ヨナタンの家とダビデの家との契約 2021年8月18日(水曜 聖書と祈りの会)
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ヨナタンの家とダビデの家との契約
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- 村田寿和 牧師
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サムエル記上 20章1節~24節
聖書の言葉
20:1 ダビデはラマのナヨトから逃げ帰り、ヨナタンの前に来て言った。「わたしが、何をしたというのでしょう。お父上に対してどのような罪や悪を犯したからといって、わたしの命をねらわれるのでしょうか。」
20:2 ヨナタンはダビデに答えた。「決してあなたを殺させはしない。父は、事の大小を問わず、何かするときには必ずわたしの耳に入れてくれる。そのような事を父がわたしに伏せておくはずはない。そのような事はない。」
20:3 それでもダビデは誓って言った。「わたしがあなたの厚意を得ていることをよくご存じのお父上は、『ヨナタンに気づかれてはいけない。苦しませたくない』と考えておられるのです。主は生きておられ、あなた御自身も生きておられます。死とわたしとの間はただの一歩です。」
20:4 ヨナタンはダビデに言った。「あなたの望むことは何でもしよう。」
20:5 ダビデはヨナタンに言った。「明日は新月祭で、王と一緒に食事をしなければならない日です。あなたが逃がしてくだされば、三日目の夕方まで野原に隠れています。
20:6 そのとき、お父上がわたしの不在に気づかれたなら、『ダビデは、自分の町ベツレヘムへ急いで帰ることを許してください、一族全体のために年ごとのいけにえをささげなければなりません、と頼み込んでいました』と答えてください。
20:7 王が、『よろしい』と言われるなら、僕は無事ですが、ひどく立腹されるなら、危害を加える決心をしておられると思ってください。
20:8 あなたは主の御前で僕と契約を結んでくださったのですから、僕に慈しみを示してください。もし、わたしに罪があるなら、あなた御自身わたしを殺してください。お父上のもとに引いて行くには及びません。」
20:9 ヨナタンは言った。「そのような事は決してない。父があなたに危害を加える決心をしていると知ったら、必ずあなたに教えよう。」
20:10 ダビデはヨナタンに言った。「だが、父上が厳しい答えをなさったら、誰がわたしに伝えてくれるのでしょう。」
20:11 「来なさい、野に出よう」とヨナタンは言った。二人は野に出た。
20:12 ヨナタンはダビデに言った。「イスラエルの神、主にかけて誓って言う。明日または、明後日の今ごろ、父に探りを入れ、あなたに好意的なら人をやって必ず知らせよう。
20:13 父が、あなたに危害を加えようと思っているのに、もしわたしがそれを知らせず、あなたを無事に送り出さないなら、主がこのヨナタンを幾重にも罰してくださるように。主が父と共におられたように、あなたと共におられるように。
20:14 そのときわたしにまだ命があっても、死んでいても、あなたは主に誓ったようにわたしに慈しみを示し、
20:15 また、主がダビデの敵をことごとく地の面から断たれるときにも、あなたの慈しみをわたしの家からとこしえに断たないでほしい。」
20:16 ヨナタンはダビデの家と契約を結び、こう言った。「主がダビデの敵に報復してくださるように。」
20:17 ヨナタンは、ダビデを自分自身のように愛していたので、更にその愛のゆえに彼に誓わせて、
20:18 こう言った。「明日は新月祭だ。あなたの席が空いていれば、あなたの不在が問いただされる。
20:19 明後日に、あなたは先の事件の日に身を隠した場所に下り、エゼルの石の傍らにいなさい。
20:20 わたしは、その辺りに向けて、的を射るように、矢を三本放とう。
20:21 それから、『矢を見つけて来い』と言って従者をやるが、そのとき従者に、『矢はお前の手前にある、持って来い』と声をかけたら、出て来なさい。主は生きておられる。あなたは無事だ。何事もない。
20:22 だがもし、その従者に、『矢はあなたのもっと先だ』と言ったら、逃げなければならない。主があなたを去らせるのだ。
20:23 わたしとあなたが取り決めたこの事については、主がとこしえにわたしとあなたの間におられる。」
20:24 ダビデは野に身を隠した。サムエル記上 20章1節~24節
メッセージ
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今朝は、『サムエル記上』の第20章1節から24節前半より、「ヨナタンの家とダビデの家との契約」という題で、お話しします。
第19章1節に、「サウルは、息子のヨナタンと家臣の全員に、ダビデを殺すようにと命じた」と記されていました。ヨナタンは、父サウルがダビデを殺そうとしていることを知り、ダビデに身を隠すように、また、サウルにダビデを殺して罪を犯すことがないように言いました。そして、ヨナタンは、父サウルを説得して、サウルは「主は生きておられる。彼を殺しはしない」と誓ったのでありました。このようにして、ダビデはこれまでどおりサウルに仕える者となったのですが、長くは続きませんでした。ダビデがペリシテ人に勝利を収めて帰ってくると、サウルは妬みの霊(悪霊)に取りつかれて、ダビデを殺そうとしたのです。そのサウルの手から逃れて、ダビデはラマのサムエルのもとへ逃げたわけですね。そのサムエルがいるラマから逃げ帰って、ダビデは、ヨナタンの前に来て、こう言うのです。「わたしが、何をしたというのでしょう。お父上に対してどのような罪や悪を犯したからといって、わたしの命をねらわれるのでしょうか」。ヨナタンはダビデにこう答えます。「決してあなたを殺させはしない。父は、事の大小を問わず、何かするときは必ずわたしの耳に入れてくれる。そのようなことを父がわたしに伏せておくはずはない。そのようなことはない」。ヨナタンは、父サウルがダビデを殺そうとしても、事前に、息子の自分に知らせくれるはずだから、そのときは、あなたに知らせよう。だから、あなたは殺されずに済むだろう、と言います。それでもダビデは誓ってこう言いました。「わたしがあなたの厚意を得ていることをよくご存じのお父上は、『ヨナタンに気づかれてはいけない。苦しませたくない』と考えておられるのです。主は生きておられ、あなた御自身も生きておられます。死とわたしとの間はただ一歩です」。ヨナタンは、父サウルは、何事も事前にわたしに知らせてくれるので、ダビデを殺す計画を聞いたら、事前にダビデに知らせようと言いました。しかし、ダビデは、サウルがヨナタンには事前に知らせずに、自分を殺そうとする可能性があると指摘します。そして、自分がどれほど危険な状態であるかを伝えるために、誓いの言葉を語るのです。「主は生きておられ、あなた御自身も生きておられます。死とわたしとの間はただ一歩です」。ダビデは、生きた心地がしない状況に置かれていたのです。そのダビデの気持ちが伝わったのでしょう。ヨナタンはダビデにこう言います。「あなたの望むことは何でもしよう」。このヨナタンの言葉の背景には、ダビデと結んだ契約があります。第18章1節から4節にこう記されていました。
ダビデがサウルと話し終えたとき、ヨナタンの魂はダビデの魂と結びつき、ヨナタンは自分自身のようにダビデを愛した。サウルはその日、ダビデを召し抱え、父の家に帰ることを許さなかった。ヨナタンはダビデを自分自身のように愛し、彼と契約を結び、着ていた上着を脱いで与え、また自分の装束を剣、弓、帯に至るまで与えた。
ヨナタンは、ダビデと結んだ契約に誠実な者として、「あなたの望むことは何でもしよう」と言うのです。
ダビデは、ヨナタンにこう言いました。「明日は新月祭で、王と一緒に食事をしなければならない日です。あなたが逃がしてくだされば、三日目の夕方まで野原に隠れています。そのとき、お父上がわたしの不在に気づかれたなら、『ダビデは、自分の町ベツレヘムへ急いで帰ることを許してください、一族全体のために年ごとのいけにえをささげなければなりません、と頼み込んでいました』と答えてください。王が、『よろしい』と言われるなら、僕は無事ですが、ひどく立腹されるなら、危害を加える決心をしておられると思ってください。あなたは主の御前で僕と契約を結んでくださったのですから、僕に慈しみを示してください。もし、わたしに罪があるなら、あなた御自身わたしを殺してください。お父上のもとに引いて行くには及びません」。新月祭とは、毎月の一日に祝われる、新月を祝う祭りであります(民数28:11~15参照)。その新月祭において、ダビデはサウル王と一緒に食事をすることになっておりました。しかし、その食事を欠席することによって、サウル王の反応を見て、自分を殺そうとしているかどうかを知ろうとするのです。ヨナタンはサウルの実の息子ですから、父親に嘘をついて、試すことになります。このことは、ヨナタンにとって気が引けることだったでしょう。それで、ダビデは、主の御前に結んだ契約を思い起こさせ、その契約に従って慈しみ(ヘセド)を示してくださるよう願うのです。また、ダビデは、自分がサウル王に対して罪や悪を犯したゆえに、命を狙われているならば、ヨナタンの手によって殺されてもよいと言うのです。
ヨナタンは、こう言います。「そのようなことは決してない。父があなたに危害を加える決心をしていると知ったら、必ずあなたに教えよう」。「そのようなことは決してない」とは、「ダビデがサウル王に対して罪や悪を犯したゆえに殺されようとしていることは決してない」ということです。ここで、ヨナタンの口からダビデの無罪が語られているわけです。ヨナタンは、「父があなたに危害を加える決心をしていると知ったら、必ずあなたに教えよう」と答えることによって、ダビデの願いどおりにすることを約束しました。
ダビデはヨナタンにこう言います。「だが、父上が厳しい答えをなさったら、誰がわたしに伝えてくれるでしょう」。それを受けて、ヨナタンはダビデを野に連れ出します。ヨナタンがダビデを野に連れ出したのは、これから語られる話を誰にも聞かれないようするためでしょう。ヨナタンはダビデにこう言います。「イスラエルの神、主にかけて誓って言う。明日または明後日の今ごろ、父に探りを入れ、あなたに好意的なら人をやって必ず知らせよう。父が、あなたに危害を加えようと思っているのに、もしわたしがそれを知らせず、あなたを無事に送り出さないなら、主がこのヨナタンを幾重にも罰してくださるように。主が父と共におられたように、あなたと共におられるように。そのときわたしにまだ命があっても、死んでいても、あなたは主に誓ったようにわたしに慈しみを示し、また、主がダビデの敵をことごとく地の面から断たれるときにも、あなたの慈しみをわたしの家からとこしえに断たないでほしい」。このように言って、ヨナタンはダビデの家と契約を結ぶのです。第18章において、ヨナタンはダビデ個人と契約を結びました。しかし、今朝の第20章においては、ヨナタンはダビデの家と契約を結びます。なぜなら、ヨナタンは、ダビデが王になることを信じていたからです。13節後半のヨナタンの言葉は、そのようなヨナタンの信仰を言い表しています。「主が父と共におられたように、あなたと共におらえるように」。この言葉によって、サウルの次に王となるのはダビデであることをヨナタンは告げているのです。その未来の王であるダビデに、ヨナタンは、主があなたの敵をことごとく地の面から断たれるときにも「あなたの慈しみをわたしの家からことごとく断たないでほしい」と言うのです。このヨナタンの言葉の背景には、新しい王が統治するとき、前の王の一族を滅ぼし尽くすという習わしがあります。主がダビデの敵を、ダビデの王権を脅かす者をことごとく地の面から断たれるときにも、あなたの慈しみをわたしの家から断つことなく、生きながらえさせてほしいと願うのです。私たちは、ここに、神様を中心として考えるヨナタンの純真な信仰を見ることができます。ヨナタンは、主なる神様が、イスラエルのまことの王であることを知っておりました。そして、まことの王である主が、人間の中から王を立てられることを知っていたのです。そして、その王は、サウルの息子である自分ではなく、ダビデであることを知っていたのです。それゆえ、ヨナタンは、ダビデが王になったときに、当時の習わしに従って、サウル王の家に属する自分の家を滅ぼさないでほしいと願い、そのことを確かにするために、主の御前に、ダビデの家と契約を結んだのです(そのことが実現されたことが『サムエル記下』の第9章のメフィボシェトである)。
ヨナタンはダビデの家と契約を結んで、こう言いました。「主がダビデの敵に報復してくださるように」。このように語ったヨナタンは、サウルがダビデのことを「わたしの敵」と呼んだことを知りませんでした。第19章17節で、サウルは、娘のミカルにこう言いました。「このようなことをしてわたしを欺いたのはなぜだ。なぜお前はわたしの敵を逃がし、避難させたのか」。ダビデの家と契約を結んだとき、ヨナタンは、父サウルがダビデを殺そうとしているかどうかは分かりませんでした。しかし、ヨナタンは、図らずも、「主がダビデのことを敵と見なす父サウルに報復してくださるように」と祈るのです。
さて、サウルが厳しい答えをしたときの伝達方法ですが、18節以下に、こう記されています。「明日は新月祭だ。あなたの席が空いていれば、あなたの不在が問いただされる。明後日に、あなたは先の事件の日に身を隠した場所に下り、エゼルの石の傍らにいなさい。わたしは、その辺りに向けて、的を射るように、矢を三本放とう。それから、『矢を見つけて来い』と言って従者をやるが、そのとき従者に、『矢はお前の手前にある、持って来い』と声をかけたら、出て来なさい。主は生きておられる。あなたは無事だ。何事もない。だがもし、その従者に、『矢はお前のもっと先だ』と言ったら、逃げなければならない。主があなたを去らせるのだ。わたしとあなたが取り決めたこの事については、主がとこしえにわたしとあなたの間におられる」。このように、ヨナタンは、矢を近くに放つか、遠くに放つかによって、サウルがダビデに対して好意的であるか、それとも危害を加えようと思っているかを知らせるのです。このようなことを取り決めた後で、ダビデは野に身を隠したのです。