サウルの策略 2021年7月21日(水曜 聖書と祈りの会)
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サウルの策略
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- 村田寿和 牧師
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サムエル記上 18章17節~30節
聖書の言葉
18:17 サウルはダビデに言った。「わたしの長女メラブを、お前の妻として与えよう。わたしの戦士となり、主の戦いをたたかってくれ。」サウルは自分でダビデに手を下すことなく、ペリシテ人の手で殺そうと考えていた。
18:18 ダビデはサウルに言った。「わたしなど何者でしょう。わたしの一族、わたしの父の一族などイスラエルで何者でしょう。わたしが王の婿になるとは。」
18:19 ところが、サウルの娘メラブはダビデに嫁ぐべきときに、メホラ人アドリエルに嫁がせられた。
18:20 サウルの娘ミカルはダビデを愛していた。それをサウルに告げる者があり、サウルは好都合だと思った。
18:21 サウルは、「彼女を与えてダビデを罠にかけ、ペリシテ人の手にかけよう」と考え、ダビデに言った。「二番目の娘を嫁にし、その日わたしの婿になりなさい。」
18:22 サウルは家臣に命じた。「ダビデにひそかにこう言え。『王はあなたが気に入っておられるし、家臣たちも皆、あなたを愛しているのだから、王の婿になってください。』」
18:23 サウルの家臣はこれらの言葉をダビデの耳に入れた。ダビデは言った。「王の婿になることが、あなたたちの目には容易なことと見えるのですか。わたしは貧しく、身分も低い者です。」
18:24 サウルの家臣は、ダビデの言ったことをサウルに報告した。
18:25 サウルは言った。「では、ダビデにこう言ってくれ。『王は結納金など望んではおられない。王の望みは王の敵への報復のしるし、ペリシテ人の陽皮百枚なのだ』と。」サウルはペリシテ人の手でダビデを倒そうと考えていた。
18:26 家臣はダビデにこのことを告げた。ダビデはこうして王の婿になることは良いことだと思い、何日もたたないうちに、
18:27 自分の兵を従えて出立し、二百人のペリシテ人を討ち取り、その陽皮を持ち帰った。王に対し、婿となる条件である陽皮の数が確かめられたので、サウルは娘のミカルを彼に妻として与えなければならなかった。
18:28 サウルは、主がダビデと共におられること、娘ミカルがダビデを愛していることを思い知らされて、
18:29 ダビデをいっそう恐れ、生涯ダビデに対して敵意を抱いた。
18:30 ペリシテの将軍たちが出撃して来ると、ダビデはそのたびにサウルの家臣のだれよりも武勲を立て、名声を得た。サムエル記上 18章17節~30節
メッセージ
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今朝は、『サムエル記上』の第18章17節から30節より、「サウルの策略」という題でお話します。
サウルは、ダビデにこう言いました。「わたしの長女メラブを、お前の妻として与えよう。わたしの戦士となり、主の戦いをたたかってくれ」。このサウルの言葉は、ゴリアトを倒した者への褒美の約束を背景にしています。サウル王は、ゴリアトを討ち取った者に、王女を与えると約束していました(サムエル上17:25参照)。それで、サウルは、ゴリアトを討ち取ったダビデに、「わたしの長女メラブを、お前の妻として与えよう」と言ったのです。ただし、条件がありました。それは、ダビデがサウルの戦士となり、主の戦いをたたかうことでした。結婚するまでの間、ダビデはサウルの代わりに主の戦いをたたかうことになるのです。サウルは自分でダビデに手をくだすのではなく、ペリシテ人の手によってダビデを殺そうとするのです。10節と11節に、悪霊に取りつかれたサウルが、ダビデに槍を振りかざして殺そうとしたことが記されていました。悪霊に取りつかれたサウルは、衝動的にダビデを殺そうとしました。しかし、今朝の御言葉では、サウルは計画的にダビデを殺そうとするのです。そのことは、サウルが悪霊に取りつかれたままであることを暗示しているのです。「わたしの長女を、お前の妻として与えよう」と言うサウルに、ダビデはこう言いました。「わたしなど何者でしょう。わたしの一族、わたしの父の一族などイスラエルで何者でしょう。わたしが王の婿になるとは」。このダビデの言葉は、礼儀としての謙遜の言葉でありまして、断りの言葉ではありません。ダビデは、このように言いながらも、ある期間、サウルの戦士として、主の戦いを戦ったのです。しかし、ダビデは、どの戦いにおいても勝利を収めました。サウルの思惑どおりにはならなかったわけです。サウルは、娘のメラブをダビデに嫁がせるときに、メホラ人アドリエルに嫁がせてしまいます。サウルが娘のメラブを、ダビデではなく、他の人に嫁がせた理由はよく分かりません。おそらく、サウルは、ダビデを長女の婿として迎えたくなかったのでしょう。しかし、サウルは、依然として、ダビデをペリシテ人の手によって殺そうと考えていました。そのサウルに、次女ミカルがダビデを愛していることを告げる者がおりました。サウルは、「ミカルを与えてダビデを罠にかけ、ペリシテ人の手にかけよう」と考えて、こう言いました。「二番目の娘を嫁にし、その日わたしの婿になりなさい」。さらに、サウルは家臣に次のように命じました。「ダビデにひそかにこう言え。『王はあなたが気に入っておられるし、家臣たちも皆、あなたを愛しているのだから、王の婿になってください』」。サウルの家臣からこれらの言葉を聞くと、ダビデはこう言いました。「王の婿になることが、あなたたちの目には容易なことと見えるのですか。わたしは貧しく、身分も低い者です」。このダビデの言葉も礼儀としての謙遜な言葉であり、結納金をめぐっての交渉と言えます(『創世記』23章に記されているアブラハムとエフロンの対話を参照のこと)。当時、娘は、父親の所有物と考えられていました。ですから、ある娘を自分の妻にしようとする人は、その娘の父親に結納金を支払うことが定められていたのです(出エジプト22:15、16参照)。ダビデは、自分は貧しい者であるから、王女を嫁とするのにふさわしい結納金を支払うことはできないことを伝えたのです。サウルの家臣が、ダビデの言ったことをサウルに報告すると、サウルはこう言いました。「では、ダビデにこう言ってくれ。『王は結納金など望んでおられない。王の望みは王の敵への報復のしるし、ペリシテ人の陽皮百枚なのだ』と」。『創世記』の第29章に、ヤコブがラバンの娘と結婚するために、ラバンのもとで働いたことが記されています。ヤコブは、ラバンのもとで働くことによって、結納金の代わりとしたのです。それと同じように、サウルは、ダビデに、王の敵であるペリシテ人の陽皮100枚を結納金の代わりとして求めたのです。「陽皮」とは「包皮」のことです。ユダヤ人は、神の契約のしるしとして、生まれてから八日目に包皮の一部を切り取る割礼を受けていました。しかし、ペリシテ人は、「無割礼のペリシテ人」と言われるように、割礼を受けていませんでした。ですから、包皮を持ち帰ることは、ペリシテ人を討ち取ってきたことの証拠となるわけです。サウルは、ダビデにペリシテ人の包皮100枚を要求することにより、ペリシテ人の手でダビデを殺そうと考えたのです。サウルの家臣からこのことを聞いたダビデは、王の婿になることは良いことだと思いました。そして、何日もたたないうちに、自分の兵を従えて出発し、二百人のペリシテ人を討ち取り、その包皮を持ち帰りました。サウルから求められたのは、包皮100枚でありましたが、ダビデは、その倍の200枚の包皮を持ち帰ったのです。王に対し、婿となる条件である包皮の数が確かめられたので、サウルは娘のミカルをダビデに与えねばなりませんでした。このようにして、ダビデは、サウルの義理の息子となり、王家に連なる者となるのです。サウルの策略はことごとく裏目に出てしまい、ダビデにとって益となるように働くのです(ローマ8:28「神を愛する者たち、つまり、御計画に従って召された者たちには、万事が益となるように共に働くということを、わたしたちは知っています」参照)。サウルは、主がダビデと共におられること、娘ミカルがダビデを愛していることを思い知らされて、ダビデをいっそう恐れ、生涯ダビデに対して敵意を抱きました。このようにして、サウルは、主に敵対する者となってしまうのです。このことは、私たちに対する警告でもあります。もし、ダビデの子であり、神の御子であるイエス・キリストに敵意を抱くならば、私たちは神様に敵対する者となってしまうのです。