ダビデをサウルの手に渡さない神 2021年10月13日(水曜 聖書と祈りの会)

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ダビデをサウルの手に渡さない神

日付
説教
村田寿和 牧師
聖書
サムエル記上 23章14節~28節

聖句のアイコン聖書の言葉

23:14 ダビデは荒れ野のあちこちの要害にとどまり、またジフの荒れ野の山地にとどまった。サウルは絶え間なくダビデをねらったが、神は彼をサウルの手に渡されなかった。
23:15 ジフの荒れ野のホレシャにとどまっていたダビデは、サウルが自分の命をねらって出陣したことを知った。
23:16 そのとき、サウルの子ヨナタンがホレシャにいるダビデのもとに来て、神に頼るようにとダビデを励まして、
23:17 言った。「恐れることはない。父サウルの手があなたに及ぶことはない。イスラエルの王となるのはあなただ。わたしはあなたの次に立つ者となるだろう。父サウルも、そうなることを知っている。」
23:18 二人は主の御前で契約を結んだ。ダビデはホレシャに残り、ヨナタンは自分の館に帰って行った。
23:19 ジフの人々は、ギブアに上ってサウルに報告した。「ダビデは我々のもとに隠れており、砂漠の南方、ハキラの丘にあるホレシャの要害にいます。
23:20 王が下って行くことをお望みなら、今おいでください。王の手に彼を引き渡すのは我々の仕事です。」
23:21 サウルは答えた。「主の祝福があるように。あなたたちはわたしを思ってくれた。
23:22 戻って、更に確かめてくれ。ダビデが足をとどめている場所と誰がそこで彼を見たかをはっきり調べてくれ。彼は非常に賢い。
23:23 彼が隠れた場所をことごとく調べ上げて、確かな情報を持って来てくれれば、あなたたちと共に出て行こう。この地にいるのであれば、ユダの全氏族の中から彼を捜し出す。」
23:24 人々はサウルに先立ってジフに戻って行った。ダビデとその兵は砂漠の南方、アラバのマオンの荒れ野にいた。
23:25 サウルとその兵はダビデをねらって出て来たが、ダビデはその知らせを受けると、マオンの荒れ野の岩場に行き、そこにとどまった。サウルはそのことを聞き込み、マオンの荒れ野にダビデを追跡した。
23:26 サウルは山の片側を行き、ダビデとその兵は山の反対側に行った。ダビデはサウルを引き離そうと急いだが、サウルとその兵は、ダビデとその兵を捕らえようと、周囲から迫って来た。
23:27 そのとき、使者がサウルのもとに来て、「急いでお帰りください。ペリシテ人が国に侵入しました」と言った。
23:28 サウルはダビデを追うことをやめて、ペリシテ人の方に向かった。そのため、この場所は「分かれの岩」と呼ばれている。
サムエル記上 23章14節~28節

原稿のアイコンメッセージ

 今朝は、『サムエル記上』の第23章14節から28節より、「ダビデをサウルの手に渡さない神」という題でお話しします。

 14節に、「ダビデは荒れ野のあちこちの要害にとどまり、またジフの荒れ野の山地にとどまった。サウルは絶え間なくダビデをねらったが、神は彼をサウルの手に渡さなかった」とあります。この14節は、ダビデの逃亡生活の要約とも言えます。サウルがダビデを捕らえることができなかったのは、神様がダビデをサウルの手に渡されなかったからであるのです。

 ジフの荒れ野のホレシュにとどまっていたダビデは、サウルが自分の命をねらって出陣したことを知りました。この知らせを聞いて、ダビデは恐れを抱いたと思います。そのとき、サウルの子ヨナタンがホレシュにいるダビデのもとに来て、神によって、ダビデを励まします。新共同訳は「神に頼るようにとダビデを励まして」と訳していますが、新改訳2017は「神によってダビデを力づけた」と翻訳しています。ヨナタンは、自分が確信している神の計画を語ることによって、ダビデを力づけたのです。ヨナタンはこう言います。「恐れることはない。父サウルの手があなたに及ぶことはない。イスラエルの王となるのはあなただ。わたしはあなたの次に立つ者となるだろう。父サウルも、そうなることを知っている」。私たちは、14節で、「神は彼(ダビデ)をサウルの手に渡されなかった」という御言葉を読みました。それと同じことを、ヨナタンはダビデに告げるのです。ヨナタンは、「父サウルの手があなたに及ぶことはない」と言うのです。なぜなら、神様の御計画によれば、イスラエルの王となるのは、ダビデであるからです。ここでヨナタンは、「わたしはあなたの次に立つ者となるだろう」と語ることによって、自分に王になる意志がないことをはっきりと告げています。また、ヨナタンは、このように語ることによって、ダビデが王になった際には、自分が次の地位に就くことを暗示しています。ヨナタンは、ダビデが王様になれれば、自分はどうなってもよいと考えていたのではなく、ダビデの次の地位に就くことを考えていたようです。さらに、ヨナタンは、父サウルもダビデが王になることを知っていると語ります。サウルはダビデが王になることを知っているからこそ、ダビデを捕らえて殺そうとするのです(24:21参照)。

 二人は主の御前で契約を結びました。ダビデとヨナタンが契約を結ぶのはこれで三度目であります。一度目の契約は第18章であります。第18章3節にこう記されていました。「ヨナタンはダビデを自分自身のように愛し、彼と契約を結び、着ていた上着を脱いで与え、また自分の装束と剣、弓、帯に至るまで与えた」。ここでの契約は、ヨナタンとダビデの友情の契約であります。ヨナタンはダビデと契約を結んで親友となったのです。

 二度目の契約は第20章であります。13節後半から15節までをお読みします。「主が父と共におられたように、あなたと共におられるように。そのときわたしにまだ命があっても、死んでいても、あなたは主に誓ったようにわたしに慈しみを示し、また主がダビデの敵をことごとく地の面から断たれるときにも、あなたの慈しみをわたしの家からとこしえに断たないでほしい」。こう言って、ヨナタンはダビデの家と契約を結んだのです。42節で、ヨナタンは次のようにも言っています。「安らかに行ってくれ。わたしとあなたの間にも、わたしの子孫とあなたの子孫の間にも、主がとこしえにおられる、と主の御名によって誓い合ったのだから」。

そして、三度目の契約が、今朝の第23章に記されているのです。では、三度目のヨナタンとダビデの契約はどのような内容だったのでしょうか。おそらく、ヨナタンはサウルに加担しないこと。また、ダビデは王になった際に、ヨナタンを次の地位につけることであったと思います。ヨナタンとダビデの契約は、政治的な駆け引きという面もあるのですね。それで、ヨナタンは、サウルのもとではなく、自分の館へと帰って行ったのです。このヨナタンの訪問によって、ダビデは大いに力づけられたと思います。ダビデは、サムエルによって、その頭に油を注がれましたが、そのことが何を意味するかは告げられていませんでした。しかし、その意味が、今や、はっきりと、サウルの息子ヨナタンの口を通して語られたのです。「イスラエルの王となるのはあなただ」。このヨナタンの言葉は、ダビデを力づける主の御言葉となったのです。

 ジフの人々は、ギブアに上ってサウルにこう報告しました。「ダビデは我々のもとに隠れており、砂漠の南方、ハキラの丘にあるホレシャの要害にいます。王が下って行くことをお望みなら、今おいでください。王の手に彼を引き渡すのは我々の仕事です」。ジフはケイラと同じユダ族の町でありました。ダビデと同じユダ族であるジフの人々が、サウルにダビデを引き渡そうとするのです(詩編54参照)。ジフの人々も、サウルが祭司の町ノブを滅ぼし尽くしたことを聞いていたのでしょう。それで、ジフの人々は、サウルを恐れて、取り入ろうとするのです。サウルはこう答えます。「主の祝福があるように。あなたたちはわたしを思ってくれた。戻って、更に確かめてくれ。ダビデが足をとどめている場所と誰がそこで彼を見たかをはっきり調べてくれ。彼は非常に賢い。彼が隠れた場所をことごとく調べ上げて、確かな情報を持って来てくれれば、あなたたちと共に出て行こう。この地にいるのであれば、ユダの全氏族の中から彼を捜し出す」。ここでサウルは「主の祝福があるように」と語ります。サウルは「主」の御名を口にするのです。主、ヤハウェとは、「わたしはあなたと共にいる」という約束を含んだ御名前であります(出エジプト3:12参照)。しかし、主はサウルとは共におられません。第16章14節に、「主の霊はサウルから離れ、主から来る悪霊が彼をさいなむようになった」と記されていたように、主はサウルとは共におられないのです。そのことは、サウルが主の祭司たちを殺したことによってはっきりとなりました(22:18、19参照)。しかし、それにもかかわらず、サウルは「主」の御名をみだりに口にするのです(23:7「神はダビデをわたしの手に渡されたのだ」も参照)。サウルは、ジフの人々に、「あなたたちはわたしを思ってくれた」と言っていますが、ジフの人々は、自分たちの身を守りたかっただけでしょう。しかし、そのことを見抜けないほどに、サウルは孤独であったのです。サウルは、さらに調べて、確かな情報を持ってくるようにと、ジフの人々を送り返します。そして、後に、ジフの人々から確かな情報を得たのでしょう。サウルとその兵はダビデをねらって出て行きました。ダビデはその知らせを受けると、マオンの荒れ野の岩場に行き、そこにとどまりました。サウルはそのことを聞き込み、マオンの荒れ野にダビデを追跡します。サウルは山の片側を行き、ダビデとその兵は山の反対側を行きます。サウルとその兵がダビデとその兵を捕らえようと迫っていたその時、使者がサウルのもとに来て、こう言いました。「急いでお帰りください。ペリシテ人が国に侵入しました」。この知らせを受けて、サウルはダビデを追うことをやめて、ペリシテ人の方に向かいました。このようにして、ダビデは間一髪のところで、サウルの手から逃れることができたのです。そのため、この場所は「分かれの岩」と呼ばれました。「別れの岩」は別の訳では「逃れの岩」とも記されています。神様はまさしく、ダビデの逃れの岩となってくださったのです。14節に、「神は彼(ダビデ)をサウルの手に渡されなかった」と記されていたように、神様は、ペリシテ人の侵入を用いて、ダビデをサウルの手から救われたのです。

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