尋ねた。「お前はその略奪隊のもとへわたしを案内できるか。」「あなたが、わたしを殺さない、主人に引き渡さないと神にかけて誓ってくだされば、あの略奪隊のところに御案内します。」
30:16 彼はダビデを案内して行った。見ると彼らはその辺り一面に広がり、ペリシテの地とユダの地から奪った戦利品がおびただしかったので、飲んだり食べたり、お祭り騒ぎをしていた。
30:17 夕暮れになるとダビデは攻撃をかけ、翌日の夕方まで続けた。らくだに乗って逃げた四百人の若者を除いて、逃れた者は一人もなかった。
30:18 ダビデはアマレク人が奪って行ったものをすべて取り戻し、二人の妻も救い出した。
30:19 年若い者も年寄りも、息子も娘も、戦利品として奪われたものもすべて、ダビデは残らず取り返した。
30:20 更に、ダビデは羊と牛をことごとく奪った。一行はこの家畜の群れを引いて行きながら、言った。「これはダビデの戦利品だ。」
30:21 やがて、疲労のためダビデに従うことができず、ベソル川にとどまっていた二百人の兵のもとに戻って来ると、彼らはダビデとダビデに従った兵士たちを迎えに出て来た。ダビデはこの兵士たちに近づくと、彼らの安否を尋ねた。
30:22 ダビデに従って行った者の中には、悪意を持つならず者がいて、言った。「彼らは我々と共に行かなかったのだ。我々が取り戻した戦利品を与える必要はない。ただ妻と子供を受け取り、連れて行くがよい。」
30:23 しかし、ダビデは言った。「兄弟たちよ、主が与えてくださったものをそのようにしてはいけない。我々を守ってくださったのは主であり、襲って来たあの略奪隊を我々の手に渡されたのは主なのだ。
30:24 誰がこのことについてあなたたちに同意するだろう。荷物のそばにとどまっていた者の取り分は、戦いに出て行った者の取り分と同じでなければならない。皆、同じように分け合うのだ。」
30:25 この日から、これがイスラエルの掟、慣例とされ、今日に至っている。
30:26 ダビデはツィクラグに帰ると、友人であるユダの長老たちに戦利品の中から贈り物をして、「これがあなたたちへの贈り物です。主の敵からの戦利品の一部です」と言った。
30:27 その送り先は、ベテル、ラモト・ネゲブ、ヤティル、
30:28 アロエル、シフモト、エシュテモア、
30:29 ラカル、エラフメエル人の町々、カイン人の町々、
30:30 ホルマ、ボル・アシャン、アタク、
30:31 ヘブロン、そして、ダビデとその兵がかつてさまよい歩いたすべての所の長老たちである。
サムエル記上 30章1節~31節

原稿のアイコンメッセージ

 今朝は、『サムエル記上』の第30章1節から31節より、「主によって力を奮い起こしたダビデ」という題でお話しします。

 ダビデとその兵士たちは、ペリシテ軍から離脱して、アフェクからツィクラグへと帰って行きました。その三日目、ダビデとその兵士たちがツィクラグに戻る前に、アマレク人がネゲブとツィクラグに侵入しました。アマレク人は、主がサウルに滅ぼし尽くすよう命じた、イスラエルの宿敵であります(15章参照)。また、ダビデとその兵士たちが襲っていたのもアマレク人の町でありました(27:8参照)。アマレク人は、ペリシテ軍とイスラエル軍が戦おうとしているという情報を得て、略奪するために、ネゲブとツィクラグに侵入したのでしょう。アマレク人は、ツィクラグを攻撃して、町に火をかけ、女たちを一人も殺さずに捕らえて引いて行きました。おそらく、奴隷として売ろうとしていたのでしょう。ダビデとその兵士たちが町に戻ってみると、町は焼け落ち、妻や息子、娘たちは連れ去られていました。死体が無かったので、連れ去られたことが分かったわけです。ダビデも、兵士たちも、声をあげて泣き、ついには泣く力もなくなりました。ダビデの二人の妻、イズレエルのアヒノアムとカルメルのナバルの妻であったアビガイルも連れ去られました。兵士たちは皆、息子、娘のことで悩み、ダビデを石で打ち殺そうと言い出しました。兵士たちは、ツィクラグを無防備にしたことをダビデの失策と考えたようです。兵士たちはやり場のない怒りを、指導者であるダビデにぶつけようとするのです。その昔、エジプトを脱出した民が、指導者であるモーセを石で打ち殺そうとしたことがありました(出エジプト17章参照)。イスラエルの民は、「なぜ、我々をエジプトから導き上ったのか。わたしも子供たちも、家畜までも渇きで殺すためなのか」とモーセに向かって不平を述べ、モーセを石で打ち殺そうとしたのです。そのイスラエルの民のように、兵士たちは、ダビデを石で打ち殺そうと言い出したのです。これを聞いてダビデは苦しみました。しかし、ダビデは、その神、主によって力を振るい起こしたのです。ダビデは、耐え難い苦しみの中で、主に依り頼むのです。ダビデは、アヒメレクの子、祭司アビアタルに、「エフォドを持って来なさい」と命じます。そして、主に託宣を求めるのです。「この略奪隊を追跡すべきでしょうか。追いつけるでしょうか」と問うと、主は「追跡せよ。必ず追いつき、救出できる」と答えられました。この主の託宣によって、ダビデと600人の兵士たちは、力を与えられ、出立しました。ダビデは、略奪隊が南にいる民族であろうと見当をつけて、南へ向かいます。ベソル川に着くと、そこで落伍者がでました。200人の兵士たちは死ぬほど疲れていて、ベソル川を渡れなかったのです。それで、その200人の兵士たちを荷物の番にして、400人の兵士たちを引き連れて、ダビデは追跡を続けたのです(25:13「四百人ほどがダビデに従って進み、二百人は荷物のところにとどまった」参照)。

 兵士たちは野原で一人のエジプト人を見つけ、ダビデのもとに連れて来ました。ダビデが、パンを与えて食べさせ、水を飲ませ、更には干しイチジクと干しぶどうを与えて食べさせるとエジプト人は元気になりました。彼は、三日三晩、飲まず食わずでいたのです。ダビデは、良きサマリア人のような憐れみの心から、このエジプト人に食べ物や飲み物を与えたのではありません(ルカ10章参照)。このエジプト人が、ツィクラグを襲った略奪隊について何か知っているのではないかと思って食べ物や飲み物を与えたのです。ダビデが「お前は誰の配下の者で、どこから来たのか」と問うと、エジプト人はこう答えました。「わたしはエジプトからの従者で、アマレク人の奴隷になっていました。三日前に病にかかり、主人に捨てられました。クレタ人のネゲブ、ユダに属するネゲブ、カレブのネゲブに侵入し、ツィクラグに火をかけたのは我々です」。更に、ダビデは、尋ねます。「お前はその略奪隊のもとへわたしを案内できるか」。エジプト人はこう答えました。「あなたが、わたしを殺さない、主人に引き渡さないと神にかけて誓ってくだされば、あの略奪隊のところに御案内します」。このエジプト人のおかげで、ダビデは、ツィクラグを略奪したのがアマレク人であることを知りました。また、その略奪隊がいる場所へと向かうことができるようになりました。主は、「追跡せよ。必ず追いつき、救出できる」と言われましたが、その主の御言葉は、アマレク人によって捨てられた奴隷の案内によって実現することになるのです。

 案内に従って行くと、アマレク人たちは、辺り一面に広がり、ペリシテの地とユダの地から奪った戦利品がおびただしかったので、飲んだり食べたりして、お祭り騒ぎをしていました。アマレク人たちは、ペリシテ軍とイスラエル軍が戦っていることを知っていたので、安心していたのでしょう。アマレク人たちは、ダビデとその兵士たちが、ペリシテ軍から離脱して帰って来たことを知りませんでした。もし、ダビデとその兵士たちが、ペリシテ軍から離脱しなければ、アマレク人の略奪隊に追いつくことはできませんでした。ペリシテ軍から離脱したことは、イスラエル軍と戦う危機からだけではなく、アマレク人の略奪による危機からも、ダビデとその兵士たちを救ったのでした。

 夕暮れになるとダビデは攻撃をかけ、戦闘は翌日の夕方まで続きました。らくだに乗って逃げた400人を除いて、ダビデはアマレク人を滅ぼしました。また、ダビデはアマレク人が奪って行ったものをすべて取り戻し、二人の妻も救い出しました。年若い者も年寄りも、息子も娘も、戦利品として奪われたものもすべて、ダビデは残らず取り返したのです。更に、ダビデは、アマレク人から羊と牛をことごとく奪いました。一行はこの家畜の群れを引いて行きながら、「これはダビデの戦利品だ」と言いました。このように、ダビデと兵士たちの間に、平和な関係が回復されたのです。

 やがて、疲れのためにダビデに従うことができず、ベソル川にとどまっていた200人の兵士たちのもとに戻ってくると、彼らはダビデとダビデに従った兵士たちを迎えに出て来ました。ダビデは、この兵士たちに、安否(シャローム)を尋ねました。ダビデに従って行った者の中に、悪意を持つ、ならず者(ベリアル)がいて、こう言いました。「彼らは我々と共に行かなかったのだ。我々が取り戻した戦利品を与える必要はない。ただ妻と子供を受け取り、連れて行くがよい」。この発言は、もっともなようにも思えます。しかし、ダビデはこう言いました。「兄弟たちよ、主が与えてくださったものをそのようにしてはいけない。我々を守ってくださったのは主であり、襲って来たあの略奪隊を我々の手に渡されたのは主なのだ。誰がこのことについてあなたがたに同意するだろう。荷物のそばにとどまっていた者の取り分は、戦いに出かけて行った者の取り分と同じでなければならない。皆、同じように分け合うのだ」。ならず者は、自分たちの手でアマレク人に勝利したと考えました。ですから、彼らは、戦いに行かなかった者に、戦利品を分ける必要はないと考えたのです。しかし、ダビデは、主が勝利を与えてくださったと言うのです。それゆえ、戦いに行った者と荷物のそばにとどまっていた者の取り分は同じでなければならないと言うのですね。このようにして、ダビデは、主に心を向けることにより、兵士たちの間に対立が生じないようにしたのです。この日から、これがイスラエルの掟、慣例とされたのです。後の時代の人々は、この掟がダビデによって定められたことを知って、ダビデの気前の良さをほめたたえたと思います。

 ダビデは、ツィクラグに帰ると、友人であるユダの長老たちに戦利品の中から贈り物をして「これがあなたたちへの贈り物です。主の敵からの戦利品の一部です」と言いました。ダビデは、ツィクラグに住んでいる間、ユダに敵対する民族を襲い、ユダの長老たちと友好な関係を築いていたのですね。アマレク人は、ユダの地でも略奪をしていました。それで、ダビデは、ユダの長老たちに、主の敵からの戦利品の一部を贈るのです。私たちは、ここにも、ダビデの気前の良さを見ることができます。そして、その気前の良さは、将来を見据える、したたかなものでありました。と言いますのも、後にダビデは、この長老たちによって、ヘブロンで、ユダの王となるからです(サムエル下2章参照)。ダビデは、ユダの長老たちに、主の敵からの戦利品を贈り物とすることにより、自分が王にふさわしい人物であることを印象づけたのです。

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