アヒメレクのもとでのダビデ 2021年9月08日(水曜 聖書と祈りの会)

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アヒメレクのもとでのダビデ

日付
説教
村田寿和 牧師
聖書
サムエル記上 21章1節~10節

聖句のアイコン聖書の言葉

21:1 ダビデは立ち去り、ヨナタンは町に戻った。
21:2 ダビデは、ノブの祭司アヒメレクのところに行った。ダビデを不安げに迎えたアヒメレクは、彼に尋ねた。「なぜ、一人なのですか、供はいないのですか。」
21:3 ダビデは祭司アヒメレクに言った。「王はわたしに一つの事を命じて、『お前を遣わす目的、お前に命じる事を、だれにも気づかれるな』と言われたのです。従者たちには、ある場所で落ち合うよう言いつけてあります。
21:4 それよりも、何か、パン五個でも手もとにありませんか。ほかに何かあるなら、いただけますか。」
21:5 祭司はダビデに答えた。「手もとに普通のパンはありません。聖別されたパンならあります。従者が女を遠ざけているなら差し上げます。」
21:6 ダビデは祭司に答えて言った。「いつものことですが、わたしが出陣するときには女を遠ざけています。従者たちは身を清めています。常の遠征でもそうですから、まして今日は、身を清めています。」
21:7 普通のパンがなかったので、祭司は聖別されたパンをダビデに与えた。パンを供え替える日で、焼きたてのパンに替えて主の御前から取り下げた、供えのパンしかなかった。
21:8 そこにはその日、サウルの家臣の一人が主の御前にとどめられていた。名をドエグというエドム人で、サウルに属する牧者のつわものであった。
21:9 ダビデは更にアヒメレクに求めた。「ここに、あなたの手もとに、槍か剣がありますか。王の用件が急なことだったので、自分の剣も武器も取って来ることができなかったのです。」
21:10 祭司は言った。「エラの谷で、あなたが討ち取ったペリシテ人ゴリアトの剣なら、そこ、エフォドの後ろに布に包んであります。もしそれを持って行きたければ持って行ってください。そのほかには何もありません。」ダビデは言った。「それにまさるものはない。それをください。」サムエル記上 21章1節~10節

原稿のアイコンメッセージ

 ヨナタンの家と契約を結んだダビデは、立ち去って、ノブの祭司アヒメレクのところに行きました。ノブは、シロに変わる祭司の町であり、そこにはエリの子孫のアヒメレクがおりました。アヒメレクについては、第22章9節に、「アヒトブの子アヒメレク」と記されています。このアヒメレクは、第14章3節に記されていた「アヒヤ」と同一人物であったと考えられています。第14章3節には、こう記されていました。「そこには、エフェドを持つアヒヤもいた。アヒヤは、イカボドの兄弟アヒトブの子であり、イカボドはシロで主の祭司を務めたエリの息子ピネハスの子である」。このアヒヤが、アヒメレクと同一人物であると考えられるのです(ヤはヤハウェを、メレクは王を表す)。ノブはサウルの町ギブアの近くにあり、アヒメレクはサウルとも面識のある祭司であったのです。

 アヒメレクは、ダビデを不安げに迎えて、こう尋ねます。「なぜ、一人なのですか、供はいないのですか」。ダビデは、祭司アヒメレクにこう言います。「王はわたしに一つの事を命じて、『お前を遣わす目的、お前に命じる事を、だれにも気づかれるな』と言われたのです。従者たちには、ある場所で落ち合うように言いつけてあります。それよりも、何か、パン五個でも手もとにありませんか。ほかに何かあるなら、いただけますか」。ここで、ダビデは嘘をついています。ダビデは、王サウルの手から逃れて来たのです。しかし、この「王」がサウルのことではなく、イスラエルのまことの王である主(ヤハウェ)のことであれば、ダビデは嘘をついていないと言えます。ダビデは、このとき、何も持っていませんでした。お腹も空いていたのでしょう。ダビデは、パンをいただけないかと願います。

 祭司はダビデにこう答えました。「手もとに普通のパンはありません。聖別されたパンならあります。従者が女を遠ざけているなら差し上げます」。この聖別されたパンとは、主の祭壇に供えていたパンのことです。聖別されたパンは、『レビ記』の規定によれば、祭司たちしか食べてはならないのですが、ここではそのことは問題にされていません(レビ24:5~9参照)。問題とされているのは、従者(ダビデを含む)が女を遠ざけているかどうかでありました。それに対して、ダビデはこう答えます。「いつもことですが、わたしが出陣するときには女を遠ざけています。従者たちは身を清めています。常の遠征でもそうですから、まして今日は、身を清めています」。女を遠ざけていることが問われるのは、精の漏出によって汚れると律法に定められていたからです(レビ15:16「もし人に、精の漏出があったならば、全身を水に浸して洗う。その人は夕方まで汚れている」参照)。祭司は、ダビデたちが身を清めていることを確認して、聖別されたパンをダビデに与えました。ダビデに与えられたのが普通のパンではなくて、聖別されたパンであったことは、象徴的な意味をもっています。逃亡するダビデを養うのは、主であるのです。

 8節に、「そこにはその日、サウルの家臣の一人が主の御前にとどめられていた。名をドエグというエドム人で、サウルに属する牧者のつわものであった」と記されています。第14章47節に、サウルがエドムと戦い勝利を収めたことが記されていました。ドエグはそのとき、サウルの捕虜となり、王の家畜を見張る者とされたのでしょう。そして、そのつわものぶりが見込まれて王の護衛兵の一人となっていたようです。このドエグが、なぜ、ノブの聖所にいたのかは分かりません。ドエグは牧者、羊を飼う者であったので、いけにえを献げることと関係があったのかも知れません。ともかく、このドエグの存在が、後に祭司の町ノブに大きな災いをもたらすことになるのです(サムエル上22:9参照)。

 ダビデは、更にアヒメレクに求めて、こう言いました。「ここに、あなたの手もとに、槍か剣がありますか。王の用件が急なことだったので、自分の剣も武器も取って来ることができなかったのです」。サウルはいつも槍を手にしていましたが、ダビデは何の武器も持っていなかったのです。祭司はこう答えます。「エラの谷で、あなたが討ち取ったペリシテ人ゴリアトの剣なら、そこ、エファドの後ろに布に包んであります。もしそれを持って行きたければ持って行ってください。そのほかには何もありません」。ダビデはこう言います。「それにまさるものはない。それをください」。ペリシテ人ゴリアトの剣が、なぜ、ノブの聖所にあったのかは分かりません。おそらく、戦利品として、主にささげられていたのでしょう。ですから、ここでも、ダビデは、主から剣を賜ったのです。ダビデは、これからサウルから逃れる逃亡生活を送るのですが、それは、主からのパンと武器を与えられることによって始まるのです。また、ここには、記されていませんが、第22章10節のドエグの報告によれば、アヒメレクはダビデのために主の託宣を求めました(22:15も参照)。ゴリアトの剣は布に包んで、エフォドの後ろにありました。エフォドとは、祭司が主の託宣を求めるために用いる道具です(ここではおそらく彫像であった)。ダビデは、祭司から聖別されたパンと武器を与えられただけではなく、主の御言葉をいただいて、逃亡生活を始めるのです。

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