ペリシテの地に逃れたダビデ 2021年12月08日(水曜 聖書と祈りの会)
問い合わせ
ペリシテの地に逃れたダビデ
- 日付
-
- 説教
- 村田寿和 牧師
- 聖書
サムエル記上 27章1節~28章2節
聖書の言葉
27:1 ダビデは心に思った。「このままではいつかサウルの手にかかるにちがいない。ペリシテの地に逃れるほかはない。そうすればサウルは、イスラエル全域でわたしを捜すことを断念するだろう。こうしてわたしは彼の手から逃れることができる。」
27:2 ダビデは立って、彼に従う兵六百人と共に、ガトの王、マオクの子アキシュのもとに移って行った。
27:3 ダビデとその兵はおのおのの家族と共にガトのアキシュのもとに身を寄せた。ダビデは二人の妻、イズレエルのアヒノアムとカルメルのナバルの妻であったアビガイルを連れていた。
27:4 ダビデがガトに逃げたと聞いたサウルは、二度とダビデを追跡しなかった。
27:5 ダビデはアキシュに言った。「御厚意を得られるなら、地方の町の一つに場所をください。そこに住みます。僕が王国の首都で、あなたのもとに住むことはありません。」
27:6 その日、アキシュは彼にツィクラグを与えた。こうして、今日に至るまでツィクラグはユダの王に属することになった。
27:7 ダビデがペリシテの地に住んだ期間は、一年と四か月であった。
27:8 ダビデとその兵は上って行っては、ゲシュル人、ゲゼル人、アマレク人を襲った。昔からこれらは、シュルからエジプトの地に至る地方の住民であった。
27:9 ダビデはこの地方を討つと、男も女も生かしておかず、羊、牛、ろば、らくだ、衣類を奪っては、アキシュのもとに戻った。
27:10 アキシュが、「今日はどこを襲ったか」と尋ねると、ダビデは、ユダのネゲブを、エラフメエル人のネゲブを、カイン人のネゲブを、と答えた。
27:11 ダビデは、男も女も生かしてガトに引いて来ることはなかった。「彼らが我々について、『ダビデがこうした』と通報しないように」と考えたからである。ダビデがペリシテの地に住む間、これがダビデの策であった。
27:12 アキシュはダビデを信じて、「彼は自分の民イスラエルにすっかり嫌われたから、いつまでもわたしの僕でいるだろう」と思っていた。
28:1 そのころ、ペリシテ人はイスラエルと戦うために軍を集結させた。アキシュはダビデに言った。「あなたもあなたの兵もわたしと一緒に戦陣に加わることを、よく承知していてもらいたい。」
28:2 ダビデはアキシュに答えた。「それによって、僕の働きがお分かりになるでしょう。」アキシュはダビデに言った。「それなら、常にあなたをわたしの護衛の長としよう。」サムエル記上 27章1節~28章2節
メッセージ
関連する説教を探す
前回、私たちは、ダビデがサウルを寛大に扱ったこと。そして、サウルがダビデを祝福したことを学びました。サウルは、ダビデにこう言いました。「わたしが誤っていた。わが子ダビデよ、帰って来なさい。この日わたしの命を尊んでくれたお前に、わたしは二度と危害を加えようとはしない。わたしは愚かであった。大きな過ちを犯した」。「わが子ダビデよ。お前に祝福があるように。お前は活躍し、また、必ず成功する」。しかし、ダビデは、サウルの言葉を信じませんでした。ダビデはサウルが心変わりすることをよく知っていたのです。ダビデは自分の道を行き、サウルは自分の場所に戻って行ったのです。
今朝の御言葉はこの続きであります。
ダビデは心にこう思いました。「このままではいつかサウルの手にかかるにちがいない。ペリシテの地に逃れるほかはない。そうすればサウルは、イスラエル全域でわたしを捜すことを断念するだろう。こうしてわたしは彼の手から逃れることができる」。このように、ダビデは、サウルの手を逃れるために、イスラエルの敵であるペリシテ人の地に逃れることを決意するのです。ダビデは立って、六百人の兵と共に、ガトの王、マオクの子アキシュのもとに移って行きました。ダビデがガトの王アキシュのもとに逃れたことは、第21章11節から16節に記されていました。その時、ダビデは一人でありました。しかし、今度は、六百人の兵を引き連れる頭領としてガトの王アキシュのもとに行くのです。ここには記されていませんが、ダビデはアキシュと契約を結んだのでしょう。ダビデは、アキシュに従うことを約束し、アキシュはダビデに、ガトに住むことを許したのです。ダビデとその兵たちは、アキシュのいわば傭兵となったのです(14:21参照)。ダビデがガトに逃げたと聞いたサウルは、二度とダビデを追跡しませんでした。このようにして、ダビデはサウルの手から逃れることができたのです。
このとき、ダビデは二人の妻を、兵はそれぞれの家族を連れていました。ですから、ダビデのもとには千人以上の人がいたと思います。そのようなこともあり、ダビデはアキシュにこう言います。「御厚意を得られるなら、地方の町の一つに場所をください。そこに住みます。僕が王国の首都で、あなたのもとに住むことはありません」。その日、アキシュは、ダビデにツィクラグを与えました。ツィクラグはユダの南の境に位置する町であります。『ヨシュア記』の第19章5節によると、シメオン族に割り当てられていますが、当時は、ペリシテ人の町でありました。ダビデがツィクラグに住んだことにより、この町は、ユダの王たちに属する町となったのです。ダビデは、ペリシテ人の地に、一年四ヶ月住むことになるのです。
ダビデとその兵は上って行っては、シュルからエジプトの地に至る地方に住んでいるゲシュル人、ゲゼル人、アマレク人を襲いました。アマレク人については、第15章に記されていました。主はサムエルを通して、サウルに、アマレク人を滅ぼし尽くすよう命じられたのでした。アマレク人は、イスラエルの宿敵であります。おそらく、ゲシュル人とゲゼル人も、イスラエルに敵対する民族であったのでしょう。ダビデは、イスラエルに敵対する民族を打ったのです。そのようにして、ダビデは、油を注がれた者として、イスラエル(ユダ)を周辺の異民族から守ったのです。ダビデは、この地方を討つと、男も女も生かしておかず、羊、牛、ろば、らくだ、衣類を奪っては、アキシュのもとに戻りました。ダビデが男も女も生かしておかなかったことは、現代の私たちからすると受け入れがたい残虐な行為です。しかし、それには理由がありました。アキシュが、「今日はどこを襲ったのか」と尋ねると、ダビデは、「ユダのネゲブを、エラフメエル人のネゲブを、カイン人のネゲブを」と答えていたのです。「ネゲブ」は「乾いた地」のことで、「南」を意味します。また、エラフメエル人もカイン人も、イスラエルに友好的な民族でありました。ダビデは、イスラエルに敵対する者たちを襲っていたのですが、アキシュには、ユダとその友好的な者たちを襲って来たと嘘をついていたのです。その嘘がばれないように、口の利ける人間は、男も女も生かしておかなかったのです。そして、これがペリシテ人の地に住むダビデの策であったのです。ダビデは、そのような策略によって、イスラエルに敵対する者たちを討ち、さらには、アキシュからの信頼を得たのでありました。アキシュは、ダビデを信じて、「彼は自分の民イスラエルにすっかり嫌われたから、いつまでもわたしの僕でいるだろう」と思っていたのです。もし、ダビデが、ユダのネゲブを襲っていたら、イスラエルに戻ることはできなかったと思います。それこそ、アキシュのもとに生涯とどまるしかなかったと思います。しかし、実際、ダビデが襲っていたのは、ユダの敵であるアマレク人たちでありました。そのようにして、ダビデは、ペリシテ人の地においても、主に対して誠実であったのです。
そのころ、ペリシテ人はイスラエルと戦うために、軍を集結させました。アキシュは、ダビデにこう言います。「あなたもあなたの兵もわたしと一緒に戦陣に加わることを、よく承知していてもらいたい」。ダビデのことをすっかり信じ込んでいたアキシュは、ダビデとその兵たちを、イスラエルとの戦いに連れて行こうとするのです。ダビデはアキシュにこう答えました。「それによって、僕の働きがお分かりになるでしょう」。このダビデの言葉は、なんとも曖昧な言葉であります。ダビデは、自分がどのような働きをするのかをはっきりとは言わないのです。しかし、アキシュは、そのダビデの言葉を自分に都合良く解釈します。アキシュは、ダビデがペリシテ人の側について、イスラエル人と戦い、大きな成果をあげることを約束したと解釈します。それで、アキシュは、ダビデにこう言います。「それなら、常にあなたをわたしの護衛の長としよう」。アキシュは、ダビデを自分の護衛の長にするほどに、ダビデを信用していたのです。さて、ダビデは、どうするのでしょうか。ペリシテ人の側に立って、イスラエル人と戦うのでしょうか。そのことは、少し先の第29章に記されていますので、そのときにお話ししたいと思います。