主の祭司を殺すサウル 2021年9月29日(水曜 聖書と祈りの会)
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主の祭司を殺すサウル
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- 村田寿和 牧師
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サムエル記上 22章6節~23節
聖書の言葉
22:6 サウルは、ダビデとその仲間の者たちが姿を見せたと聞かされた。サウルは、手に槍を持って、ギブアにある丘のぎょりゅうの木陰に座っていた。彼の家臣は皆、傍らに立っていた。
22:7 サウルは傍らに立っている家臣に言った。「ベニヤミンの子らよ、聞くがよい。エッサイの子が、お前たち皆に畑やぶどう畑を与え、皆を千人隊の長や、百人隊の長にするであろうか。
22:8 お前たちは皆、一団となってわたしに背き、わたしの息子とエッサイの子が契約を結んでもわたしの耳に入れない。息子がわたしの僕をわたしに刃向かわせ、今日のようにわたしをねらわせても、憂慮もしないし、わたしの耳に入れもしない。」
22:9 サウルの家臣のそばに立っていたエドム人ドエグが答えた。「エッサイの子が、ノブにいるアヒトブの子アヒメレクのところに来たのを見ました。
22:10 アヒメレクは彼のために主に託宣を求め、食糧を渡し、ペリシテ人ゴリアトの剣を与えました。」
22:11 サウルは人をやって、祭司であるアヒトブの子アヒメレクと、ノブで祭司職にある彼の父の家の者をすべて呼び出した。彼らは皆、王のもとに来た。
22:12 サウルは言った。「アヒトブの子よ、聞くがよい。」彼は「はい、御主人様」と答えた。
22:13 サウルは言った。「何故、お前はエッサイの子と組んでわたしに背き、彼にパンや剣を与え、神に託宣を求めてやり、今日のようにわたしに刃向かわせ、わたしをねらわせるようなことをしたのか。」
22:14 アヒメレクは王に答えた。「あなたの家臣の中に、ダビデほど忠実な者がいるでしょうか。ダビデは王様の婿、近衛の長、あなたの家で重んじられている者ではありませんか。
22:15 彼のため神に託宣を求めたのはあの折が初めてでしょうか。決してそうではありません。王様、僕と父の家の者に罪をきせないでください。僕は事の大小を問わず、何も知らなかったのです。」
22:16 王は、「アヒメレクよ、お前も父の家の者も皆、死罪だ」と言い、
22:17 傍らに立っている近衛兵に命じた。「行って主の祭司たちを殺せ。彼らもダビデに味方し、彼が逃亡中なのを知りながら、わたしの耳に入れなかったのだ。」だが、王の家臣は、その手を下して主の祭司を討とうとはしなかった。
22:18 王はドエグに、「お前が行って祭司らを討て」と命じたので、エドム人ドエグが行って祭司らを討った。こうして、サウルはその日、亜麻布のエフォドを身に着けた者八十五人を殺し、
22:19 また祭司の町ノブを剣で撃ち、男も女も、子供も乳飲み子も、牛もろばも羊も剣にかけた。
22:20 アヒトブの子アヒメレクの息子が一人、難を免れた。アビアタルという名で、彼はダビデのもとに逃れた。
22:21 アビアタルは、サウルが主の祭司たちを殺した、とダビデに伝えた。
22:22 ダビデはアビアタルに言った。「あの日、わたしはあの場に居合わせたエドム人ドエグが必ずサウルに報告するだろう、と気づいていた。わたしがあなたの父上の家の者すべての命を奪わせてしまったのだ。
22:23 わたしのもとにとどまっていなさい。恐れることはない。わたしの命をねらう者はあなたの命をもねらう。わたしのもとにいれば、あなたは安全だ。」
サムエル記上 22章6節~23節
メッセージ
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今朝は、『サムエル記上』の第22章6節から23節より、「主の祭司を殺すサウル」という題でお話します。
サウルは、ダビデとその仲間たちが姿を見せたことを聞きました。サウルは、手に槍をもって、ギブアにある丘のぎょりゅうの木陰に座っておりました。彼の家臣たちは皆、その傍らに立っておりました。サウルは傍らに立っている家臣にこう言います。「ベニヤミンの子らよ、聞くがよい。エッサイの子が、お前たち皆に畑やぶどう畑を与え、皆を千人隊の長や、百人隊の長にするだろうか」。私たちは、このサウルの言葉から、サウルが自分と同じベニヤミン族の者を家臣としていたこと。そして、彼らに畑を与え、千人隊の長や百人隊の長に任命していたことが分かります。サウルは、自分と同じベニヤミン族の家臣たちに、ユダ族であるであるエッサイの子が王になれば、お前たちも家臣としての優遇を失うことになると言うのです。そうであれば、サウルと家臣たちの利益は一致しているはずですが、サウルは続けてこう言います。「お前たちは皆、一団となってわたしに背き、わたしの息子とエッサイの子が契約を結んでもわたしの耳に入れない。息子がわたしの僕をわたしに刃向かわせ、今日のようにわたしをねらわしても、憂慮もしないし、わたしの耳に入れもしない」。猜疑心の強いサウルは、ダビデだけではなく、息子ヨナタンと自分の家臣たちをも疑います。ダビデがサウルに刃向かったことはありませんが、サウルの中では、ダビデは自分の命を狙う不届き者であるのです。そして、そのダビデを裏で操っているのが、息子のヨナタンであると言うのです。「陰謀論」という言葉がありますが、サウルは、息子ヨナタンがダビデと契約を結び自分を殺そうとしているという陰謀論に取りつかれているのです。さらに、サウルは、家臣たちが、そのことを知りながら、自分の耳に入れようともしないと非難するのです。サウルの家臣たちは、サウルが何を言っているのか分からなかったのではないでしょうか。ここには記されていませんが、長い沈黙があったのではないかと思います。その沈黙を破って、家臣のそばに立っていたエドム人ドエグがこう答えました。「エッサイの子が、ノブにいるアヒトブの子アヒメレクのところに来たのを見ました。アヒメレクは彼のために主に託宣を求め、食料を渡し、ペリシテ人ゴリアトの剣を与えました」。第21章8節に、「そこにはその日、サウルの家臣の一人が主の御前にとどめられていた。名をドエグというエドム人で、サウルに属する牧者のつわものであった」と記されていました。そのドエグが自分の見たことをサウルに報告したのです。第21章には、アヒメレクがダビデのために主に託宣を求めたことは記されていません。ですから、ある研究者は、「ここでドエグは嘘をついている」と申します。しかし、第22章15節で、アヒメレクが「彼のために神に託宣を求めたのはあの折が初めてでしょうか。決してそうではありません」と言っていますから、ドエグが報告したとおり、アヒメレクはダビデのために主の託宣を求めたのでしょう。
このドエグの報告を聞いて、サウルは人をやって、祭司であるアヒトブの子アヒメレクと、ノブで祭司職にある彼の父の家の者をすべて呼び出します。アヒトブの一族は、ギブアにいるサウル王のもとに呼び出されたのです。ちなみに、アヒトブとは、イカボドの兄弟であり、イカボドはシロで主の祭司を務めたエリの息子ピネハスの子でありました(14:3参照)。ですから、アヒトブの子であるアヒメレクも、シロの祭司エリの子孫であるのです。そのアヒメレクに、サウルはこう言います。「何故、お前はエッサイの子と組んでわたしに背き、彼にパンや剣を与え、神に託宣を求めてやり、今日のようにわたしに刃向かわせ、わたしをねらわせるようなことをしたのか」。先程も申しましたように、ダビデがサウルに刃向かって、サウルの命を狙っている事実はありません。すべては、サウルの被害妄想であります。このようなサウルの言葉を聞いて、アヒメレクはこう答えます。「あなたの家臣の中に、ダビデほど忠実な者がいるでしょうか。ダビデは王様の婿、近衛の長、あなたの家で重んじられている者ではありませんか。彼のために託宣を求めたのはあの折が初めてでしょうか。決してそうではありません。王様、僕と父の家の者に罪をきせないでください。僕は事の大小を問わず、何も知らなかったのです」。このアヒメレクの言葉は、見事な弁明の言葉であります。第14章には、祭司アヒメレク(アヒヤ)が、サウルのために託宣を求めたことが記されています。サウルはサムエルとの関係が途絶えた後に、エリの子孫である祭司アヒメレクを通して、主の御心を求めていたのです。しかし、そのアヒメレクに、サウルはこう言います。「アヒメレクよ、お前も父の家の者も皆、死罪だ」。サウルは、アヒメレクの弁明の言葉に耳を傾けず、王に反逆する者として死罪を言い渡します。そして、サウル王は、傍らに立っている近衛兵にこう命じるのです。「行って主の祭司たちを殺せ。彼らもダビデに味方し、逃亡中なのを知りながら、わたしの耳に入れなかったのだ」。アヒメレクは、「僕は事の大小を問わず、何も知らなかった」と潔白を主張しました。しかし、サウルは、アヒメレクはダビデが逃亡中であることを知っていながら、自分の耳に入れなかったと断定するのです。サウルの思い描く陰謀論の中に、アヒメレクも組み込まれているのです。アヒメレクの行為は、王に刃向かう反逆罪であり、それは父の家にも及ぶ大きな罪であると言うのです。ここで、サウルが、「主の祭司たちを殺せ」と言っていることに注意したいと思います。サウルは、アヒメレクたちが主(ヤハウェ)の祭司であることを知りながら、彼らを殺せと命じるのです。しかし、王の家臣は、その手を下して主の祭司を討とうとはしませんでした。なぜなら、アヒメレクの弁明の言葉はもっともであり、何より彼らは、ヤハウェによって油を注がれた主の祭司であるからです(出エジプト29:7参照)。それで、サウルは、エドム人ドエグに、「お前が行って祭司らを討て」と命じました。ドエグはエドム人であり、主を畏れない異邦人であります。ですから、ドエグは躊躇することなく、主の祭司たちを討ちました。こうして、サウルはその日、亜麻布のエフォドを身に着けた者85人を殺したのでした。更には、祭司の町ノブに、軍隊を派遣して、男も女も、子供も乳飲み子も、牛もろばも羊も剣にかけたのです。サウルは、祭司の町ノブを、いわば聖絶したのです。第15章に、主がサムエルを通して、サウルに、アマレク人を滅ぼし尽くすよう命じたことが記されていました。主はサウルに、「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切、滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も、牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない」と命じられました。しかし、サウルは、民を恐れて、主に献げるという名目で、最上の羊と牛を取り分けたのでした。そのようにして、サウルは、主の御言葉に従わなかったのです。そして、そのことのゆえに、主はサウルを王位から退けられたのです。しかし、今朝の御言葉では、こともあろうに主の祭司の町ノブを、サウロは滅ぼし尽くすのです。聖絶するとは、主の敵の町を滅ぼし尽くして、主にささげることです。しかし、サウルは、主の祭司の町を滅ぼし尽くすという暴挙にでるのです。これはイスラエルのまことの王である主に対する反逆行為であります。このようにして、サウルは、自ら主の祭司たちとの関係を断ち切ってしまうのです。
アヒトブの子アヒメレクの息子が一人、難を免れました。このことは、神の人によって、エリに告げられていたことであります。サウルによって、エリの子孫たちが殺されたこと、また、一人だけ生き残ったことは、神の人がエリに告げていた預言の成就であるのです(2:32、33「あなたの家には永久に長命の者はいなくなる。わたしは、あなたの家の一人だけは、わたしの祭壇から断ち切らないでおく」参照)。生き残った息子は、アビアタルという名で、彼はダビデのもとに逃れました。そして、サウルが主の祭司たちを殺したことをダビデに告げました。ダビデはアビアタルにこう言います。「あの日、わたしはあの場に居合わせたエドム人ドエグが必ずサウルに報告するだろう、と気づいていた。わたしがあなたの父上の家の者すべての命を奪わせてしまったのだ。わたしのもとにとどまっていなさい。恐れることはない。わたしの命をねらう者はあなたの命をもねらう。わたしのもとにいれば、あなたは安全だ」。ここで、ダビデは自分にも責任があることを認めています。それゆえ、ダビデは、アビアタルに自分ができる精一杯のことをしようと約束するのです。ダビデは、アビアタルの命を守ろうと約束するのです。そして、このようにして、ダビデは、主の祭司を得ることになるのです。サウルは主の祭司を殺しましたけれども、ダビデは主の祭司の命を守るのです。